異世界に来たら勇者するより旅行でしょう

はたつば

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第五章 学園祭。この日を待っていたぜ

第七十七話 プリティィィィィ!!!

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  おはようございます、黒田さんちのチート担当楓さんです。
  今日は決勝ですね。その前にわたくしがエキシビジョンマッチに出ます。久々に頑張っちゃおうかと思います。親友である勇者に恥はかかせられないからな。吉岡を立てる形で優勝したいね。

ーーコンコンコン
「ご主人様、ダイニングで皆さんがお待ちですよ」

  マリーさんのモーニングコール。
  ほかの奴らはもうテーブルについているらしい。化物の皆さんを待たせるわけにもいかんからな、早く行くとしよう。

  いつもの黒い軍服を纏い、部屋を出てダイニングへ。

「お、来たか楓。やはりお前んところのメイドが作る飯は美味いな!俺がもらいたいくらいだ!」

  やらん!マリーさんはやらんぞ!俺だけのマリーさんだ!

「本当に美味しいよねぇ~。覇王がもらうってのは許せないな~。うちの国に来なよ~」
「・・・ん。・・・マリーちゃんを雇う準備はできている」

「それならばうちにも家政婦として欲しいよね」
「ですね。新しい子供が産まれたらお世話をしてほしいです」

  やらん!やらん!やらんぞぉ!

「貴様らにやるマリーさんはいない!」
「ご主人様のメイドですので」

「あら~残念~」
「・・・ちっ、早くしねばいいのに」

  聞こえてんだな、これが。
  隠そうとしなさいよ、せめてさ。

  そんなこんな、楽しく殺気和やかムード漂う朝食を終え、皆さん住処へと帰っていった。
  まぁ、俺が早く帰れって言ったんだけどね。

「あいつらは全く・・・。久々に会っても現金すぎるやつらだぜ」
「楽しい方々ではありませんか」
「身内が被害者じゃなければ楽しめるんだがね・・・」
「私は嬉しかったですよ、ご主人様の新しい世界をしれて」
「・・・そうかい」

  マリーさんは寛容だ。
  俺とあいつらしかいなかったら即蹴散らしてるわ。

「さ、ご主人様!今日はエキシビジョンマッチ、決勝戦と大忙しです!頑張りましょうね!」

  君の笑顔に1000000v。
  マリーさんの笑顔で充電満たんだよ。もう1000年くらいは生きられるわ。

  こりゃカッコいいところみせないとな!

「よし、行くかっ!」
「はいっ!」

  テンション上げてくぜぇ!・・・少年漫画みたい。




  あれから時間はすぐに経ち、今はもうエキシビジョンマッチの控え室にいる。
  隣には吉岡がおり、緊張した面持ちだ。

「周りのヤツら強そうだな」
「・・・そうか?」

  緊張して周りが見えていないように見える吉岡。だって、雑魚ばっかやで。
  なぜそうも緊張してんのか。学内の選考会では余裕そうだったんだが。

「絶対に勝つぜ・・・!」

  勝ちに固執してるからか?俺と出るから?・・・わからん。

「エキシビジョンマッチを始めます。選手の皆さんステージに集まってください」

  控え室に運営スタッフが来る。
  ・・・考えていても仕方ない。国民を安心させる勇者に仕立ててやろう。

  ステージに立つ人間はそこまで多くなかった。20名に届かないくらいの数だ。見た感じ強そうなのは3組だけかな。
  強いって言ってもこの世界基準だけどね。
  しかし一つ問題がある。その3組のうちの1組が問題なのだよ。吾輩が出会った中でかなりの難敵であったろう人間。異色を放つ2人だ。皆さんご存知のこちら

「あっら~ん?あなたあの時のぉ!」
「あらまっ!アレがお姉様の運命の相手なのねっ!」

  プリティーラブリーキューティーハニーオカマッチョ筋肉とオカマを司る俺が「最も強い人間」と評価した漢女。あともう1人は似たようなオカマだな。
  金髪ツインテールにギリギリ(アウト)の水着を身につけた超絶プリティと熊さん(厳ついやつ)がプリントされた黄色のTシャツとヒラヒラの赤いミニスカートを着て園児のような黄色のハットを被った同じくオカマッチョの2人組。

  あかん、これあかんやつや。

「楓、あいつら任せていいか?」
「絶対に嫌だ!」

  死んでも相手なんかしてやるか!
  他にも強いやつはいる!俺はそっちを片付ける!

