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隠し部屋のシルフィーたち
太ることは死ぬこと、何かが永久に消えてしまうこと。
しおりを挟む職場の後輩ちゃんが入院することになった。
先週から休んでいて、通院中の病院から入院するよう言われたらしい。
その報告に出社して、上司にあいさつして、最後は私だけが見送った。
「先輩、私・・・・・・」
1階の受付で、それまで気丈に見えていた表情が崩れ、痩せてますます大きくなった目に涙が溜まる。
「入院なんか、したくないんです」
「それはわかるよ、でも」
「はい、先輩にわかってもらえてることは知ってます。だから、せめて、本音を言わせてください」
「うん、わかった。言ってごらん、なんでも」
涙をこらえながら、後輩ちゃんは細い首が折れるんじゃないかと思うほど大きくうなずいた。
そして、
「これまでずっと、死にたいと思ってた私が、痩せることで生きる目的を見つけたんです。痩せることが生きがいっていうか、生きる活力になって、なんとか踏ん張れてるんです」
「うんうん。そうだったよね」
「だから、私にとって、太ることは死ぬことで、その時点で何かが永久に消えてしまう気がして」
永久に消えてしまう、か。
でも、今のあなた、そのままでも消え入ってしまいそうだよ。
体重、22キロくらいって言ってたっけ。
いくら背が150センチちょっとしかないからって、少なすぎるんじゃない?
かといって、太ったほうがいい、とは言えない。
そのかわり、こらえきれずに泣き始めた彼女をそっと抱きしめた。
あー、細い。
それは見ていればわかることだけど、こんなに細いんだね。
私の手が片方の手の肘まで届き、それでも余ってしまうほど。
余らないように抱きしめたいけど、力を入れたら壊れてしまいそうで、怖い。
「ごめんね、これくらいのことしかしてあげられなくて」
私が言うと、
「そんな、謝らないでください。私がここまでやってこられたのは、先輩のおかげでもあるんですから」
今度は私が涙をこらえられなくなった。
「本当にありがとうございました。先輩と出会えただけでも、この会社に入ってよかったです」
「うん、私も出会えて幸せだよ。お見舞い、必ず行くからね」
玄関を出て、よろよろと歩き出し、ゆっくりと離れていく後ろ姿。
まだ近くにいるはずなのに、すごく遠ざかってしまったみたいに細く小さく感じられる。
早くお見舞いに行かないと、もう会えないのでは。
そんな思いがこみ上げ、すぐに追いかけて行きたくなった。
そして――。
できることなら、ずっと抱きしめていたい。
死神があの子を連れ去ってしまわないように。
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