僕達はどうしても美少女を仲間にしたい

はたつば

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第三十話 だめよっ!そっちの道は極道よ!

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  あれからかなり歩き、とある街で馬車を購入してファルマン王国へとようやくたどり着いた。馬車代は僕らとファルマンの折半だ。頭おかしいです。

  ファルマン王国王都は水の都と呼ばれ、かなり水源に恵まれている。海水ではなく、純水だ。それが垂れ流すほどあるこの国は幸せだろう。国の周囲は水に囲まれ、魔力で動いている可動橋を使わねば入国できない。魔物や敵国の兵士が襲ってきた時、国に入らせないための措置だ。
  この水の都は観光地としても人気が高く、旅客による収入が主な財源だ。景観をそこわないためにと住民への規制も多い。清く清潔な都を意識した結果だろう。出店なども一切なく、大通りにはお洒落な喫茶店や雑貨屋が多い。争いごとのためにある武器や防具は観光客が訪れないような場所に集中して置かれているが、そこも清潔が保たれている。
  しかし、やはり一番の人気は王城だ。水の上の孤城と言われ、国の外周と同じく、水に囲まれている城。城を起点として軌跡を描くようにして舞う水は夜には色とりどりのライトを当てられ、とても幻想的に見えるそうな。

  僕らもお荷物たちを抱えていなければ、純粋に楽しめたであろうこのファルマン王都。みんなと次は観光に来よう、と約束して今回は事件解決に力を入れることになりましたよ。


「それでは、勇者様は我が城に是非来ていただいて!・・・ほかの方は・・・」

「俺たちは俺たちで適当に観光してくるから、そいつらは任せるわ」

「あ、はい!お世話になりました!」


  邪魔者扱いされることは分かっていたので、こちらから離れるように明言しておく。これで僕らは表向き観光客だ。国に入るまではお姫様たちのお世話になって、そこからは自由行動。

  囚われの勇者様はお姫様にはがっつり腕を組まれて連行され、騎士様がたもそれについて行く。僕らはその場に取り残されたわけです。
  ちな、女子高生も取り残されております。利用価値がないと判断されたのかな?いや、単純に女子高生二人は勇者だと言ってないからかな。


「シアン、ルシウス、佐々木、内山。お前らは宿の方任せるわ。俺はやることがある。白金、キアラ、魔物組は俺のお手伝いな」


  女子高生のお守りにルシウスとシアンをつけるわけね。せっかくファンタジーの世界に来たのに夢を壊すような様は見たくないだろう。そのへん含め、ルシウスとシアンに任せるわけだ。夢見せたげて。


「分かったぜェ。こっちは任せなァ!」


  うん。イマドキ女子高生の相手は大変だろうけど任せた。

  ルシウスたちと分かれて、まずは作戦会議だ。
  この綺麗な街ではあんまり見かけなかったけど、できれば暗いところに行きたいよね。暗殺ギルドの人間を呼びにくいし。颯馬陣営の人間がどれほどこの土地に隠れてるかは知らないけど、かなりいるだろうし・・・

  そんなことを考えていると、いつの間にか颯馬は大きめの封筒を一つかかえていた。


「いつの間に?」

「ついさっき。すれ違いざまに交換した」

「交換?」

「金と情報」


  ・・・なるほど。

  そんな現代チックな交換方法とは・・・。というか、金と情報って・・・スパイかなにかなのかい?君は一体なんのためにそんな人たちを派遣してるのさ・・・。
  やろうと思えば、世界征服とか出来るんじゃないの?本当に。

  封筒の中身を確認した颯馬はため息をついた。どんな内容だったのやら・・・。


「そうとうまずい状況らしいぞ?見てみな」


  口で説明するのは周りがいるここでは危険だと判断したのか、僕に封筒の中身である紙の束を寄越してきた。
  僕はそれを受け取り、一枚一枚じっくりと確認していく。国の状態や勇者について。呪術師についても記載されていた。それを読み切り、次はキアラに渡す。