  一度拳を打ち合っただけでも吐いたのに、なぜ2回め!なんで俺の運命だけこうもスーパーハード(ゲイ)モードなんだよッッ!

  俺と吉岡がオカマの処理を押し付けあっていると、司会の嬢ちゃんによる放送が入る。

「皆さん、この度は超越者の方が2人も参戦してくださっています!その他にも聖騎士の皆さんが沢山いらっしゃってますので、こちらも熱き戦いになると思います!決勝大会の前哨戦。色々な事情で出れなかった皆様にはここで発散してもらいましょう!エキシビジョンマッチ、スタートですッッ!」

ーーゴーン!!

  勢いよく鳴らされたゴング。
  このゴングが悪夢の開始を伝える合図だったとは・・・。

「むっはーぁ!!いっただっきまぁぁすぅ!!」

  いやぁぁぁ!!!

  オカマがすっ飛んできた!?
  ちょ、吉岡さん!俺の後ろに隠れるのはずるくね?まっちょっっ!

「しゃらくせぇぇ!!」

  俺が吉岡と恐怖で抱き合っていると、オカマッチョはある男の拳により吹き飛ばされていった。

「はっ!何してやがんだ楓ェ!お前が殺らねぇなら俺が貰うぞッ!」

  肉弾戦最強の男『覇王』である。
  あ、どうぞどうぞ。俺あんなの要らないんで。まじで。

「お、お姉様ー!許すまじ、この筋肉がァ!」

  いや、どっちもどっちだろ・・・。

「せいッ! 」

  ジャンプして太陽を隠すようにして迫るオカマッチョに向かって覇王は何も無い空間を殴る。
  その風圧は尋常ではない。ハリケーンのような暴風がそちらにいた参加者の体を吹飛ばす。本来はその一発で敵の戦意を刈り取れるので、終わるのだが・・・この男はそんな普通にはなれない。

「ハッハッハ!!まだまだァァァァ!」

  その突風を何度も何度も打ち出していく。
  聖騎士であろう参加者が結界に押さえつけられ、体を圧に歪められていく。

「あ・・・がぁぁ・・・あぁ・・・」
「うわぁぁぁ!」
「いてぇ、いてぇよぉぉぉ!」
「かーちゃーーーん!!」

  貼り付けられた聖騎士達が悲鳴をあげる。
  ・・・最後のやつ結構余裕あるだろ。

「ぬぅんっっ!やめなさいっっ!」

  あ、プリティちゃん帰ってきた。
  獰猛なる鬼のように非常に服と合わない鍛え上げられた筋肉が装甲のようにつく腕を振り下ろすが、それも恐らく無駄なこと。

「正解です、楓さん」

ーーボゴンッッ!

  プリティちゃんの拳は覇王に一歩届かず、その手前で地面に叩きつけられた。

  出たな化物。
  強い組2組目。覇王&木下ちゃん。くそが、チートすぎるぜ・・・!!

「悪くない拳だな嬢ちゃん」

  ・・・っ!?お前にはプリティちゃんが『嬢ちゃん』に見えるのか!?
  ・・・え、なに?眼球胎児化してんの?

「だが、鍛え方がぬるい!」

  地面に腕を突き刺してるプリティちゃんに向けてか、覇王のガッチガチの足が地面を吹飛ばす。
  いとも簡単に吹き飛ばされるプリティちゃん。覇王も威力の調整はしているようで、そう簡単にこの戦いを終わらせる気が無いらしい。そもそも本気でやったら一振りでこの世界消えるけどな!
  てか、プリティちゃんの鍛え方がぬるいんじゃなくて、覇王の鍛え方が異常すぎるんだなこれが。
  最近は楽園の王ヤマと筋トレしてるらしい。過酷すぎる地獄の世界でね。
  ・・・ドMかな。

  しかし、俺と吉岡もここまでおんぶに抱っこ生活。
  さてさて、戦闘に参加しますかねぇ・・・。覇王とプリティちゃんが戦っている間にもう1人の超越者が反対のヤツらを一瞬で蹴散らしてた。次は俺達だろう。

「吉岡、やるぞ」
「お、おう。」

  さてさて、やりまするかね。

「こい、『月姫』」

ーーシャン・・・

ーーバキンッッッ!

