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悪魔との契約とは

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「ここでちょっとした会議とかするんです」

紫苑は、プロジェクターのスクリーンに向かって念を送った。

スクリーンに映し出されたのは、美奈子が自殺する所から、悪魔ツァラオヘルが美奈子に契約を迫り、美奈子が願いを言ってその直後美奈子が地面に叩きつけられ、ツァラオヘルが消え去る一部始終であった。

「…っ」

俺はあまりの光景に口元を押さえた。もし肉体を持っていたら、きっと嘔吐していたであろう。

「木蓮様…」

紫苑は、俯いて黙ってしまった俺を心配したのか、そっと背中をさすった。

「…すみません。木蓮様に見せるにはあまりに酷でしたね」

「…いや、あいつの最期がわかってよかったよ。少なくとも、ツァラオヘルのおかげで、絶望に支配されたまま死んだわけじゃなかったんだって…」

「はい…」

「あなたたち、何を言っているのです? まるでツァラオヘルが救世主のような言い方をして…。ヤツのせいでどれだけの魂が悪魔界へ行ったと思ってるんですか?」

アーシャルが声を荒げた。

「すみません。そういうつもりはないのですが…」

紫苑が謝った。俺は気になった事を聞いてみる。

「一つわからないことがある。悪魔というのはこちらから契約を迫るのが普通なのか?」

「いいえ。本来は人間が悪魔を呼び出し、契約を迫るのです。悪魔を呼び出す人間は、自分の魂を売ってでも、今世の成功、名誉を欲するのです。来世のことなど考えていないのです。悪魔と契約するとはどういうことか、わかっている人たちなのです。
ツァラオヘルは、悪魔と契約するのがどういう事になるのか、わからない人に声をかけるのですから、悪質と言えます」

エシェルが説明した。

「それで、ツァラオヘルは美奈子を本当に逆行転生させたのか? そのまま魂を悪魔界へ連れて行ったりはしないのか?」

「悪魔は、契約者との約束は必ず守ります。
そこは人間とは違い律儀なのです。
約束を守らないとなれば、悪魔界の掟に背くことになり、厳しい罰を受けます。掟には、こちらから契約を迫ってはいけないとは書いてませんからね。ツァラオヘルも、掟は守りますよ」
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