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運命

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3日後、湊人は学校に行った。
「蓮、おはよう」
「湊人! お前休みすぎ」
「オレも早く学校来たかったんだけど、母さんが『検査結果が出るまで大人しくしていなさい』って、家から出してくれないから」
「俺が湊人の家を訪ねても、『まだ体調悪いから、ごめんね』って追い返され続けたのはそのせいか…。マジで、脳に後遺症出たんじゃないかって心配してたんだぞ」
「…ごめん」
「結果は?」
「問題なかったよ」
「そっか」
蓮はホッとしたように微笑って、湊人の頭を撫でた。
「オレの母さん過保護すぎて…大丈夫だから学校行きたいって言っても、『お願いだから、結果出るまでは家にいてよ』って泣かれちゃったから、大人しくしてた。おかげで暇でさ、6年生の復習してたよ」
「へ~、偉いじゃん。もうすぐ中学生だしな?」

湊人と蓮が話をしていると、「湊人くん」とかわいい声がした。
そこにいたのは、前髪を短く切り揃えて、ショートカットにした。縁どりがピンクのお洒落なメガネをかけた女の子だった。
「もしかして、山田さん?」
「うん」
「ずいぶん、切ったね?」
「メガネも替えたの。その…似合うかな?」
「うん。とってもかわいいよ」
「…ありがとう」
姫乃は、恥ずかしそうに頬を染め、耳にかかった髪を掬う。そして嬉しそうに微笑んだ。
「山田さん。なんか変わったね? 外見だけじゃなくて、性格も…?」
「…髪を切って、私、なんだか自分に自信が持てたんだ。だからかな? 
湊人くんのおかげだよ。私の事かわいいって言ってくれたから…。初めてだったんだ。誰かにかわいいって言われたの…」
「そっか」
「うん。湊人くん、ありがとう…」
姫乃は、友達に呼ばれ、去っていった。
湊人は、前世でこうなりたかった理想の自分を見ているようで、胸が熱くなった。
「良かった。山田さん、友達も出来たんだ」
「ああ…もう心配いらない…湊人?」
「え?」
蓮は湊人の目元に指を這わせる。
「なんで泣いてるんだ?」
湊人は涙を流していた。
「あれ、なんでだろう?」
湊人は目をこする。
「…嬉しいのかな? いや、切ないのかも…」
「切ない?」
(自分も、あんな風に愛されたかった。悲しい選択をする前に…)
「誰かに愛されたかった…」
「湊人…?」
湊人はハッとした。声に出していたようだ。
前世で自殺した事を話しても信じる人はいないだろう。
「あ、いや…その…」
湊人は涙を拭きながら苦笑いを浮かべた。
蓮は湊人を抱きしめた。
「蓮?」
「誰かに愛されたかった? 俺がいるだろ?
俺が湊人をずっと愛してやる」
「…蓮…」
湊人はまた涙が溢れた。
「湊人…」
蓮は、湊人の涙を指で拭ってやり、口づけをした。
「ねえ、蓮、ここ学校。見られちゃうよ?」
「見られてもいい」
「そんなの、恥ずかしい」
「お前はモテるからな。さっきの山田見たろ? あれ、絶対お前に惚れてる」
「そんなのわかんな…んっ…」
蓮は湊人の唇を味わうように、角度を変えながら何度もしてきた。
「ハアッ…蓮、しつこい」
「お前は俺のものだって、みんなにちゃんと見せてやる。そしたら、お前に告白してくる女子もいなくなるだろう?」
「蓮…オレが他の誰かを好きになるかもって思ってる? オレは蓮以外好きにならないよ? オレは蓮の事を運命の相手だって思ってるんだから」
「へ?」
湊人は、前世からのつながりを持つという意味で運命と言ったのだが、蓮は別の意味だと捉えたようだ。
「そ…そっか…運命…か」
蓮は顔を赤らめ、嬉しそうに、何かぶつぶつ言っている。結婚…とか、移住とか…。
湊人には意味がわからなかったが、蓮が嬉しそうだと喜んだ。
 
放課後、担任に2人一緒に呼び出され、小学生にしては濃厚なキスを目撃され、他の児童に悪影響だ。そういう事は学校でしないようにと注意されてしまったのだった。
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