健全純愛研究

ななみん

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second promise

二人の時間

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部屋にいって、3時間。

明け方の5時半。硬いダイニングテーブルに顔を突っ伏してうたた寝寝するあきとに毛布がかけられた。

「せんせい。せんせいは変わりませんね。私を見つけたときあんなに苦しそうな顔して。」

「苦しくはない。が君がまた辛い思いに会ったと思うと心がいたむ」

「あら、おきてたのか。コーヒー容れましょうか?」

「まだ大丈夫だ。ちさなも眠れてないんじゃないか」

「私は大丈夫です。お陰様で十分な休息がとれましたから。……でも、なんかすみません。」
「なんで謝る。」
「急に、その。色々と迷惑かけて。きっと三木先生にも」

あきとの定位置であるソファーで寝息を経てる三木に目をやった。

「私はともかく三木については気にするな。むしろ私の私生活を暴けてラッキーとでも思ってるだろう。」

「私こそ、あの時は本当に悪かった。君を大きく傷つけてしまった。それでも君は私を頼ってくれるんだな」

そういって、すこし小さくなった鳴海あきとの頭にポンと手がのる。
彼女は隣のイスで体育座りをした状態で。

「私もずっと気にしてたんですよ。でも、せんせいはあの気難しい小説家鳴海あきとでしょう。私がその気難しさには振り回されるのはきっとあの契約を交わした代償かなって。なので今は大きく気にしてはいないですよ」

彼女があきとの猫っ毛をすくっては流し、遊ぶように撫でていく。

普段ならきっと注意してやめさせただろうが、今はこの心地良い時間をもう少し味わいたいとおもった。

長く離れた時間を埋めるように。

「それに先生は書かずにはいられないんです。私のことを。せんせいはきっと私とすずさんに呪われてるんです。だからあんなにも拒絶したのにまたそうやって書いてる」

そうってはっきりと言葉を選ぶ彼女にここ1年の成長を感じた。
まったく呪いときたか。女性の業とは深いものだ。

「私はちなさに甘えっぱなしだな。」
「ほんとですよ!せいせいもすこしは大人になってください」 

それは心からの本心に聞こえた。
本当に彼女の強さと優しさにふれるとつくづく自分のダメさに気づく。
それに甘えて何度か彼女を傷つけた。

同じことは繰り返さない。

「三木からちさなの事を聞くようになってから、君が私の心の中で見え隠れするようになったんだ」

「気がついたら、まるで私の中の君が出たいと出たいとうるさくて。」

まだ半分まどろみの中にいるだろ。自分が何を言っているのかわからない。ただ思った事を口にした。

「でもやっぱりずっと、辛いですか。」
「ああ、だけど、創作活動は8割辛いものなんだ。でも書かなくても辛いから今こうやっている。」

(どっちに転んでも救われない。書いても書かなくても、しんどいものはしんどい)

「ちさなこそ、大丈夫、なのか?」

彼女は昨晩再び、闇のなかにいた。本当にどうしようもなくて自分の事を呼んだにちがいない。

「ああ、また親に新しい彼氏ができて。別にそれはどうでもいいんですけど、なんか怒って携帯割られちゃった上に外に閉め出されちゃって」

彼女はもう心の整理はついたかのように淡々と話す。

「で、お金もとられちゃって適当こと言ってバイト先の事務所に泊めて貰おうとしたらまたまた、先生に会っちゃいました。」

あきとは自分のなかに熱い熱のようなものが芽生えてくるのを自覚する。

自分にはどうしようもないことなのか。
そんなあきとのことを察したのか。
「でもあと、半年くらいの我慢なので。」

「ああ、就職するんだっけ」

「はい、それも地方の会社に。そしたらもう絶縁して、勝手に結婚して幸せな家庭を築いて、こんな思いもう思い出せなくなるくらい幸せになります」

それがきっと彼女の今の強さ、原動力に繋がっているんだろう。

昔の彼女だったらもうどうしようもなくてまた闇に飛び込んでいたかもしれない。

きっとこの強さは自分と過ごした時間で得た強さだ。
とうぬぼれもいいのだろうか。

「もう、始発動きはじめてるので一回帰りますね」
「大丈夫、なのか」
「まぁ一応家の鍵はもってるので」 
「なにかあったらまた連絡、、と言っても携帯ダメになったんだっけな」

「それは心配いらないぞあきと、二階堂は俺がちゃんと家に送り届けるから」

そう三木が発言したとたん二人はぎょっとこちらをみた。
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