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少年は桃太郎と対峙する18(過去編①)
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「小太郎…」
「…ぐ…ゴホッ…」
うつ伏せのままの小太郎は、ヒューヒューと細い息を繰り返す。
「死んじゃう…の? 小太郎も…。みんな…も…いなくなった…。オイラ…一人ぼっち…」
小太郎の息が弱くなる。朱丸は涙を流して、小太郎の体に縋り付いて泣いた。
「イヤだ! 小太郎死なないで! オイラを一人にしないでよ!」
「朱丸…ご…めん…な…」
小太郎はゴホッと血を吐いた。朱丸の耳に届いていたはずの鼓動が、音を止めた。
「あ…ああ…」
朱丸は絶望の声を出した。
「そうだ…」
朱丸は、祖父に渡された黒い石を取り出した。
「大丈夫だよ小太郎。オイラも一緒に極楽浄土に行く。本来なら、人間と鬼は死んだ後、一緒の場所には行けないんだって。でもね、この秘術があれば、一緒に逝けるから…」
朱丸は、自分の手を切ると流れる血を石に浴びせ、それを握った手を小太郎の体に置いた。
「お願い…小太郎とずっと一緒にいたい」
朱丸は、手に額をつけて願った。
「でも、本当は、生き返ってほしい。あの世じゃなくて、小太郎とこの世界で生きていきたいんだ」
手の中でピシリと音が鳴った。手を開いてみると、黒い石は粉々に割れた。
「え?」
その中に、透明の石があった。小さくて丸い綺麗な光。飴玉のサイズのそれを、朱丸は持ち上げ、日の光にかざした。
「キレイ」
するりと手が滑り、石が落ちる。
「あ…」
石は朱丸の口に落ち、反射的に飲み込んでしまった。
「飲んじゃった。…う?」
胸が熱くなって、手を当てた。
朱丸の脳裏に、一つの映像が浮かんできた。
ー男の鬼が泣いている。傍らには、人間の女性が眠っていた。いや、眠っているのではなく、死んでいるのだ。
鬼は泣き続けた。そうして、涙は透明の石を作った。
「彼女を生き返らせたい。ずっと一緒に生きていきたい」
鬼の願いを神は聞いた。
女性は年老いていた。寿命による死は、これ以上伸ばせない。
鬼は、ならば魂は一緒に極楽にと。自らの胸に刀を刺し、血を流す。
透明な石に浴びせた血。鬼の肉体は崩れ落ち、魂は人間の亡骸の中へ。二つの魂は天に昇る。透明な石を守るように、ついた血は固まり、黒く石のようになったー
朱丸は、見えた映像に涙を流す。
本当は一緒に生きていきたかったんだ。
その鬼の気持ちがわかる。
自分も、一緒に小太郎と生きていきたい。
―それなら、その願い叶えてあげるー
胸の中から声がする。果たしてそれは神さまなのか。それとも、石に残った、鬼の思念なのか。
朱丸の胸はもっと熱くなった。
「う…あ…」
小太郎の体に縋り付き、熱をやり過ごす。
そのうち、ひどく眠くなって、朱丸は目を瞑った。
「…ぐ…ゴホッ…」
うつ伏せのままの小太郎は、ヒューヒューと細い息を繰り返す。
「死んじゃう…の? 小太郎も…。みんな…も…いなくなった…。オイラ…一人ぼっち…」
小太郎の息が弱くなる。朱丸は涙を流して、小太郎の体に縋り付いて泣いた。
「イヤだ! 小太郎死なないで! オイラを一人にしないでよ!」
「朱丸…ご…めん…な…」
小太郎はゴホッと血を吐いた。朱丸の耳に届いていたはずの鼓動が、音を止めた。
「あ…ああ…」
朱丸は絶望の声を出した。
「そうだ…」
朱丸は、祖父に渡された黒い石を取り出した。
「大丈夫だよ小太郎。オイラも一緒に極楽浄土に行く。本来なら、人間と鬼は死んだ後、一緒の場所には行けないんだって。でもね、この秘術があれば、一緒に逝けるから…」
朱丸は、自分の手を切ると流れる血を石に浴びせ、それを握った手を小太郎の体に置いた。
「お願い…小太郎とずっと一緒にいたい」
朱丸は、手に額をつけて願った。
「でも、本当は、生き返ってほしい。あの世じゃなくて、小太郎とこの世界で生きていきたいんだ」
手の中でピシリと音が鳴った。手を開いてみると、黒い石は粉々に割れた。
「え?」
その中に、透明の石があった。小さくて丸い綺麗な光。飴玉のサイズのそれを、朱丸は持ち上げ、日の光にかざした。
「キレイ」
するりと手が滑り、石が落ちる。
「あ…」
石は朱丸の口に落ち、反射的に飲み込んでしまった。
「飲んじゃった。…う?」
胸が熱くなって、手を当てた。
朱丸の脳裏に、一つの映像が浮かんできた。
ー男の鬼が泣いている。傍らには、人間の女性が眠っていた。いや、眠っているのではなく、死んでいるのだ。
鬼は泣き続けた。そうして、涙は透明の石を作った。
「彼女を生き返らせたい。ずっと一緒に生きていきたい」
鬼の願いを神は聞いた。
女性は年老いていた。寿命による死は、これ以上伸ばせない。
鬼は、ならば魂は一緒に極楽にと。自らの胸に刀を刺し、血を流す。
透明な石に浴びせた血。鬼の肉体は崩れ落ち、魂は人間の亡骸の中へ。二つの魂は天に昇る。透明な石を守るように、ついた血は固まり、黒く石のようになったー
朱丸は、見えた映像に涙を流す。
本当は一緒に生きていきたかったんだ。
その鬼の気持ちがわかる。
自分も、一緒に小太郎と生きていきたい。
―それなら、その願い叶えてあげるー
胸の中から声がする。果たしてそれは神さまなのか。それとも、石に残った、鬼の思念なのか。
朱丸の胸はもっと熱くなった。
「う…あ…」
小太郎の体に縋り付き、熱をやり過ごす。
そのうち、ひどく眠くなって、朱丸は目を瞑った。
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