異世界に来たら勇者するより旅行でしょう

はたつば

文字の大きさ
13 / 138
第一章 召喚されたからって勇者はしない

第十三話 目的達成と事情

しおりを挟む

  超速で漆黒竜を追う。俺たち以外誰もいないこの世界では障害物はない。強いていえば寝ているマリーだけ。
  漆黒竜は必死に逃げているようだが、逃がしはしないし、逃げられやしない。あっという間に追いつき再び殴る。俺が殴った部分。漆黒竜の腰から右の足先までがそこから消える。

――グァァァ!!

  バランスをとりにくいのかフラフラと揺れながらまた飛び、逃げる。

「させねぇよ」

  戦闘系恩恵シリーズ『重力操作』
  対象のもの、場所の重力を自由に操作する。普段の俺は自分に三倍の重力をかけているので、制限をはずした今、めちゃめちゃ体が軽い。

  漆黒竜にかかる重力を二百倍にする。
  漆黒竜は地に落ち、動けなくなった。死んではないが、動けはしないだろう。今のうちに・・・

ドパンッ!!!

  黒く硬い鱗で覆われた翼に穴が開く。これで重力を戻しても、飛べはしないだろう。

――グ、グハハ。やはり強いな貴様。手も足もでんかったぞ。後半は特にな。さぁ儂を殺れ。貴様のような強者に殺られるならば悔いはあるまい

  辞世の句を読みそうな程衰弱しているようだが、死なさねぇよ?
  すぐに再生をかけてもいいのだが、その前に……

「漆黒竜。俺のペットにならないか?今俺は旅をしている。それについてくる気はないか?」

  ペットのお誘いを忘れない。これで手に入ればもう最高の収穫だね。

――ペット・・・?わしが?竜種の頂点の一人である儂が?ペット?

「何かおかしなことを言ったか?」

――クク、クハハ、グハハハハ。面白い。全く・・・お主らは本当に面白い男達だな!よし分かった!!儂はお主に付き従おう!

「よしきた!これから宜しくな。ってことで、まずは傷を癒してやる。『再生』」

  神威も、制限解放も行った状態で使った再生により、漆黒竜の傷は一瞬にして癒える。欠損部位も再生し、元の状態へと戻った。
  俺ももう戦う必要はない。神威解こ。これむっちゃ疲れるんですわ。
  別で隔離しておいた皮膚は戻ってきて、機械の腕は隠れた。もう片方の黒い体も元の色に戻っていく。

