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第七章 勇者するより旅行だろ・・・?
第百十五話 おじさん
しおりを挟む復旧作業は続いている。家族も家も失った者達も周りにいた同じ境遇の者に励まされ、泣きながら復旧作業を行っていた。
俺と分かれてから明日香と奏汰は常世神が呼び出した虫どもを殲滅し、その後はこの復旧作業を手伝っていたようだ。奏汰は軽々と瓦礫の山を運び終え、明日香は作り出したお掃除ロボットとお手伝いロボットと共に各地を回っていた。
そして、俺はと言うと・・・
「違うよ楓っ!ここはもっとっ!こうっ・・・!そうそうそれそれ!」
「ここはもっと禍々しさというか、鬼っぽい様相を目指そうよ。角とかつけてさ!」
二人の幼馴染みに言われるがまま家を創っていた。
マーリンたちとの話が終わったあと、俺は奏汰、明日香と合流した。奏汰と明日香はこの国の復興をするにあたって、家を無くした人たちのためになにかをしたいと考えてたそうだ。奏汰は脳筋すぎて使えないし、明日香もここまで多いと骨が折れるとかで、困りあぐねてたのだが・・・そこに俺が来てしまったらしい。
その近くにいた住民や明日香、奏汰の意見を聞きながら家を創造していく。恩恵を使うのは久しぶりなので、ちょっと緊張していたが、思いのほかうまくいき、満足できる家を創り出せた。
だがしかしっ!多いよ!多いよ。多すぎるよ。
次々と現れる新築希望者。俺はウンザリしているのだが、奏汰と明日香は非常に楽しそうだ。今では人が多すぎて整理券を配り、その順番通りに家を建てている状態だ。
「ありがとうございます!冒険者様・・・!」
「お、おぉ!こんな立派な家をタダで・・・!」
「そんなバカーナ・・・」
感謝されるのは嫌いじゃないので、嬉しいのだが・・・『あまり干渉しない』と決意してからすぐに家を建てている自分が少し情けない。俺はとことん幼馴染みに弱い。
しかしこのままでは、建築士たちの仕事が無くなってしまうな・・・。どうしたものか。
あぁそうだ。建築に必要な工具やらなんやらを贈呈することにしよう。それで俺たちがカバーしきれなかった家を建ててもらうことにしよう。報酬はマーリンに請求してもらえばいいや。
この復旧作業が終われば、いよいよ冒険者だっ!
「ねぇ楓ー!こっちはもっと可愛いやつにしてね~」
「そうだね、今度は乙女チックにしようか~」
おっと、次の依頼だっ!
◇◆◇◆
お、終わった・・・!やっと・・・やっと終わった・・・!
長かったぞ、おい。まじで。ここまで長いとは思わなんだ。後半の方は魂抜けかけてたわ。十何軒を同時に建ててたことだけはなんとなく記憶にある。
「疲れたね~今日はもう宿で休もうか・・・」
「賛成よ・・・動きすぎたわ・・・というか、はしゃぎすぎたわ」
楽しそうだったもんな、お前ら。
設計とか熱心に考える姿にはおじさん感動しちゃったよ。
復旧作業中に俺が創り直した宿の女将に「サービスするからねっ!必ず来るんだよっ!」って言われたので、その宿に向かう。確か名前は『安らぎの悪魔亭』。地獄の入口だろうか・・・そんなことを考えてしまうが、女将も料理長の旦那も人柄がよかった。名前はちょっとあれだが、悪くないは無いはずだ。
「おや、本当に来てくれたんだね!?疲れたろ、ゆっくりと休んできな!夕飯の時間になったら呼んであげるから!」
一言二言感謝を述べてこの宿で最もいい部屋に入れてもらった。
成金が来るような金ピカ宿ではなく、冒険者や旅人が心を休めるために来るような安らぎを主に置いた宿だ。
なかなかに大きな部屋。窓から見える外の風景もよい。
高さ大きさが自由な俺の創造によって生まれ変わった宿は四階建ての巨大な施設。生まれ変わったこの宿のために今度新しい従業員を雇うとか。明日香が立候補していたので、また俺と奏汰は振り回されることとなりそうだ。
「あ~疲れた・・・」
「僕も・・・」
部屋に入ってすぐにベッドにそれぞれバタンキュー。俺の創り出したふかふかベッドに身を沈ませてから一分で明日香は静かな寝息を立てた。
よほど疲れていたのか、すぐに眠ってしまったよ。
それを確認した奏汰がむくりと音もなくベッドから上半身を持ち上げた。
ど、どうした?
