婚約者に突き飛ばされて前世を思い出しました

天宮有

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第3話

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 前世の記憶を思い出した私は、現状について考える。
 海中にいるけど聖なる魔力の光に包まれているから問題なく、声も出すことができた。

 今の私は海水で一切濡れていないし、空を飛べるから水中でも問題なく移動することができる。
 断崖から突き飛ばされても無事に元の場所へ戻れるけど、私はキサラとルドノスに知られずこの場を去りたかった。

 今後について思案しながら、私は現状を呟く。

「危機的状況がくれば記憶が戻るようにしてたけど、まさか婚約者と妹に突き飛ばされるとは思わなかったわね」

 災害に備えて記憶を消さずに残していたのに、こうなるのは想定外だ。

 今までのミレナは妹キサラの力になるよう家族に命令されて、そのせいで膨大な魔力をキサラに与えてしまう。
 そして私に支えられた妹のキサラは優秀な魔法使いとして評価されて、私も優秀だけど妹と比較すると劣っているように見えてしまうようだ。

 婚約者ルドノス王子の暴言で心が乱れたことも大きくて……ルドノス王子は、最低な婚約者だった。
 今すぐに復讐することはできるけど、私が何もしなくても後悔するのは間違いない。
 それならもう関わらないことにして、この場から離れた方がよさそうだ。

「あの2人なら、私が生きているとは思わない。隣国で新しい生活を送りましょう」

 周辺の国についてはミレナの記憶からわかり、ニールド国へ向かうことを決意する。
 問題があるとすれば、双子だからキサラと見た目が同じということだ。

 変装するしかなくて、正体を隠し続けることになる。
 それでもいずれ変装しなくてよくなると、私は確信していた。

「私を消そうとしたのなら、私以下になったキサラはルドノス王子に消されるのかしら?」

 恐らくそれはキサラも理解して、なんらかの対策をとるかもしれない。
 それは数ヶ月後にキサラの魔力が弱まった後の出来事だから、楽しみに待つことにしよう。

 今後の行動を決めた私は、魔法を使い水中を滑るように移動する。
 離れた場所から大地に立って、徒歩で隣にあるニールド国へ向かうことにしていた。

 前世の聖女だった頃には旅をしてきたから問題なく生活できるし、今後の行動も決めている。
 婚約者に突き飛ばされて亡くなったことになりそうだから、私はこれからの人生を楽しむことにしよう。

■◇■◇■◇■◇■

 私が婚約者に断崖から突き飛ばされて、数ヶ月が経っていた。

 今の私は隣にあるニールド国で、平和に暮らすことができている。
 大きな治療院で働き、仮面を着けても誰も気にすることはない。
 見た目よりも回復魔法の実力が重要とされている場所だから、正体を隠しながら私は活躍することができていた。

 治療院に来る人達に回復魔法を使い、今日の仕事が終わる。
 私の元には初老の青年の来て、この人は私を雇ってくれた院長だ。

「ミレナがここに来てから2ヵ月経ったが、助かっているよ」

「それならよかったです」

 今日の診察が終わり、院長が声をかけてくれる。
 仮面を外したことがない私でも気にしていないようで、院長は話したいことがありそうだ。

「君の名前だけど、ランアス国にいた聖なる魔力を宿した魔法使いと同じ名前だね」

「それは――」

「――いや、君の正体はどうでもいい。名前が同じだから伝えておこうと思ったことがある」

 私は見た目を隠したけど、偽名を使っていない。
 キサラのせいで名前まで変える必要はないと考えていたからで、院長には正体がバレてしまったようだ。

 それでも院長は気にしていないようで、言いたいことがあるらしい。

「なんでしょうか?」

「ミレナが亡くなり、婚約者だったルドノス王子はミレナの妹であるキサラと婚約したようだ」

「予想通りですね」

 もう本心を話すことにすると、院長はルドノスがキサラと婚約した後の出来事を教えてくれる。

「問題はそのキサラで、聖女の生まれ変わりと公表したのに聖なる魔法が使えなくなったようだ」

 聖女の生まれ変わりは私なのに、キサラは自分が聖女と思い込んだらしい。

 それを信じたルドノス王子は大々的に広めて、新しい婚約者が優秀と知らしめようとする。
 キサラはそこから魔力が回復しなくなり、活躍できなくなったようだ。

「哀れな人ですね」

「そうだな……偉大な聖女様の生まれ変わりと思い込むとは、信じられない愚か者だ」

 院長の発言に頷き、私は今後について考える。
 こうなるともう、ルドノスはキサラを消すために行動を起こしそうだ。
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