――ふむ。これは凄いな。古傷まで治っておるわ。貴様等異界人の力は便利なものだ。

「まぁ、ここまで出来るのは俺ぐらいだがな。おっと、自己紹介をしてなかったな。俺の名前は黒田楓。異世界の恩恵使いだ」

――儂は天を統べる五帝竜の一体。この迷宮の支配者である闇を統べる竜。漆黒竜だ。名前はないので名乗ることはできん。許せ。

  アホでかい巨体を起こし、頭を下げる。
  改めて見るとやっぱりデカイな。

「お前もう少し小さくなれないか?こう・・・きゅっと」

――なれるぞ

  なれんのかい。お前すごいな。
  漆黒竜は一度「ふんぬっ」と気合を入れる。するとみるみるうちに縮んでいき……

「これでどうじゃ?なかなかじゃろ?」

  人間の男になった。しかもかなりの美丈夫。そして、アロハシャツを着ている。アホっぽい。
  訳が分からない。なんでもありか異世界・・・。

「人間にもなれるのか・・・。最悪俺の創造空間で飼われてもらおうかとも思ってたがこれなら普通に家に入るな」

「その年でもう家を持っているのか。場所はどこの大陸なんだ?」

「大陸ではないな。強いていえば俺の創造空間といったところか。持ち運び可能な家だな」

  あまり意味を理解できていないのだろう、漆黒竜は首を傾げている。だがいちいちここで説明してやれる程楓さんは甘くない。一度目で理解しないなら実物を見ろ。

「それよりもここのダンジョンを攻略するぞ。ここが八十一層ならばお前よりも強いやつがわんさかいるわけだろ?」

  一番奥のボスとかどんだけ強いんだよって話だよな。俺も死ぬ可能性がある戦いになるだろうな。

「は?何を言っているんだ?お主は。さっき言ったろここのダンジョンの支配者は儂だと」

「……ん?あなたは階層主ではいらっしゃらない?」

「おう。儂は人間で言うところのダンジョンマスターじゃからな」

「なぜあなたはここにいらっしゃるので?」

「急にかしこまってなんだ?ここにいるのは強者の気配がしたからだな。あの光魔法師達は弱かったから勘違いかと思っていたが、お主と出会えて満足じゃよ」

  それ男に言われても嬉しくないし。てかあいつら魔術師と天才だし。

「なるほどな。つまりお前以上に強いやつはここにはいないと?」

「いたら儂ダンジョンマスターじゃない。というか今のダンジョンマスターはお主、楓じゃぞ。」

  ・・・めんどくさい予感がががが。
  でもそうか……ここが俺の家になるわけか・・・悪くない。
  ダンジョン暮らしも悪くなくね?転移あるから旅の途中で帰っても言い訳だ。
  昨日は草原で寝たが、これから先の旅で凶悪な魔物に襲われんとも限らん。我々も空間で寝泊まりすることになると思っていたが……。

「ダンマスの部屋ってあるのか?あるならそこに家を設置しようと思うんだが」

「あるぞ。今は宝物庫のようになってしまったがな」

  そうか……。では行ってみるかな。

「案内してくれるか?そこでこれからの方針を話していこうぜ」

「あいわかった。では飛ぶぞ……」

  なんか忘れているような……っっ!!マリー!!!!

「ちょい待ちっ!!」

  いっそいで回収する。未だ気絶しているようだ。全身から汗が吹き出ていた。危ねぇ・・・。空間に取り残して行くところだったぜ……。
  額の汗を拭い、俺は何も無かったように世界眼にダンマスの部屋へのナビを頼む。
 
「ふぅ。良かった良かった。では行こうか『転移』」

  再び景色が変わり、周りが金ばかりの部屋へと移った。
  わお……財宝の山やぁ……
  一面金金金。もううざいくらい金。部屋の光が金に反射して眩しいったりゃありゃしない。
  こいつ、ここに住んでて嫌にならんかったのか……?

「ん?なんだ?……おお!ここは!帰ってきたぞ愛しのマイホーム!!」

  テンション上がってるし・・・。ここが漆黒竜さんのお家で間違いないようです。漆黒竜の全身を包む鱗は闇を宿しており、真っ黒なはずなんだが・・・。合わなすぎる。こいつ竜形態の時からここに住んでるんだよな・・・。眩しくないのか・・・。

  漆黒竜のテンションがアゲアゲのところ悪いが、問答無用で空間にポイする。  
  
  頭を抱え、嘆き、俺に文句を言ってくるが俺には慈悲などない。無駄な物はこの場から消す。今この財宝はいらない。後で俺かマリーが売ります。

「貴様楓っ!こんな空間寂しいだろ!!戻せ!財宝を戻すんじゃぁ!!」

  口調を統一してくれ。キャラが掴みにくい……。
  
  漆黒竜は無視する。
  別空間に置いておいた家(屋敷)を取り出し、中央に設置。
  その流れで地面に手をつけ『創造』する。なにをかって?畑と田んぼですよ。俺達には力があるし、金も今手に入れた。あとは食料確保ですよ。水なら創造で無限に作れる。日本の水道水レベルなので飲料水にもできるよ!
  というわけで食料がないのだ。魔物の養殖もしないと……。したいことが多すぎるぜ。楽しすぎるぜ異世界生活。

「うおっ!これはすごいな。本当に家じゃないか……。畑までっ!楓すごいな!」

  テンションの浮き沈みが激しすぎる!めんどくせぇなこの蜥蜴!!今は人間か!