「楓様、お一つ、お願いがおあり申す」
日本語が暴走してるぞ。
「暫くの間、明日香を起こさないように出来ますでしょうか」
・・・・・・。
「・・・い、今のうちに明日香に触れておこうかな・・・って・・・」
性欲が暴走してんじゃねぇか。
もっと抑えろ。いつもの優しい、かつ爽やかな青年はどこに行った。
「・・・ほどほどにしておけよ?」
「は、ははぁ・・・!」
一度土下座をしてから静かに眠る明日香のベッドに忍び寄る鬼。その顔はゲスさが際立っている。そろりそろりと近付き、明日香の寝ているすぐ近くにそっと腰を下ろす。
今日の明日香は異世界らしさ、ということで白のテールスカートを履いている。横になっているからか、少しそのスカートが乱れて、色白で綺麗な太ももが晒されている。そこに、緊張した面持ちの奏汰が震える手をもう片方の手で支えながら触れる。
だらしなく頬が緩む奏汰。だが、その手は未だに震えている。
少しづつその触れた手を明日香の上部に滑らせていく。触り方が超絶的な変態ですが・・・イケメンがやると・・・あ、いや、やっぱり気持ち悪いわ。
「・・・・・・明日香・・・」
相変わらずだな、奏汰は。
「・・・これ以上はやめておこう。・・・ありがとう、楓」
震える手を太ももから離し、スッと自分のベッドに戻る奏汰。
「いいのか?それだけで」
意地悪な質問だが、明日香に手を出すのが奏汰ならば俺はまだ納得できる。他の人間には絶対に触れさせないが、奏汰ならば許せる。
「・・・うん。これ以上は同意の元で、意識のあるうちに・・・ね」
明日香を目覚めない状態から解放する。だからといってすぐに目覚める訳では無いため、しばらくは放置。
奏汰も疲れた体を癒すために休眠をとる。
寝る必要も無い俺は情報収集を始める。強欲を使ってこの世界の現状を調べるとしよう。
ラドレア、亜人の大陸には今、あまり強い者がいない。神谷瞬と第三位の魔王、ナタリアちゃんとゴブマルくん。目立っているのはこの程度だ。白炎を使う石田怜はこの世界から消失した。亜人の士気が下がっているのは間違いないだろう。龍神も元気がない様子。
マリアス、魔族の大陸は力を蓄えている最中だな。他の大陸にちょっかいを出すこともあるが、侵略、破壊を目的にしているわけでは無さそうだな。二人の勇者が魔族の大陸で第二位の魔王と共にいるようだ。元勇者の魔王がここ数年顔を見せていない。ほかの大陸はそれが逆に不吉だと思っているようだ。
アルア、人間の大陸では勇者の召喚ラッシュを終え、勇者の育成期間に入ってる様子。伊野光輝や田宮勇次、八島雄一をはじめとした上位の勇者が各地を回って魔物を討伐し、現状を保っている。そして、ネメシスが落ちたことは人間の間で大きな不安や恐怖を呼び込んだ。だが、情報としてはネメシス王国は復活している。建物も、人間も。これは化物の介入がありそうだ。そのネメシスが戦力を集めているという情報も。
深淵隊、俺の眷属たちが纏めている集団。なんでも、俺を探しているとのこと。冬馬と武蔵の部下が外に出向いて俺を広い範囲で捜索中らしい。その中で、俺が守っていたものをあいつらが維持しようと頑張っているみたいだ。愛い奴らめ。
四つ股の巨人、悪魔と神に手を出したようだ。つい最近見に行った時にいた男と女は未だに生きている様子。悪魔と神の遣いが混じってるが、あの二人ならば生き残れるだろう。
神と悪魔が介入してるのはここと人間の国だげだな。
七つ目の巨竜、こいつらは邪神もとい古の神々の一人である女を現世に呼び出したいらしい。不可能に近いが、策はあるようだ。戦力だが、これがまた凄い。こいつらは神獣の模造品を生み出しているのだ。俺がゴミ箱に行く前、アルバートが神話生物のコピーがいると言っていた。おそらく、それもこいつらが作ったものと見て間違いない。十年経って制御もできるようになったみたいだし、これから先、かなり積極的になる可能性がある。
最後が名称不明の組織。なんというか・・・化物が揃い踏みしてんだよな。俺たちのような化物ではないのだが・・・全員少なくとも原典で『怪物』と呼ばれるだけの資格がありそうだ。この連中は面白そうだぞ。なんてったって、そこにはマリーと会長、アルバートまでいるんだからな。
マリーのことだ、俺の存在には気付いているだろう。それでも来ないというのは何か考えがあるのだろう。楽しみだ。
あとは究極能力だな。
世界の格が上がったことにより、この世界に住む上位者に更なる力が追加された。原典の魔術や恩恵、才能を遥かに凌駕する力もあるようだ。究極能力を持つ者が戦うところも見てみたい。とても面白そうだ。
おそらくこの世界を荒らすであろう颯馬さんについても調べておこう。颯馬さん自体はまだこの世界に来ていないみたいだ。しかし、その仲間達が次々に上陸している。マーリンとマリアが警戒してる中で余裕綽々と侵入してくる颯馬さんの愉快な仲間たちが恐ろしい。・・・既にとんでもないことをやらかしている人もいる。とある神の信者さんが大量の人間を蘇らせている。それも、完璧な形で。やめていただきたいね。今度厳重注意を伝えに行こう。颯馬さん本人にも言っておこう。ダメだよって。世界のバランス壊さないでって。
そこまで調べ終わると、この部屋にノック音が響いた。
「夕飯の時間だよ~!出ておいでー!」
「ありがとう!すぐに向かう!」
とりあえず返事をして、俺は椅子から重い腰を上げる。
寝ている二人には魔手を使って頬をペシペシする。
「うう・・・ん・・・」
「ふぁぁぁ・・・ぁぁ・・・」
眠そうで瞼の開いていない両目をゴシゴシしながらフラフラとベッドから立ち上がる二人。足元がおぼつかない様子。空間に干渉する不思議な力で二人の体を支えながら部屋から出て食堂へと向かう。
その道中でも頬をペチペチ、プニプニし続けてようやく二人は少しづつ覚醒し始めた。
「ご飯~お腹減った~」
「僕も・・・」
ガキか。
小学生を相手しているようだ。寝て食って遊ぶ。こいつらはもう既に数百年は生きているはずなんですがね。どうなっているんでしょうか。精神年齢進んでないってことでオーケー?