  おぉ、防ぎやがった!
  まじか!初見殺しだとおもってたんだが!

  ほぉほぉなるほどな。
  おもしれぇじゃねぇかァァ!

  あれ?なんか俺も戦闘狂みたいな・・・

「フッ!」

  もうひとりの超越者はホストみたいなやつだった。
  緑色の髪で細身のイケメン。なんか翡翠みたいなイケメンだな。しかしその顔はフードのせいで見えない。

「『神の息ゴットブレス』」

  うおっ!?
  いきなりだな!無詠唱ってやつか!

  しかし甘い!

「『分解』」

  その魔法を分解する。
  相手も驚きはしない。

  むむ、なかなかに強いではないか。しかし魔法相手か・・・。
  結構きつい戦いになりそうだが・・・目の前の敵ばかり相手にもしてられん。

ーーブオンッッ!!

  0コンマ数秒前にいた場所に必殺の拳が繰り出され、その主の横蹴りを守護を纏った足で思いっきり蹴りつける。

「やっぱりお前が一番だぜ、楓ェ!」
「痛ぇなぁ、ばけもんが・・・」

  覇王。
  守護を100枚は張ったはずなんだが、今の1発ですべて吹き飛んじまった。相変わらずのバケモノスペック。怖すぎ。

「肉体にかかる全ての制限を解除。そして『変身』」

  機械と化物を半分ずつ繋げられた体を変身により隠す。
  本当は隠さない方が無駄な力を割かないから強いんだが、場所が悪い。そんなの使ったら勇者までビックリしちゃうよ。

「はっ!漸く本気ってわけか!」
「アホか!本気なんて出せるか!纏めて吹き飛ぶぞ!」

  俺と覇王で殴りあったら世界がいくつあっても足りやしない。

「ぐるァ!!」

  ってまだ、オカマ生きてんじゃねぇか!

  オカマを華麗に回避し、覇王の横っ腹を容赦なく『重力操作』『神威』『血液操作』を使って殴る。

「うおっ!?」

  結界まで吹き飛ばされて結界にヒビを作る覇王。だがそいつはピンピンしている。
  先も言っていたが、こいつの鍛え方は尋常ではない。打たれ強さは誰にも負けない。

  俺、覇王、木下ちゃん、プリティちゃん、イケメン超越者。

  人外戦争開幕!

  ちなみに吉岡は巻き込まれないように小学生風筋肉と騎士の格好をしたイケメンのお付と戦っている。
  ・・・賢明な判断だと思います。

「おいおい!よそ見するとか余裕そうじゃねぇかァ!」

  おっと、覇王さん。
  解説中に人外ナックルを放たないでくれるかな?危うく俺の頭がピチュンするところだったぜ?いくら再生するからってな、痛いものは痛いんだぞ。

「覇王!風を起こすのはやめて下さい!私も飛んでっちゃいますよぉ!」

  木下ちゃんも必死だ。

「・・・人外共か・・・」

  おいイケメン、お前今俺達の方向いて人外って言いやがったな!これでもお前ら超越者に合わせてるんだけど!

「『水神龍』」
「プリティナックルッ!」

「しねぇっ!!」
「全ての攻撃を楓さんに集中!」

  ・・・お前ら・・・どれだけ俺のこと殺したいんだよ・・・。

「あーもー!怒った!やってやるわい!『流星』!!」

  水の龍、プリティ、覇王、木下ちゃんの動きが止まる。

  水の龍(イケメン野郎)とプリティちゃんは天より鳴り響く轟音を聞いたから。
  覇王と木下ちゃんはその『恩恵』の危険度を知っているから。

「待て楓!全員ぶっ殺すつもりか!?」

「ふははは!纏めて消し飛ばしてくれるわ!」

「国ごと潰すつもりですかこのバカァー!」

  それはようやく知覚できるまでに降りてきた。
  巨大な岩、丘、あるいは星か。それが一国を呑み込まんと降ってくる。

「な、なんにぃよぉあれぇ」
「・・・馬鹿げてる・・・」

  ふははは!驚いてる!驚いておるな!この俺に喧嘩をうったこと、後悔させてやるぜ!

