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第十二話 悪夢の始まり
しおりを挟む僕、颯馬、トロルさん。
街に帰ってきて、今は疲れを癒すために風呂に浸かっている。とても気持ちがいい。貴族や王城とドンパチやって今日は非常に疲れた。むちゃデブ伯爵のおかげで相当のお金が手に入ったからしばらくはゆっくりするよ。
「うい~す。お疲れさん」
ルシウスも来たみたいだ。
お風呂というか、もう銭湯だよね。
「ルシウス。お前もよくやってくれたな。ランクの方はどうだ?」
「お、早速だなァ。よくぞ聞いてくれた。とりあえず、パーティーランクはBランクにまで上がった。んで、あとはお前ら二人の昇格試験だ」
「昇格試験?そんなのあるの?」
「あぁ。現地のAランク以上の冒険者が腕を確かめるんだとさ」
へぇ・・・。
あとは僕と颯馬だけか・・・。
「ま、二人共余裕だろォなァ」
「そう?僕とかかなり危ない気がするけど・・・攻撃スキルないし」
「白金にはトロルさんがいるじゃァねェか」
「あれ、従魔も一緒に戦っていいの?」
「この世界から魔物使いがいなくなっちまうよォ」
それもそっか。
トロルさんがいれば百人力だよ。僕はせっせと罠を使ってるよ!
「颯馬は心配なさそうだなァ」
「負ける気がしねぇからな」
颯馬が負けちゃったら僕もトロルさんも勝ち目ないよ。
「んで、試験日は?」
「明日から一週間までならいつでもいいってさ。ギルドマスターのお墨付きもあってな。二人の実力はある程度わかってるから、形式上だとさ」
もう試験なんてしなくて宜しいんではないでしょうか。
僕、試験の類って嫌いなんだよね。特に座学。
「あ、そういえば、Bランク試験には一般常識テストがあるそうだせ。だがまァ、2人なら大丈夫だよなァ」
・・・はい?
「筆記試験?」
「・・・筆記試験・・・だと・・・・・・?」
「アァ?どうしたんだよ二人共」
筆記試験。それは僕の人生において最も足を引っ張ってきた因縁の相手でもある。僕のIQや記憶力は世界の底辺と呼ばれたほどだ。チキンヘッドと呼ばれたこともあったし、宗教関係の人々からは創造主の失敗作と呼ぶ人もいた。
でも僕はそれにめげず、いつか希望の光があると信じて突き進んできた。
そして、その希望は異世界に来て叶えられたと思ってた。
現実はいつも非情だ。僕はやはり失敗作だった。そう思わずはいられない。どこにいても、因縁は僕を追いかけて来るのだから。
「終わったな。白金、お前の冒険者生活は終了したんだ」
「嫌だァ!お願いします颯馬様!一日でいいからその脳と僕の粗末な脳を交換して!」
「ふざけんなっ!お前の脳で生活するとか考えられねぇわ!数式を見るだけで頭に激痛が走るとか不自由すぎるわ!」
「・・・白金って不憫な子だな・・・」
おだまり!それだけ筆記テストは無理なんだよ!
「クソッ!俺はこの世界の常識全てに精通しているが、このアホは別だ・・・!誰か!誰か家庭教師はいないか!!」
颯馬がかつてないピンチにそう叫ぶ。
馬鹿め。家庭教師で解決するなら、僕も先生も頭を抱えてないよ。
「あーそうだったなァ。・・・キアラにでも頼むしかねェんじゃァねェの?」
あのアホの子に馬鹿の申し子である僕が頭を下げるなんて・・・!恥でしかないよ!
「お前は存在してるだけで白金家の恥さらしと言われたがな」
「あれは父さんの冗談だよ」
「・・・そうか」
しかし、今の僕はキアラに頼むしか道がない!