  内容はこうだ。

  呪術師が王妃を人質に勇者の血を要求している。寄越さねば殺す、と脅して。
  呪術師の狙いはおそらく、数日前に盗まれた秘宝を起動させることだとか。しかし、国はその秘宝を起動させると何が起こるのか知らないらしい。
  んで、呪術師は復讐のために動いているとか。愛する娘と妻が不慮の事故で死んだそうな。まぁもちろん、不慮の事故ではない。国に揉み消された事情だ。

「なるほど、だからですか」

  キアラが紙束を見ながら呟いた。
  お姫様は先祖帰りにより、『魔物を惹き付ける』呪いをその身に受けている。僕らが魔物から何度も狙われてきたのはそのせいだったようで。

  そして、呪術師の娘と妻が死んだのもそのせい。
  お姫様の祖父が所有する別荘でお姫様と遊んでいた娘と妻は魔物の特殊個体に襲われ命を落とした。しかし、お姫様は狙ったかのようなタイミングで現れた騎士によって救出され、生き残った。
  呪術師にはそれが許せなかったそうだ。

  ま、復讐の理由には十分だね。一番大切な存在、愛しい者の死。さぞ苦しかったろう。神などいないと心の底から思ったことだろう。

  正直な話、同情してしまう。
  お姫様殺し、国破壊を手伝ってあげたくなるほど。


「どちらを救うか・・・ですね」


  その通りだ。
  おそらく、いや間違いなく、僕らが味方した側が勝利するだろう。国を破壊するのも、呪術師を殺すのも僕らにとっては難しくない。

  だからこそ、悩む。

  たとえここで暴れ回ったとしても、身元がバレることは無いだろう。たいていの事は颯馬が握りつぶせるだろうし、それでこの世界で居場所がなくなったとしても僕らは自分たちで生活環境を作り出すことくらい造作もない。魔法も科学も人脈も金も。不足してるものはないのだから。


「どうします?颯馬さん」


  僕らでは決めかねる。
  困った時は颯馬だ。僕らは颯馬の決めたことならばどんな未来であろうと受け入れよう。人任せだと思うだろうが、これが一番正しい終わり方なのだ。人の情に流されることなく、自分に利のあることを見極められるこの男の言うことならば、僕は信じる。

  それが、例え外道の道であったとしても。


「・・・・・・勇者がこの国を救うシナリオを作る。ハッピーエンドにはさせないがな」


  僕とキアラは言葉を発することなく首肯する。


「・・・・・・作戦はこうだ」



◇◆◇◆


◇第三者視点


  勇者明野正明は地下牢に捕えられていた。

  手足を鎖に繋がれ、奴隷の首輪をつけられている。首輪の力で魔法を使うことも出来なければ、聖剣を呼び出すことも出来ない。
  ただの高校生に成り下がっていた。


「なぜ、なぜだ・・・アリエル姫・・・・・・これは一体・・・」


  勇者は動揺を隠しきれずにいた。

  この国の国王と姫、王太子とともに夕食を美味しく堪能していたら急に眠気が襲ってきて、気が付いたら檻の中。
  なにか不敬を働いたか?と、頭をよぎるが、今更だな、とその考えを切り捨てる。


「師匠たちは何をしているだろうか・・・助けには・・・・・・来てくれるわけないよね」


  当たり前だ。
  思いかえぜば、自分だけがいい思いをしていて、颯馬や有香、千尋には酷いことを強いていた気がしていた。
  仕方がない。
  こうなって当たり前か・・・などと、諦めの表情を見せる。


「はあぁ・・・僕がこうなるとはなぁ・・・・・・」


  自分はこう、愚かな勇者にならないと勝手に思っていた。

  小説やアニメのように自惚れた勇者には、くだらない正義を振りかざす勇者にはならないと思っていたのに。
  いざ勇者となって、周りにチヤホヤされて・・・・・・その報いがこれだ。
  みんなと分かれた時。その時、有香と千尋たちについて行けば、こんなことにはならなかっただろう。テントの中で就寝した時に、颯馬や白金からファルマン王国の情報を貰っていれば、事前に対応出来ていただろう。

  選択を間違えなければ、愚かにも首輪を付けられることなどなかっただろう。

  勇者は思考する。
  このまま、愚かな勇者のままでいいのか?と。


(考えろ。考えるんだ。愚鈍なままでは終われない。事情があろうと、なかろうとここにいるままでは何も変わらない。そうだ、師匠ならばこんな時どうする?)


