【完結】お隣さんの恋

あい

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逃亡

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果「ん。」
み「あ。果奈。」
果「みっちゃん。」
み「大丈夫?」
果「う…。」

またポロポロ涙出てきちゃった。

み「どうしたの?」
果「う~。」
み「健斗君が急に果奈がいなくなったってすっごく心配してたょ。」
果「…。」

今は健斗の名前聞きたくない。

み「校内探しまわってやっとここにいる果奈見つけてくれたんだから。」
果「…。」
み「健斗君となにかあったの?」
果「健斗は?」
み「今教室に戻って係りやってるょ。」
果「そっか。カバンとってきてもらってもいい?」
み「え?」
果「このまま帰る。」
み「健斗君に会わなくていいの?」
果「会いたくない。会えない。会って普通に笑って話せる自信ない。」
み「果奈…。分かった。じゃぁちょっと待ってて。」
果「ごめんね。」
み「いいよ!落ち着いたらまた話してね。」
果「ん。」

今健斗は恋をしている。
健斗ならきっと実る。実っちゃうよぉ。
友達として、仲の良いお隣さんとして祝福しなきゃ。
きっと家にも彼女遊びに来たりするだろうし。
その時ばったり会ったりしたら笑って挨拶できるかなぁ。
学校でも家でも彼女と仲良くしている健斗をあたしはこれからずっと見続けていかなきゃいけなくなる。
そんなこと耐えられるかなぁ。

み「果奈。制服とカバン持ってきたよ!」
果「ありがとう。」
み「また泣いてたの?…ここ置いておくね。」
果「…ん。」
み「保健の先生に今廊下で会って。校内で怪我しちゃった子いるからしばらく戻ってこれないけど、そのままで良いから、気をつけて帰ってだって。」
果「わかった。」
み「一人で平気?」
果「うん。ありがとう。」
み「じゃね。」

着替えて帰ろう。
文化祭なんてなきゃ良かった。

“ガラガラ”

あれ?
先生しばらく戻らないって言ってたのに。

健「はぁ。はあ。果奈!?」

え!!健斗!?

健「大丈夫かよ!?」
果「…。」
健「みっちゃんが果奈の荷物持っていく所見えたから!」

カーテン越しに健斗の声。
どうしよう。
こっちくる。
無理。

果「来ないで!」
健「え?」
果「今着替え中。も~いっつも健斗はそうやって突然入ってこようとするんだからぁ。」
健「あ。ごめん。」
果「今まだ店番中じゃないの?」
健「あ、うん。けどちょっと抜けてきた!」
果「あたしなら大丈夫だから戻って!」
健「けど。」
果「心配かけちゃってごめんね。でもホントに大丈夫だから!」

健「…分かったよ。気をつけて。」
果「うん!」

精一杯の明るい声で返事した。
健斗が出ていくまでちゃんと泣かなかったよ。
我ながら頑張った。

果母「あら果奈帰ってたの?早かったじゃない?」
果「疲れちゃったからもう寝る。おやすみぃ。」

親にもこんな顔見られたくないから部屋へ直行。
さすがの健斗も空気をよんでくれたのか昨日は窓から来なかった。
あ。
もしかしたらあの後好きな子と上手くいってあたしのことなんかすっかり忘れちゃってるのかもしれない。
健斗はいつも明るくて真っ直ぐな感じで。
恋に対してもそうなんだね。
真っ直ぐその子のことだけを思ってる。
あたしの入る隙間なんてきっとない。

ふぅ~。
一晩泣き尽くして。
泣き疲れてまた寝て。
もう十分泣いたはじなのにまた自然と涙があふれてくる。
どれだけ泣いたら止まるんだろう?

果母「か~な~!夜ご飯も朝ごはんも食べないでど~したの?」

うわっ。お母さん入ってきた!寝たふり。

果母「昨日学校で何かあった?健斗君心配して、帰りに来てくれたのよ。」
果「…。」
果母「も~寝たふりなんかしてないで!」
果「…。」

バレてる!?

果母「健斗とまた何かあったの?」
果「…。」
果母「も~仲良くやりなさいよ!」

“バタン”

仲良く。
そうだよね。お隣さんだし。今後もずっと付き合っていかなきゃだし。
このまま避け続けるわけにいかない。
ふぅ~。
気持ち切り替えなきゃ!
最初のただのお隣さんに戻らなきゃ!

果母「あ~やっと起きてきた~。もう夜よ?」
果「疲れて寝てたら丸1日経ってたなんてビックリ!あ~お腹すいた~!」
果父「まったくしょうがない子だなぁ~。」
果「えへ。夜ご飯な~に?」
果母「ハンバーグよ!」
果「やった~!いっただっきま~す!」

元気に!普通に!よし!

“トントン”

窓をたたく音。健斗だ。

健「果奈?」

あたしがんばる!!

果「果奈ちゃんは今いませ~ん!」
健「おい!なんだよそれ!」

“ガラガラ”

果「あはは!」
健「…具合ど~?」
果「もう大丈夫!さっきご飯も食べたし元気出た!なんか準備とかも頑張ってたしお客さんも思ったよりも結構来てくれたりして忙しかったから疲れちゃってたみたい!」
健「…。なんか無理してね?」
果「してないよ~。あ。そういえば昨日来てくれたんだって?ごめんね。ありがとう!」
健「元気になったならいいんだけど。」
果「うん!」
健「昨日急にいなくなっちゃうし。見つけた時には保健室だし。」
果「あ。なんか急に吐き気がうってきて。トイレに駆け込んで。それで保健室に。」
健「そっか。」
果「あ、でも、もうホントに大丈夫だから!明日は学校行く!」
健「おう!けど残念。」
果「ん?」
健「も~ちょい果奈と色々回りたかったのに。」
果「え~!あたしはもうお化け屋敷とかこりごり!」
健「いや、普通にさ!しかも、結局写真とれなかったし。」
果「いいじゃん!皆と結構撮ってたじゃん!」
健「そ~だけど果奈とはまた撮れなかった。」
果「ん~じゃ~次のイベントはなんだろ?クリスマス?クリスマスにとればいいじゃん!」
健「そっか!そうだな!」
果「うん!」
健「じゃ~俺サンタやるから果奈トナカイな!」
果「え~なんでよ~!」
健「真っ赤なお鼻のトナカイ似合いそう!」
果「なにそれ~!」
健「あはは!」

頑張った。
頑張って笑って話せた。
意外といけるじゃん!
けど…クリスマスのサンタとトナカイはないだろうなぁ。
だってクリスマスって恋人達の日でしょ?
うわ。また泣いちゃう。考えないようにしなきゃ!!
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