「覇王!なんとかなりませんか!?」
「破片・・・というか岩、それか大量の砂として国に落ちてくる。どっちがいい?」
「使えない筋肉ですね!まったく!」

  貴様らの弱点は知っておる!
  超大規模な範囲攻撃。それを貴様らの力で周りに被害を出さず消し去るのは不可能!

「使えない筋肉だと・・・?・・・俺の筋肉を舐めるんじゃない!」
「それならさっさとアレを消滅させてください!」
「あーいいぞ!やってやる!」

  ・・・え?
  嘘でしょ。できんの?フルパワーでもないのに?

「ふん!楓よ。俺は成長し続ける生物だ!やってろうじゃねぇかァ!」

  天に向かい、手をかざす。
  その手はデコピンの構え。

「ぬんッッ!」

  気合いの声を合図に押さえつけられていた指は解放され、衝撃波を作り出す。 
  よく見る衝撃波のそれとはまるで違う。肌にビリビリと感じるその威圧的な衝撃は巨大な星を破壊し、その破片全てをはるか上空、大気圏を超えた重力のない世界へと跳ね返してしまった。

  ・・・アレって地味にまずいよね。覇王があのレベルで跳ね返した破片はロケットスピードどころではない。他の星巻き込んで星屑を屑の屑にする気しかしないのだけれど。

「はっ!どーよ柚香!俺にかかればこんなもんだ!」
「はぁ、ギリギリでしたけどね・・・」

  くそう、化物め!
  流星の一つを打ち消されて正気に戻った俺は何事も無かったように全ての星を消滅させた。

「なによこれぇ・・・」
「・・・格が違う・・・」

  そうでしょう?これが人外戦争の一端です。
  原典戦争も見に来てください。これよりも酷いから。

ーードンッッ!!

  油断もすきもないなこの男は・・・。
  俺と覇王の力がぶつかり合う。鍛え抜かれた右ストレートと荒削りでステータス頼みの右ストレート。覇王がパワーセーブしてくれているおかけで俺の手は無事だ。

「油断はよくねぇぞ?」
「覇王!いきなりすぎます!それに、私をあまり置いてかないでください!素のステータスはマリアやマリーンよりだいぶ低いんですよ!?」
「ちっ!守りながらってのは相当ハンデになるんだがなァ?」
「バカ!義樹様の元へ嫁入りする前に私の体に傷でもついたらどーするんですか!?」
「・・・だからあれほど自己防衛術を学べと言ったのに・・・!」

  なんでだろうか。この二人が銀と白金と颯馬さんみたいな馬鹿に見えてきた。

「いいから早く来て!」
「へいへい」

  拳を合わせる覇王がその場から退く。

「・・・私も負けてられなぃわぁん!楓キューン!イくわよぉん!」

  来るな、ゴリラ

「・・・超越者としての初陣、負けられん!」

  頑張れ、イケメン

  と、言っても、さっきのを見て俺と覇王に向かおうとするのは半端でない勇気がいる分けで、今はゴリラとイケメンがやりあっている。
  なんか寂しす。

  よし、吉岡の助けにでも行くかね!

「せいっっ!」

  吉岡に近付く覇王という羽虫にドロップキックをくらわせる。

「大丈夫か?吉岡」
「あ?お、おう。なかなか敵が強いがな!だが相手にとって不足なし!」
「ほーかほーか。んじゃ『再生』」

  吉岡のHPとMPを全快させておく。

「邪魔するやつは俺が撃ち落としてやるから、腕試しだと思って遊んでみな」
「おうよ!」

  覇王とゴリラ、イケメンの相手は任せておけ!
  吉岡が負けるまでは嫌いな相手でもボコボコにするお!