  牢屋を破壊し、この国のありとあらゆる財産を根こそぎ奪い取ってから、他国に情報をばら撒いて復讐します。


(どんな汚い手を使っても、今の状況を把握し、己の助かる道を模索するだろう)


  颯馬ならば可能だろう。
  だが、そんなことよりも破壊してこの国を壊した方が面白―――


(でも、それをそのまま活用しても、意味が無い。僕は勇者だ。この世界ではいい顔をしなければならない。同じ勇者である有香や先輩の顔に泥を塗るわけにはいかない。カラン王国にも迷惑をかけたくない。穏便に・・・いや、ファルマン王国に恩を売る形でことを沈めさせたい・・・・・・)


  勇者は頼りにならない頭をフル回転させる。


(要は、表面だけいい勇者でいればいい。見つからなければ、犯罪も犯罪ではない。顔を見られなければ、証拠を残さなければ、その犯罪は勇者のものでは無い)


  考えが師匠によりはじめている。

  これは危険な兆候なのだが・・・・・・残念なことに、それを咎めることの出来る人間が近くにいないっ!
  颯馬対策専門家『白金時也』。
  ストッパーツンデレ少女『佐々木有香』。
  真面目系常識人『山本千尋』。
  いつもいてくれたはずの人間がいないのだっ!

  牢屋とは恐ろしい。

  常識が、考えが捻じ曲がったこと、それを誰も指摘してくれないのだっ!


(この牢屋で一日様子を探る。看守の顔、性格、行動パターンを把握する。看守同士の会話や囚人同士の会話を一字一句聞き逃さない。あとは・・・時間だね。いつ、何が起こるのかを確かめたい。それさえ分かれば、この牢屋を抜け出して情報を集め、看守が来る時には戻ってこれるはずだ)


  考えが!脱獄者のそれであるっ!

  このまま颯馬化が進めば、この世界を守るはずの勇者が裏の世界でも天下をとるようになってしまう!
  もし!もしもだっ!この勇者が、密偵を使ったり、盗賊組織を束ね、情報屋を作ったりしたら・・・・・・とんでもないことになる・・・!危うい魔神退治の旅になってしまう!

  勇者は勇者らしく、馬鹿正直に正義の味方であればいいものをっ!
  なぜ、そんな外道を・・・!

  いつから、平成の勇者は悪役に・・・・・・。


  勇者は鎖に繋がれたまま、目の前を通り過ぎる看守、遠くで全体を見回している看守、料理を運んでいる給仕。
  あらゆる人間をその薄汚れた目に焼き付ける。


(武器は長剣。見る限りでは支給品だ。防具も優れたものは使っていない。 手入れもなっていないところを見ると、あまりやる気のある人間はいないらしい。看守が持っている鍵はそれぞれ五本ずつ。一つ一つに管理番号が付けられており、恐らくそれが囚人番号、または牢屋の番号と対応しているのだろう。王城で見かけたメイドや執事のような使用人は一人もいない。ここに務めているか、それ以外から引っ張られてきたか・・・)


  勇者は見る。


(魔法の使用や敵対行為は首輪の力で禁止されている。僕はどうすればいい?どうすれば、うまくこの監獄から抜け出せる・・・?)


  そんな時だった。

  勇者が勇者ならざるものになる運命に導いた男と出会ったのは・・・・・・。



「なぁ、兄ちゃん。俺とこの監獄、抜けてみねぇか?」

  




―――――

はたつばです。

もはや、恒例だよね、遅れるの。

明日から小旅行に行ってくるので、来週はお休みします。
さーせん。
再来週は間違いなく出します!!

お土産はないです
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