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2章

第45話Side川野陽菜

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「さ!神楽先輩!続きを楽しみましょう♪」

~~!!!

絶対にやりすぎたっ!!

 先輩にはちゃんと普通の顔で言えた…はずです!今私が少し先に歩いているので、顔を見せる必要がないから今のうちに落ち着かないと…!!

 ちょっと!ほんのちょっとだけど先輩の小指に触れてた!それが嬉しい!一応…私の中での今日の目標は先輩と手を繋ぐことですから。

というかあれ、半分ぐらい告白なのでは!?

うぅ…、この後どんな顔をして先輩を見ればいいんだろう?

「陽菜ちゃん、速くない?」

「ひゃう!」

 いつの間にか隣に先輩が追いついていた。

どうしよう…!?どんどん鼓動がはやくなる…!

 どうして先輩は普通でいられるんですか!?

「それにしてもよく知ってたな~。指切りの話。これなら社会は信用して良さそうだな。」

ドキッ!!

 ここでさっきの話を持ち出しますか!もしかして先輩…、さっきの話をあまり理解してないのでは?

「た、たまたま社会の先生が授業中に話してくれたんですよ。それを覚えてたんです。」

「へぇ~。そうなのか…。でも気をつけた方がいいぞ。ああいう風に言われると勘違いする人も出てくるからな。そうなると色々と面倒だぞ。」

 ……マジですか…。やっぱり分かってなかったんですね。薄々気づいてはいましたがやっぱり先輩って鈍感ですよね…。

「もし……私が…。」

「ん?どうした?」

「…なんでもありません。」

 もし私がさっきの話を意図的に話したって言ったら…、先輩のことを好きだって言う意味だったら…、どれぐらい可能性はありますか?

 なんてことを聞きたかったけど…聞けなかった。だってもしもそれで否定されちゃったら…、とても悲しいから。初めて先輩と2人で出かけたのに悲しい思い出は作りたくないから。

「そうか。」

「聞かないんですか?」

「そりゃ聞きたい気持ちはあるけど、言いたくないんだったら聞かない。」

「へぇ~。珍しいですね、そんなこと言う人。」

 ほとんどの人は聞くと思うんですけど…。逆に聞かないという人を初めて見ました。

「まぁ、秘密にしたいことぐらいあるだろう。俺にも結構あるからな。」

「例えばどんなものですか?」

「それいったら秘密じゃ無くなるだろ。」

「それもそうですね~。」

 先輩の秘密と言われたらとてつもなく気になりますが先輩も聞かなかったので私も聞かないことにしましょう。

 ふぅ~。少し心が落ち着いて来ました……。先輩もさっきの話はあんまり気にしてなさそうですから私もそんなに気にする必要はなさそうですね。それにしても少しぐらいは気にしてくれてもいいと思うんですけど……。
 
「…神楽先輩って本当に国語が出来ないんですね……。」

「えっ?なんで突然ディスられてんの?」

そりゃ、ディスりたくもなりますよ…。私からしたら告白ぐらいの気持ちで行ったのに…。

「まぁ、苦手だけどさ。小学校の問題でさ?その時の人物の気持ちを答えろっていう問題があってな。人物の気持ちとか分かるわけないだろう?って思い始めてから苦手になった。」

「まぁ、わからなくもないです。数学みたいに答えが1つじゃないっていうのは苦手意識になりますよね。まぁ、そこが国語の面白いところだと思いますけど。」

「そこは同意するけど…。でもやっぱむずかしいんだよなぁ。」
 
 先輩って本当に人の気持ちを察するとかそういうのが本当に苦手そうですもんね~。でも人の気持ちをわかれないから先輩が理解できた気持ちには素直に答えようという所が素敵なんですよね。困っているって分かったらすぐに助ける…これがいい例です。

「先輩、ドラマとか見ないんですか?」

「ん…あぁ……まぁな……。あんまりテレビは好きじゃないんだよ………。」

 ?答えは予測してた通りですがどこか歯切れが悪いですね…。テレビにやましいことでもあるんでしょうか?……まぁ、さっきの話の手前聞きづらいので気のせいってことにしましょう。

「もう少しドラマでも見て乙女心というものを学んだ方がいいですよ!」

「乙女心?」

「そうです。例えば女の子はロマンティックなものが好きなんですよ!だから~、学んでおけばいつか役に立つかもしれませんよ♪」

「俺にそんな知識が必要になる日が来るとは思えないけどね~。」

「大丈夫ですよ!!」

「お、おぉ。」

「先輩には必ず!必要になる日がやって来ます!それは学校でも美少女で有名な私が保証します!だから勉強してください!!」

 あっ!急に大きな声出しすぎたかな?迷惑だったかな?そう思って先輩の方を見ると…、

「ふふっ。そうか。なら勉強しておくよ。」

 !?笑った!?先輩が笑った…。家庭教師始まってから結構たつけど先輩ってあんまり笑うイメージがないから、珍しい。愛想笑いは見ますけど。

 けれど、神楽先輩はすぐに口を抑えて笑うのを辞めてしまった。

「…先輩笑うんですね…。」

普段笑わないギャップ効果もあって凄まじい破壊力です。

「……そりゃ、生きてるからな……。」

「でも、滅多に笑わないですよね?」

「…ぐっ。まぁ、色々あるんだよ。さっきのは面白かったからだ。自分から美少女って普通言わねぇだろ。しかも自信満々で。」

「ムッ。でも、本当です~!告白だってされたことあるんですよ!……付き合ったことはありませんけど……。先輩は私の事どう思うんですか!?」

 自慢じゃないけど多分クラスでも1番か、2番目ぐらいには可愛いと思ってる。告白だってされたことはある!

「…まぁ、あの陽の妹だし可愛いとは思ってるけど…。」

 ピタッ!と私はその場で足を止めてしまった。

 今…可愛い…って、言った。私の事…可愛いって…。

「ん?どうした?」

 先輩が心配してくれるけど今はそれどころじゃない。

ヤバい。どうしよう…!?凄く嬉しい!!

「い、いえ!なんでもないです!ち、ちょっとトイレに行ってきてもいいですか?」

 嬉しいって言う感情を隠しながら近くにあるトイレを指さしながら先輩と話す。今はとりあえず先輩と離れたい…。上手く先輩の顔を見れない…。

「ん。了解。じゃあ、その間に飲み物でも買ってくるよ。何かリクエストはある?」

「暖かい飲み物ならなんでもOKです!」

「わかった。」

 先輩が自動販売機の方へ向かったのを見てから私はトイレ近くのベンチに座る。

 フゥ~。どうしよう…!?心臓が凄くドキドキしてる!こんなこと初めてだからどうしていいか分からない。見るまでもなくわかる。今とても顔が赤い!そして絶対にニヤけてる!

うぅ…!笑顔からの「可愛い」は反則ですよぉ!!

 先輩は今まで告白もされたことも無いって言ってたけど絶対にあれ、嘘でしょぉ!それとも本当にみんな気づいてないんですか??

と、とりあえず深呼吸…。先輩が戻ってくるまでまだ時間はあるはず…。

「あれ?陽菜?」

座ったまま深呼吸していたら急に話しかけられたので上をむくと…、

「瀬菜!藤崎くん!」

「やっほー。」

同じクラスのカップルが目の前にいた。
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