◇第三者視点

  肉弾戦最強を自負していた吉岡は後方で行われている異次元の戦闘を無視する。
  超越者二人に親友、そしてその親友の知り合いであろう男。化物の闘争だと思っているのだろう。それは人間でない。人類最強は保たれているだろうと信じて。
  そのうち二名が全力の半分も出していないのだから驚きである。ちなみに木下柚香は覇王のお付とでも思われている。

  化物と化物オカマッチョそれとイケメンは彼の親友である楓が相手をしている。吉岡の敵はオカマと騎士のみ。この二名とも聖騎士レベルではある。肉弾戦ならば負けないだろうが、魔法が混ざってくれば話は別。負ける可能性は少なくない。

「さて、どうするか・・・」

  親友のおかげで疲労は消えた。
  しかし、戦いで押し負けていることははっきり分かっている。彼はあくまで人類。かの王のように無限に起こる限界突破など訪れるはずはない。
  ネメシス国王の言葉通り、立派な人間同士の戦いならば魔法という力は優劣をつけるのを容易にする。コンマ以下で敵を殴れるなら魔法使いは不利であると言えるが、そんなことが出来るのは異常者だけだ。
  吉岡は人間。それでいて使える魔法は肉体強化のみ。

  異世界勇者が持つべきものとしての切り札はある。
  だが、遊びのような戦いでそれを使うのも躊躇われる。

  魔法を纏った剣や拳を化物産のナックルを使ってかろうじて避けていく。防戦一方なのが辛いところだ。このままではHPを削り切られるだろう。なんとかして抜け穴を探すが、二人のターゲットは確実に吉岡に向いている。片方を先に潰そうと考えるのは当たり前といえば当たり前なのだが、吉岡からしたらたまったものではない。

「ふんっ!」
「・・・」

  何度か共闘したことがあると言わんばかりの息の合った攻撃。

(まずいな・・・!楓に恥をかかせるわけにもいかんし・・・)

  吉岡ちは勝つための方法に心当たりがあるにはあった。
  日本にいた頃に楓より聞かされたある化物の妄想話。貧弱であったただの人間が死線を越え、絶望を知り、世界の理を見た。人間に課せられたはずの枷を全て消し去ったある男の話を。

(楓が言ってた。「限界を超える。お前にはその資格があるのかもしれない」ってな。楓の妄想話にはいつも何故か知らないが現実味が節々に見えていた。今なら分かる。あれは全て真実だった)

  周囲を見渡す。

(限界を超えるにはどうすればいい!死線・・・絶望・・・世界の理・・・!)

  目の前には餌を見つけた獣のように暴力を振りかざすカマと騎士の二人。
  背後には性別を超越した男、魔法の天才、星を吹き飛ばした化物とその三人を相手にしながらも笑を絶やさない親友。

(うわぁ・・・。こっわいわぁ・・・でも、やるっきゃねぇか?)

  二人の獣を前にして、吉岡は脚の筋肉をフルに活用し、後方に跳躍する。

「なにしてんのぉ!?」
「・・・!?」

  二人の獣が驚愕し、足を止める。いや、足を止めた理由はそれだけではない。あと一歩踏み出せばそこは最悪の領域。化物が蔓延る次元の違う戦場。入ればターゲットがこちらに向く可能性を孕んだ死地だ。

「吉岡さぁん!?」

  親友も驚きのあまり目を見開き、その一瞬で覇王に拳を叩き込まれる。
  が消えた化物の戦場に子羊が迷い込んでしまう。

「しゃれぇい!!」

  訳のわからない奇声を発したギンギラギンの覇王が遠慮のない拳を吉岡に向ける。

(ここだっ!!)

  覇王の拳が心臓を捉える一瞬前に切り札を発動する。一瞬の加速は覇王の拳を心臓から遠ざけることに成功し、見事左腕を犠牲に生き残ってみせた。

「ほぉ?」

  吉岡の使った切り札は加速アクセラレーション。自分の筋肉を無理矢理働かせ、あと一歩を踏み出させる力。相手側が発動を悟ることは困難。どれだけ眼がよくても初見では対応出来ない。
  しかし、目の前の男はその発動を感じ取り、わずかに遅れたものの、確実に当てて見せた。

(こいつ本当に人間か?反射神経おかしいだろ。しかも出遅れたのに腕は完全に破壊してくるし・・・!)

  思い通りにいかない時、覇王は笑う。隠し玉、切り札、軟弱な者でも自分に一矢報いるその瞬間を楽しんでいる。もともと軟弱であった彼は足掻き苦しみそれでも逃げない者が大好きだった。

「ふはははは!いいぞ!それでこそ!人類!」

  二撃目。片腕を飛ばされて体勢を崩す吉岡を横から蹴り飛ばすつもりで放つ。

ーーダンッ!

