平民の方が好きと言われた私は、あなたを愛することをやめました

第２８話

ラドン視点

　時間は、ミレサがルーナを魔法で攻撃する前日まで遡る。
　ミレサの友人の屋敷で、俺は話をしていた。

　魔法の実力が優秀だからか、ミレサは貴族の友人がいる。
　街で１人暮らしをしているミレサの家に、俺が行っていることが知られたくはない。

　提案を聞いた俺は、屋敷の応接室でミレサと２人になっていた。
　最近のミレサは機嫌が悪く、その理由はわかっている。

「ミレサは十分凄い、ルーナを気にすることはないだろう」

「私が凄いことはわかっています！　ラドン殿下の婚約者になるためには、ルーナ様を超える必要があるのです！」

　先日魔法学園での成績が発表されて、今まで１位だったミレサは２位になっていた。
　魔法による試合形式の授業、試験結果が毎月晒されることとなり、ミレサはその結果が許せなかったようだ。

「そこまで気にすることはない。ミレサが婚約者になってくれれば俺は嬉しい」

「ラドン殿下がそう仰ってくださるのは嬉しいのですが、私は平民……やっぱり、元婚約者より上に立つ必要があります！」

　ミレサが断言して、俺のためなら何も言えなくなってしまう。
　俺にできることがあるとすれば、ミレサに協力することだ。

「そうか……俺はミレサの力になる。何かして欲しいことがあるのなら言って欲しい」

「ラドン殿下、ありがとうございます……私は、必ずルーナ様を追い越してみせます！」

　俺の発言を聞いて、ミレサは感激している様子だ。
　ミレサが俺を利用するために言っているだけで――この時の俺は、ミレサを疑っていなかった。