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第2話

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 私が精霊の生贄になると聞いてから、数日が経っていた。

 今日は私が持っている聖女の力を、姉エイレスに渡す式典の日だ。

 その式典で――国民達は、私に暴言を吐いてくる。

「聖女の癖に国のことを考えず、生贄になりたくないとよく言えたものだ!」

「姉のエイレス様が聖女になると、自分の無能さが知られてしまうとアイリスは思ったようね」

「さっさと聖女の力をエイレス様に渡し、アイリスは精霊の生贄になれ!」

 国民達の私に対する暴言を聞くけど、私は生贄になっても無意味だと言っただけだ。
 どうやら事実を歪曲して国民達に伝えたようで、私は国民達から敵意を向けられていた。

 今まで国の為に貢献していた聖女が消えれば、国民の反感を買うかもしれない。
 そう考えたドルウッド王や貴族達はとにかく私の評判を落とし、姉エイレスの評判を上げようとしている。

 私の隣に立っていたエイレスは、笑みを浮かべて話す。

「アイリスは皆に嫌われているわね……私に聖女の力を渡さないと、大変なことになるわよ」

 精霊と仲がいい私を生贄にして、聖女の力はエイレスに渡すことになっている。

 聖女の力を渡すには本人の意思が必要になって、渡すのを拒めない状況を作りたかったようだ。

「アイリス! 潔く聖女の力をエイレス様に渡せ!」

 式典に来ている国民達の暴言を聞き――私は、ドルウッド国のことがどうでもよくなっていた。

 姉エイレスを聖女にしようだなんて、無茶でしかない。
 すぐに後悔するのは解っているけど、私が何を言っても聞かないから諦めている。

 この式典を早く終わらせたいから、聖女の力をエイレスに渡そう。

「私は――聖女の力を、エイレスに渡します」

 聖女の力をエイレスに渡すと決意してから、私は宣言する。
 そうすることで私は全身が白く光り輝き、その光がエイレスの体に移っていく。

「これが聖女の力……これで私は聖女として大成できる!」

 エイレスが叫ぶけど、聖女の力は聖なる魔法が使えるようになるだけだ。

 魔力の向上は僅かで、私の実力が高かっただけなのに……エイレスは認めようとしなかった。

 エイレスは私を蔑むように眺めながら、拡声器の魔法道具を使って国民達に話す。

「間違いなくアイリスから聖女の力を受け取りました――今より私が聖女となり、明日アイリスは精霊の生贄になります!」

 エイレスの発言によって国民達は歓喜するけど、まず精霊は生贄を求めていない。
 この国の人達は間違いなく後悔するけれど、私はもうドルウッド国がどうなっても構わないと思っている。

 そして翌日――私は、精霊の元に向かうこととなっていた。
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