  それを転移で戻ってきた楓が受け止める。

「吉岡!なんで来た!?死ぬぞ!?」
「限界を超えに来た!!」

  満面の笑みでそういう吉岡。
  それを聞いてまっさきに反応を返したのは楓ではなく、覇王だった。

「ハッハッハ!面白いじゃねぇかァ!限界を超えろ人間!死線を越えろ!絶望を、希望を、世界を解明せよ!そこに強さがある!そこにあるものは有限だ!掴み取れ人間!」

  大声をあげる覇王。
  頭を抱える楓と柚香。急に笑い始めた覇王を見て疑問符を浮かべるプリティとイケメン。
  覇王は大変喜んでいた。見えざるはずの才能が、積み上げてきた叡智が、もたらされた一時の力がたまたま表に出てきただけに過ぎないのに、それに理由をつけて、やれ天からの導きだの、やれ宇宙から舞い降りし奇跡だのと騒ぎ立てて行動を起こさない馬鹿どもとは違う真っ当な人間がようやく現れたと。

「そうだよな!これこそ人間だ!神の御業?世界の意思?ふざけるな!人間とは高みを目指すものだ!限界なんてもんは必要ない!人の上位が神だ?ンなわけあるか!初期値以外何も変わらん!そうだよな勇者!腕一本くらいで止めねぇよな!?」

  覇王が動きを止めることは無い。
  楓も吉岡を守るために動きを止めない。

  吉岡は立ち上がる。覇王の呼びかけに答えるように残された右腕を構える。

「楓ェ!どけやァ!」

  抑えていた力を一瞬解放し、楓の脇腹を蹴り飛ばす。この程度ではたいしたダメージを受けないが、夜の法則に則って吹き飛んでいく。

(ま、まずい・・・!吉岡が・・・!)

  既に覇王は殴る大勢に入っている。
  近くに仲間はいない。オカマとイケメンは動けないままでいる。

(死線を越える・・・!ここでこいつを殴り返さなければ、俺は前には進めない!)

  決死の覚悟。力の差は果てしない。覇王の拳が肉体に当たればその箇所は破壊される。

(力を貯める。生き残る。追いつくんだ・・・!)

  吉岡の意思に従ってその体は淡い赤色の光を放ち始める。

(いける・・・!これなら・・・!!)

  赤い光は吉岡を包み込み、強大な力を吉岡に与えた。
  その力は覇王を・・・!

「・・・悪くねぇな。だが、先輩なめんな」

  飲み込むことは無く、押し返されてその意識を刈り取られてしまった。

  ・・・挑むには早すぎたようだった・・・。覚醒した人間が皆強敵に勝てると思ったら大間違いだ!世の中には戦っていい人間と戦ってはいけない化物がいるのだ。

「・・・そりゃそーなるわな」

  そうなります。

「俺はいいと思うがなァ。一度目の限界突破は上手くいったみたいだし」
「・・・あんなの量産するんじゃないですよ!バランス大事に!」
「それは俺からも頼みたいな。あんまり人外を生み出さんでくれ」
「わーってるよ。てか、俺はなんもしてねェ。強い意志を持つやつが勝手に限界突破してくだけだっつうの!」
「それは厳しい言い訳だと思う」
「私もです」



◇楓視点

  吉岡が倒れ、残りは七名。
  俺は吉岡が倒れたことにより、これ以上なにかを狙うこともない。だから、殲滅を始めた。

  覇王、柚香と平和的会話をしていた俺は一瞬でイケメン超越者の目の前に現れ、概念魔法を発動させた。

『概念魔法』はんぱーつ☆

  無論、バカにより開発された魔法である。
  だが、殺しなしの戦闘では役に立つ。

「吹っ飛べ!」

  はんぱーつ。磁石どうしの反発を思い浮かべてくれればいい。それを自分の後ろに逆方向の重力を発生させ、その上守護結界を張って体を固定させてから最大威力で反発を発動させる。敵を吹き飛ばすには大掛かりな魔法だが、争いの中に楽しみを見出す俺だからこその戦い方だ。いかなる弱者にも真正面から真面目に戦う覇王はあまり好かない戦い方だ。