食堂の空いているテーブル席に座り、無言で料理を待つ。周りが騒がしいので、普通に会話する声では相手に届かないのだ。冒険者だろうか。騒がしい。
「うるせぇぞクソザコ共っ!」
どこからか力強く、低い声が響く。それまでの冒険者たちの喧騒は聞く必要もなかったのでシャットダウンしていたのだが・・・
「なんだおっさん?俺たちに文句あんのか?アァンっ!」
テンプレっぽくて面白そうじゃねぇか。
明日香と奏汰も完全に意識を取り戻し、興味をそちらに向けている。この二人も面白そうな厄介事ならばとてもウェルカムだからな。しばらく見守っていようか。
俺たち三人の威圧感や覇気を一時的に消し去り、誰も俺たちを気にかけないようにする。殺気でも向かっちまったらつまらん。怯えられでもしたら興醒めどころではない。
大きな剣を背負ったおじさんが酒を飲みまくって騒ぐ若い世紀末兄ちゃんに近付いていく。おじさんの後ろにはピッタリと幼い少女が引っ付いている。アルディウスが見たら発狂しそうなくらい綺麗な顔立ちをしている。そんな麗しい幼女を庇うように立つおっさんが背負う剣は・・・バスターソードだろうか・・・扱いの難しい剣なんだが、相当腕か立つようだな。
「うちのガキがお前らの声に怯えてんだよ」
怒気を含めた声で威圧するが、世紀末マンは物怖じせず、胸を張って近付いていく。まるで実力差に気がついていないようだ。
だがその前におかしいところがあった。
この男「ガキ」と言ったな?それは娘ということか?それとも拾い子か?それとも奴隷か?ことと次第によってはこの世界の遺伝子情報を見直さねばなるまいて。人間の身にして遺伝子情報をいじるだなんて、この世界の格ではまだまだはやいぞ。
「おいお前ら、ちっと痛めつけてやれ。ガキは傷つけんなよ」
世紀末マンが後ろの鶏ヘッドと他数名に命令すると、ゲスい顔をした男達が武器を抜いて男を囲むようにして立った。
「楓・・・」
明日香さん、分かってますよ。
幼女には結界を施しておく。おじさんはまぁ心配することもあるまい。この世界にしてはなかなかやるみたいだしな。
まずは出っ歯の例えようのない変な顔をした男が男に襲いかかるが、一瞬で武器を粉々に砕かれ、顔面に右ストレートをくらう。一発ノックダウン。バスターソードを使わなかったのは殺す気がない、という気持ちの表れだろうか。
次に襲いかかってきた海賊風の格好をして、湾曲した刀、シミターをくるくると振り回す危ない男。「ヒャッハーっ!」という掛け声とともにおじさんに向けてシミターを振りかざすが、身体強化が施されたおじさんの拳によって粉砕され、ビンタをくらって白目をむく。
最後に襲ってきたのは鉈を持ったデブだ。こいつは体が重いのか、初動が遅い。おじさんが先に動き、腹パン一発で沈めた。
うーん、弱い。
この世界の上位者と下位者のレベルには差がありすぎではなかろうか・・・。
三人を気絶させたおじさんは自分の席に戻り、幼女とともにご飯の続きを食べ始めた。周りの喧騒は未だ止まないが、おじさんには関係がないらしい。
あ、世紀末マンは既に逃げ出しましたよ?速かったです。デブが沈む前に逃げてました。
「あのおじさん強いね」
「・・・そうね」
またどこかで会う気がする。
いや、冒険者を向こうがやっていれば自然と俺達と会う機会もあるだろう。普通の冒険者を装って一度近づいてみてもいいかもな。
しばらくたった後、ようやく客の声がおさまったと思うと、その次は沈黙が場を支配していた。
――――――――
はたつばです。
二度目の冒険者編スタート・・・!
幼女を庇うおっさんってカッコイイですよね。ダンディズム・・・
この三人で冒険者しつつ、裏で戦争を進めていきたいと思います。
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