俺が少女プリーストに転生したのは神様のお役所仕事のせい――だけではないかもしれない

ナギノセン

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7 新コンビ結成?

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 冒険者パーティの暗黙のルールで、セクハラおっさん達が悪ふざけ以上のことをしないようにはなっている。
 しかしそんなものはおっさんの自制次第だから、いつでも野獣に変貌する可能性は否めない。
 その点、スーはスカウトで気配察知に優れているからプリも助かる。スーも一人寝より心強いので一緒に寝ることが普通になっていたのは、盾だった俺も知っている。
 いや、だが、しかし――。

「明日も早いからもう寝るのです。プリちゃん、はい、どうぞ」

 大きめの寝袋へ先に入って、自分の隣を空けて待っているスーの言い分は正しい。すでに街道へ入って危険は少ないとは言えるが、クエストの最中に寝不足でパーティの足を引っ張るなんてのはありえない。
 極力体をくっつけないように気を遣い、スーに背中を向けて入ったが意味はなかった。慣れた動作でスーの両腕が俺の体の前へと回され、ピッタリくっついてきたのだ。

「――やっぱりプリちゃんじゃないのです……」

 喉から心臓が出そうな俺の背中に顔を押し付けて、くぐもった声のスーがつぶやいた。
 この子にとって俺はプリであってカッシーではないのに、普段と違う振舞いで思い知らせてしまう。
 ドキドキ初体験に気が取られてスーを思い遣ることすらできなかった俺は、申し訳なさから向き直ろうとしたが、抱き着かれた両腕のせいでできなかった。
 スーが少し嗚咽を漏らしているように感じたのも気のせいではないだろう。
 きっと今は顔を見るべきではない。そのくらい俺にでもわかる。

 体をカチコチに緊張させてどのくらい経ったかは全然わからないが、静かな寝息が聞こえて、ようやく俺はひと心地を着いた。
 しかしそれからもグルグルと頭を巡る疑問になかなか寝付けず、明け方になってようやく眠れると、俺は無意識に神様へ問い掛けていた。

(この状況は一体どうなっているんだ?)
『人間に戻ったと考えるのが一番自然であろう。性別などいろいろと異なるがな』
 スケベそうな顔で神様がほくそ笑む。
 やはりあの消え方はまだ帰っていなかったようだ。

『お前は人間だった頃のことを覚えていてそのままの意識でいるようだが、そもそも霊樹と呼ばれた樫の大木に転生し、鉄の盾になってからその娘とも結ばれたのだ』
(霊樹? ああ、地脈を吸収とか聞いたかもな。だけどそれがどうしたって言うんだ、神様がそうしたんだろう?)
『自分で生きるのが面倒だと言ったお前に、放っておいても生きられる場を与えた偶然の結果だ。それにしてもお前は異例尽くしとしか言いようがない。個体としての存在は木、または鉄の盾で、その記憶を保持したまま三度の転生だからな』
(言葉では知っているけど、何度も転生するって実際あるのか)
 一番最初の転生で似た様な質問をしたことは覚えているが、いざその立場になってもまだ信じられない。

『何を当然のことを聞いている? ならばお前はどうしてこの世界では、人や魔物が魔法を使えると思っておるのだ? 精神力? マナ? 気? そんなもの後付けだ。単に火や水などの影響力を持っていたものが、その能力を失わず人間や動物などに転生した。それだけだ』
(えーっ⁉ そんなの聞いたことがないぞ! 本当か⁉)
『簡単な例なら、火の力を持つ何ものかがトカゲへと転生して火トカゲの出来上がりだ』
(……信じられない)
『実際はそこまで単純ではないが、偏ったファンタジー知識と、凡庸な人格しかなかったお前には十分な説明だ。それ以前にお前の理解など最初から求めてはいない』
 えらい貶され方だが確かにそうだった。この神様は俺の言うことなど、てんで聞いちゃくれない。

『だが今のお前はプリでもある。それを忘れるな――いや、あの老人の経験をしたお前ならそれも大丈夫だろう』
 何処となく威厳と余韻を残して去って行った神様だが、そんなこと俺にはどうでもいい。
 元は生きることを拒否した男が、じいちゃんの後は樫の木で、鉄の盾で少女プリーストって、どんな罰ゲームだよ。
 夢で毒を吐きながら目を覚ますと、眩しい陽光の中で朝の体操をしているスーが目に入った。

「プリちゃん、寝坊助さんです。早くしないと置いて行かれますよ」
「あ、ああ、悪い。これからどこへ行くんだ?」
「何を言っているのですか、ミランヘ帰ってクエスト完遂報告ですっ! 他の冒険者に負けていられません‼」

 俺達だけでなく他のパーティも、野良モンスター討伐に借り出されていたのを、鼻息も荒く両手を握ったスーの言葉で思い出した。転生はその帰りの小休止後の出来事だった。
 昨晩の様子からかなり心配だったが、とりあえずスーが元気そうなので俺は胸を撫で下ろした。

「さあさあ、準備をして行くのです」
 スーが俺の荷物も持って立ち上がったので、慌てて俺は奪い取って出発の準備を始める。他のメンバーとも言葉を交わしたが、特に怪しまれることもなく、俺が男言葉へ変わったことも気にするそぶりすらない。冒険者らしいとはこういうことも含めてなのだろう。
 俺達は、その後は何事もなくミランという町へと入り、冒険者ギルドヘクエスト完了の報告を行うと、スー以外とは自然と別れることになった。
 彼らとは常時パーティを組んでいたわけではなく、同じ目的の討伐クエストのため同行していただけであった。
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