俺が少女プリーストに転生したのは神様のお役所仕事のせい――だけではないかもしれない

ナギノセン

文字の大きさ
48 / 71

48 闘技会?

しおりを挟む
「スー、ポン吉の言葉がわかるか?」
「アンアン言ってるだけなのです。プリちゃんはどうですか?」
「何となくな」
「やっぱりプリちゃんなのですっ。ポン吉も良かったのですっ」
「アンアン(そう思う)」

 本当はしっかりわかるけど、フレアバードの時に羨ましがられた記憶があった。ちょっと遠慮気味に答えたけど要らない気遣いだったらしい。
 スーはティムをした自信があるからだろか、意外にもさっぱりした反応だった。
 だけどこういう部類の言葉が当然わかると思われたのなら逆に困る。現にわからない時もある。

「デカい時は全然わからないぞ? 何が違うんだ?」
「アアン。アンアアーン(知らない。でも主のおかげ)」

 短い尻尾をバタバタさせているので喜んでいるのはわかるけど、こいつとはスー以上に会話が成立しない。
 もともと狼なのだから、高望みはするべきではないのだろう。

「とりあえずスーの誤解は解けたとして、討伐隊が来るというのはどうすればいい? このままだと使い魔登録どころじゃないだろう」
「ポン吉がこんなに小さなワンちゃんになったら登録はいらないので、それは構わないのです」
「アン(狼)」

 豆柴の抗議は無視して、言われてみればでっかくて危険視されるからの登録だ。普通にワンコだとこちらの世界でも飼ってるし、牛や馬にも必要ないのと同じ。

「でも町にはプリちゃんの用がありますが心配ないのです。スーにいい考えがあるのです」

 すっかり忘れていたが、ここへは俺のために来ていた。
 襲われた時にはとても助かった頑丈過ぎる体。恐ろしくて試せないが、樫の特性によるとしたら燃えやすくもなっているかもしれない。
 魔法でもアイテムでも構わないので、本当に燃えやすくなっているなら克服する術が欲しい。
 結局、町の守備隊から大目玉をくらったものの、スーの作戦が上手く行って町へ入ることができた。でかいポン吉は、すべて幻影魔術によるもので苦しかったが押し通した。

 魔法も使えない俺がやったと言い張るのだから、説明もあやふやで挙勤不審になってしまう。しかし、プリーストが使える数少ない防御魔法に幻影魔術があったこと。若い女の子の二人旅なので身を守るために仕方ないことなど、善意で納得してくれたと勘違いをしていて、あとで非常に面倒なことへ巻き込まれるとは思ってもいなかった。
 更にもう一つ目論見通りにならないことがあった。

 町へ入った俺達というよりポン吉が注目を浴びることは結局止むことはなかった。
 豆柴ポン吉、かわいすぎっ。
 これまでは、いかついオッサンとかが譲れと言ってきたのに、今はその辺のおねーさんとか有閑マダムっぽいのが次々やって来る。相手にするのが面倒になってくるほどだ。

「ポン吉、その辺にしょんべん掛けてやれ」
「アン(いいの)?」

 化粧臭い手でべタベ夕と触られたポン吉も気分を害していたのだろう。嬉しそうに尻尾を振る豆柴を見て、ゴーサインを出しそうになったがなんとか踏み留まった。

「冗談だよ」
「アン(残念)」

 町へ入って冒険者ギルドヘ向かうだけなのに、何人声を掛けてきたやら。
 うんざりした俺達がようやく冒険者ギルドヘ辿り着くと、魔法都市との名前は伊達ではない。冒険者ギルドは魔道ギルドと並んで建っていた。他の町ではあまりないごとだが、明らかに魔道ギルドの建物のほうが立派だった。一方は白亜の石造りで三階建て。もう一方は普通の木造の二階建て。
 魔道ギルドのほうが大きいのはマジックアイテムの鑑定や販売をするスペースが併設されて利益を上げているからだと、ポン吉の使い魔鑑定のために一度来ていたスーに教えられた。

 クエストを受ける気はないので本来は行く必要がないのだが、初めての町なので何でも情報が欲しい。そんな時は冒険者ギルドが一番役に立つ。
 俺達は町の入口の騒ぎでかなりの有名人になっていたらしく、ギルドヘ入った時から注目されていた。
 何か話が聴ければと受け付けの女性職員へ声を掛けたところ、そのままニ階の個室へ通されて暫く待たされた。
 待遇は違うけど、前にも似たようなことがあったので嫌な予感がする。以前は木の質素な椅子だったが、今はフカフカクッションの応接セット。
 部屋中を物珍しく見ているスーの隣で身を固くしていると、立派な髭と丸いメガネが印象的な壮年の男がやって来て俺達の前へ腰を降ろした。驚くほど大きくはないが、そこそこ均整のとれた体から冒険者かと思ったら元冒険者だったらしい。ギルドの副局長をしているノーマンと名乗り、この部屋へ案内をしてくれた若い女性職員はミリーと紹介された。
 ノーマンは俺達が名乗ろうとする前に一枚の紙を机の上に置くと、挨拶もそこそこに用件へ入った。

「プリさんとスーさんですね。早速ですが三日後から開催される闘技会へ参加してください
「わかりましたのですっ」

 俺も驚いたけど、ノーマンは掛けたメガネがずれ落ちそうなくらい呆気にとられ、聞き間違いではないかと念入りに確認するほどであった。

「あの、スーさん?」
「スーは強くなりたいのですっ。もってこいのお話なのですっ」
「一応説明を――」
「犬丈夫なのですっ。スーの父様が出るのを何度も見ているのです」
「で、では、参加ということで」
「はいなのですっ」

 そして自然に俺へ視線が集まる。
 聴かれるまでもなく出たくない。戦う必要性を感じないし、勝てる気もしない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

空手馬鹿の俺が転生したら規格外の治癒士になっていた 〜筋力Eのひ弱少年治癒士が高みを目指す!?〜

くまみ
ファンタジー
 前世は空手部主将の「ゴリラ」男。転生先は……筋力Eのひ弱な少年治癒士!?  「資質がなんだ!俺の拳は魔法を超える!……と、思うけど……汗」 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  俺は五里羅門(ごり・らもん) 35歳独身男だ。硬派すぎて女が寄り付かず。強すぎる空手愛と鍛え抜かれた肉体のせいで不本意ながら通称「ゴリラ」と呼ばれていた。  仕事帰りにダンプに跳ねられた俺が目覚めると、そこは異世界だった。だが転生した姿は前世とは真逆。  病弱で華奢。戦闘力最低と言われる職業の「治癒士」(ヒーラー)適正の10歳の少年・ノエル。  「俺は戦闘狂だぞ!このひ弱な体じゃ、戦えねぇ!  「華奢でひ弱な体では、空手技を繰り出すのは夢のまた夢……」  魔力と資質が全てのこの世界。努力では超えられない「資質の壁」が立ちふさがる。  だが、空手馬鹿の俺の魂は諦めることを知らなかった。  「魔法が使えなきゃ、技で制す!治癒士が最強になっちゃいけないなんて誰が決めた?」  これは魔法の常識を「空手の技」で叩き壊す、一人の少年の異世界武勇伝。    伝説の騎士、美少女魔術師、そして謎の切り株(?)を巻き込み、ノエルの規格外の挑戦が今始まる!    

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。 《作者からのお知らせ!》 ※2025/11月中旬、  辺境領主の3巻が刊行となります。 今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。 【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん! ※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。

処理中です...