颯馬はね、頭がいいんだよ。頭が良すぎて、僕は彼の言っていることの意味がまるで理解できないんだ・・・。
・・・悲しいよね。友が必死になってテスト範囲の裏技を教えてくれてるのに・・・当日のテストでは学年ワースト2位に百点の差をつけて敗北したんだから。
僕以外にも颯馬に教えてもらった人がいたんだけど、その人たちは全員上位五十名にくい込んでいた。颯馬の教え方は、普通の人には効果てきめんだったんだ。文句は言えまい。
「そうと決まれば早速キアラに頼みに行くぞ」
「・・・うっす。ちなみになんですけど・・・その常識テストって合格点はいかほどで?」
「八割答えれて、ようやく合格だ」
あ、終わったっす。
◇◆◇◆◇
キアラになんとか頼み込み、家庭教師をして貰えることに。ドヤ顔かつ、嫌味をかましてきたのでムカッとしましたが、仕方がない。今の僕は下の立場だ。甘んじて受け入れよう。キアラに言われたのがすごくしゃくだが、仕方がない。
「颯馬さんは大丈夫なんですか?」
ほぉ、調子に乗ったなキアラよ。颯馬はいつでも抜かりない。図書館にある情報全てをその頭で保管している。僕のチキンとは違うのだよ。
「大丈夫だ。試してみるか?」
「え、ええいいでしょう!今までの恨みを込めて颯馬さんをギャフンと言わせてやりますよ!」
ギャフンと言わされる未来しか見えない。
「魔人!魔人の定義をどうぞ!」
「一般的には魔物の上位互換として考えられることが多いが、実際のところは違う。魔物は核があるが、魔人は核がない。今まで核と思われていたアレは心臓が死亡すると同時に硬直し、体内を回っていた魔力が心臓の周りを保護し始める。それが元来核と呼ばれていた物だ。じゃぁ魔人が何者かっていうと・・・魔人は元々意思ある人間だ。魔族ではなく、人間だ。原因となることは二つある。一つは魔力の暴走。魔力回路が急な魔力増幅に耐えきれず、魔力が脱線してしまうことで、本来到達しないはずの場所にまで魔力が回ってしまう。これが人間と違う姿になる原因。二つ目は感情の爆発だ。負の面、怒りや恨み。そんな感情が暴れ出すことで、自我の制御ができなくなり魔物のような本能に従った行為に及ぶ。しかし、二つ目に当てはまらない魔人もいる。それは、魔人になることを望み、感情を完全にコントロールしてみせた者だ。希な例だが、いる。圧倒的な力と理性を持っているので、かなり厄介な存在だ。定義、というものは本来ない。外野から見て魔人と判断されるまでは人間なんだからな」
「はい、ぶっぶー!そんな訳ないじゃないですか!魔人が元人間で?感情や魔力の暴走だなんて!」
キアラが顔の前でバッテンを作る。
「いや、颯馬の考察はほぼ正しい。よく知ってるなァ。国の上層部でも握り潰していた情報だったんだがァ・・・」
「少し考えればわかる。過去の資料を読めば確信ももてたからな」
いや、なんでルシウスが知ってるのさ。
「俺も昔は国に務めてたんでな。情報を聞くこともあったんだよ」
「み、認めません!認めませんよー!」
「いやだがな・・・事実といえば事実だし・・・」
「颯馬。試験の解答は少し自重した方がいいゼェ。お前が分かって当然のことも、俺らにとっては新常識だからよォ」
それは言えてるね!
日本にいた時も、学者の話を横から聞いてて、矛盾点と改善点を伝えてノーベル賞まで持ち上げちゃった人だから!もう偉人に片足突っ込んでるんだから、自重という言葉を覚えた方がいいと思うんだ。
でもこれで、颯馬が満点合格なのは確たるものとなった。
まずいね。なんとか颯馬も道連れに・・・
「やめろバカ。俺の足だけは引っ張るなよ」
「・・・颯馬さんがすごいのは分かりました。ですが、白金さんは安定の馬鹿です。絶対に」
絶対にってなんだ。
頭が悪いのは認めない。
「このままではBランクには上がれません。今日から毎日!みっちりと勉強しますよ!」
・・・桃源郷が地獄に変わった。
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