「っ!?」

  イケメン野郎を反発の力で後方に吹き飛ばした後は結界に強い重力を発生させ、その体を結界にめり込ませる。
  生きながらに内蔵を破裂させられるような感覚を覚え、その痛みは単純な肉弾戦では味わえない地獄を感じさせる。この悪魔の所業は決して楓さんのイケメンへの嫉妬から来るものではない。違うのだ。黒田の家系が美形揃いなのに自分だけ少しレベルが下がった気がしているとかではないのだ。

「そろそろ諦めてくんねぇかな?」
「・・・まけん・・・!」

  重力は更に強くなり、骨はギシギシと音を立てて悲鳴を上げ、内蔵圧迫により呼吸も苦しくなってくる。

「ふむ、『疫病』」

  ぞわり、とイケメンは体になにかが入り込んだことを悟る。

「がっ!・・・あぁ!・・・あああああァァァァ!!うぐがァ!」

  重力は増し、入り込んだウイルスは細胞を破壊していく。黒い斑点が次第に浮かび上がってくる。

「アァァァ!・・・やって・・・ヤル・・・!!!」

  イケメンは悲鳴をあげる体を無理矢理持ち上げる。もう何倍にもなった重力に苦しみながらも、結界から自分の体を離していく。
  その体は所々に黒い線と浮き上がり脈打つ血管が赤く見える。

「・・・っ?」

  まるでそれでは

「あァ?黒田の眷属かァ?」

  そう、絶望竜、メイド少女と同じく黒田の眷属である証拠。
  イケメンは顔を覆っていたフードをはずす。

「・・・楓様・・・!行きます・・・!」

「・・・お前翡翠だったのか・・・?」

  気づくのが遅いと思った。

「・・・お久しぶりです」
「おぉ・・・。イケメンだとは思ってたがまさか翡翠だったとは・・・。『再生』。これは疫病なんつう力で片付けていい相手じゃなかったな・・・!」
「・・・闇の扉」

  翡翠さんははやく戦いたいらしい。
  ステージ上に吹き飛ばされた聖騎士よりは幾分かマシであろうと思われる骸骨たちが現れる。ひゅーすげー。

「・・・勝負はここからです」

  弱そうだから初めに消しとこうと思ったが、これはこれは・・・。
  ようやく四人で戦えるわけか。ちなみにだが、この4人は覇王、木下ちゃん、翡翠、俺であってプリティちゃんではない。
  プリティちゃん、プリティ2号、翡翠のおつき騎士は既に

「私の支配下ですから」

  ・・・セリフ取られた。
  プリティちゃん達は木下ちゃんの意思で戦う人形になっている。いつなったのかは俺でもわからない。木下ちゃんが操るってことは、さきのプリティちゃんよりも数倍強いと考えておいた方がいい。それほど木下ちゃんはバカげている。

「・・・こい・・・」
「おもしれェ!やってやるぜェ!」
「私の『丘men』に勝てるとお思いで?」
「・・・丘menは可愛そうだと思う・・・」

  丘menって・・・

  初めに動いたのは覇王。
  翡翠の顎に向けて下から蹴りをはなつが、翡翠はそれを最小の動きで躱し、硬化魔法と噴射魔法を使って覇王に殴り掛かる。そこに割って入ったのが丘menのプリティちゃん。覇王に殴り掛かる翡翠に足払いをかけようとするが、そこに俺が転移で移動してきたことにより、プリティちゃんは下がった。中断されなくなった翡翠の右ストレートは超速で起き上がった覇王に受け止められ、覇王が翡翠をその場から逆方向に投げ飛ばす。