「あーはいはい。わーったから中に入れ。部屋の説明をするから」

  マリーをリビングのソファーに寝かせて、家(屋敷)の説明をする。
  異世界の品物にいちいち驚いているので若干うざい。
「楓!この人が入っている薄っぺらな板はなんだ!?」
  とか
「楓!このベッド凄いな!ふっかふかで体が沈むぞ!!」
  とか。兎に角はしゃくはしゃぐ。
  さっきまでの威厳はどうしたんだか……。


  それから数時間が経ち、現在食事前。それまではダラダラと過ごしたり、マリーが飛び起きて気絶したことをひたすら謝り、腕によりをかけて料理を作るので許してほしいと懇願されたりして今に至る。

  朝の効果があったのか、夜ご飯は全員豪華飯だった。昼飯は食っていない。そんな暇がなかったからな!決してマリーが寝てて誰も作れなかったわけではない。

「んじゃ食うぞ。いただきます」
「はい。いただきます」
「……いただます?」

  いただきます、な。

   マリーの伝説級の料理に俺と、漆黒竜は満足気に笑う。漆黒竜もこんなに美味いのはなかなか食べられないらしい。

  今回のダンジョン探索の目的一つ目『ペットの確保』は成功。そして二つ目の目的『マリーのレベル上げ』。これを今から確認しようじゃないか。

  世界眼。マリーと漆黒竜それから俺のステータスを除きたい。今いいか?

〈すみません。少し待ってください〉

  ……え?はい?固有魔法に待つとかあるのか……?

〈申し訳ありません。あと10秒ほどお待ち下さい〉

  あ、はい。
  なにしてるんだろ。固有魔法の世界とかあるのかな……。いや流石に……ねぇ・・・

〈ありますよ。魔法やスキルの世界〉

  ……マジで言ってんのか!?

〈まじですよ。大マジです。楓様のフォローに回れていない時はそちらにいます。緊急のもの以外は抜け出さないようにしているんですが、こちらの世界も少し問題が起きておりまして、申し訳ございません〉

  ……お、おう。それはいいんだが……。大丈夫か?そっちの世界で忙しいのなら無理してでてこなくていいぞ?

〈申し訳ございません。もしかしたらそのような事態になってしまうやもしれません。〉

  りょーかい。あ、でもその際は鑑定的な能力は置いてって下さい。よろぴく

〈かしこまりました。それと楓様に助けを求める場面もあるかもしれません。その際は本当に宜しく御願いいたします〉

  あいよ。助けんのは別に構わんよ。ただし俺が助けるのはどうしても困った時だけ。万策尽きたら俺に頼れ。絶対に助けてやる。

〈ありがとうございます。……すみません。話が逸れてしまいましたね。では初めにマリーのステータスを覗いて見ましょう〉

  あぁよろしく頼む。




ーーーーーーーー
はたつばです。
今回はここで終わり!ステータスは次回ですね。
色々あるので忘れないようにしないと……(白目)
しおりを挟む
感想 173

あなたにおすすめの小説

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

【完結】召喚された2人〜大聖女様はどっち?

咲雪
恋愛
日本の大学生、神代清良(かみしろきよら)は異世界に召喚された。同時に後輩と思われる黒髪黒目の美少女の高校生津島花恋(つしまかれん)も召喚された。花恋が大聖女として扱われた。放置された清良を見放せなかった聖騎士クリスフォード・ランディックは、清良を保護することにした。 ※番外編(後日談)含め、全23話完結、予約投稿済みです。 ※ヒロインとヒーローは純然たる善人ではないです。 ※騎士の上位が聖騎士という設定です。 ※下品かも知れません。 ※甘々(当社比) ※ご都合展開あり。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

処理中です...