  翡翠がすぐに立ち上がって魔法を発動させる。
  地震と敵を追尾する雷の魔法を同時発動。地面に立ちにくく、跳んだとしても雷の餌食になる。
  だが、

「俺たちにそんなもんはきかねェ!」
「と、思うじゃん?」

  覇王がその場から移動しようとするので、重力操作と守護結界を使ってその場に固定させ、俺の雷ごとくらってもらう。

「ぐぅ!」
「ははっ!制限をかけた体に魔法は痛いだろ!」
「この痛みこそ勝負を引き立ててるんだろォがよ!」

  覇王が立ち上がると、俺の体は後方に吹き飛ばされる。
  仕返しとばかりに腹パンをかまされたのだ。やべぇ、まじいてぇ。

「だが、魔法つかいと楓は邪魔だな!」

  俺と翡翠が負けたらもうお前と木下ちゃんの勝ちだから邪魔も何もねぇだろ・・・。

  翡翠は会話中なのに容赦なく神の息なる極太レーザー(ホーミングあり)を放ってくる。なにそれ怖い。

「させません!魔法キャンセル!」

  発動後の極太魔法をその場で打ち消す木下ちゃん。なにそれ強すぎ。

「・・・ちっ!」

  魔法使う人の天敵に認定されそうですね。

「覇王!魔法使いをやってください!楓ひとりならば二人でかかればなんとかなります!」
「了解した!その間楓を抑えられるなァ!?」
「勝ちたいのでやりますよ!見てますかァ!義樹様ぁ!」

  まずいな・・・。
  木下ちゃんが暴走状態に近い。負ける可能性あり。

  覇王と一対一で勝てるやつなんて滅多いない。いくら力を抑えているからと言っても、魔法使いでは相手にならない。

「沈めよ・・・」

  追い回す覇王。逃げまくる翡翠。

  俺も翡翠を助けに行くが、プリティちゃんとプリティちゃん2号が俺の道を阻んでいく。この筋肉野郎が!丘menの癖に生意気な!やめろください!その筋肉を近付けないでぇ!

  翡翠はやがて追いつかれ、首トンで意識を闇に落とした。

「翡翠さぁぁぁん!」

  いやぁ!いかないで!このままじゃこの二人をたった一人で相手しなくちゃならないですかァ!あー無理無理。化物の最強格2体を相手に戦うとかマジ無理。帰らせてくださいお願いします。

「残念ですね楓さん。あなたの敵は、ここにいる全員ですよ」

  立ち上がる吉岡、立ち上がる翡翠、立ち塞がる二つの筋肉、ついでに騎士。

  ・・・これはさすがの俺もやばくね?翡翠と吉岡は俺のお人好し上の理由で攻撃できねえし、筋肉2人は俺の衛生上触れたくないし・・・!騎士?あぁ、ぶっ飛ばします。

「あなたって何気に酷いですよね」

  お心を読むのやめちくり。

「さて、それじゃぁいきますよ」
「覚悟しな、楓ェ」

  くんな。

  俺の悲痛な心の叫びは2人には届かない。木下ちゃんには届いてるはずなのに、無視を決め込んでいる。
  覇王と筋肉が俺に襲いかかる。・・・なにこの地獄絵図。俺の見ている世界を誰かが共有しているなら、分かってくれるだろうこの吐き気。

「ぶっ潰れなッ!」

  死を体現したような覇王の拳が迫る。今の覇王なら俺でもひとりで対処できるが・・・問題は丘menだな。覇王を相手しながら丘men2体、それも木下ちゃんが肉体を支配している状態のやつらを気にしなければならない。
  ・・・無理じゃね?
  覇王の拳を守護の力でよそに逸らす。
  覇王を倒すのはあとだ。なんとかして丘menを触れずして場外に飛ばしたい。無意識下ってなら転移がきくか?いや、それも触れてたわ。オワタ。

  そんなことを考えてると、翡翠の得意技であろう神の息が放たれる。

  分解を使えば消せるが、どれだけかかるかが問題だな。消滅を使うか?だがもう一回使ってるしな・・・。
  守護で止めると視界が塞がれる。んー、詰んでね?

「終わりだ」

  なす術なく、俺はダブルプリティちゃんと覇王と吉岡の筋肉野郎共、極太魔法あと騎士に迫られたのを最後に俺の意識は途絶えた。

ーー黒田楓、敗北ッッ!

  ・・・化物が取り憑いたプリティ筋肉には勝てなかったよ・・・





ーーーーーーーー
はたつばです。

木下ちゃんと覇王の初戦闘シーンですかね。木下ちゃん強いでしょう?ちっちゃ可愛いは正義ですよね(←はたつばの中の木下ちゃんイメージ)。
ええよぉ、ええよぉ・・・

次回更新は8月5日土曜日19時更新です。
もう八月になるのか・・・あー、もう無理ぃ。暑い・・・冷房早く治してください!
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