君を好きになるなんて絶対にありえない!

ジャック

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2章

第44話

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「そうですね♪あ!先輩!あっちに行きましょう!」

「ちょっ!走るな!それと引っ張るな!」

それにしても結構人が多いな。こんなに多かったら知り合いに出くわすことはなさそうだな……。

「危なっ!」

俺は全身でブレーキをして掴まれた腕を手繰り寄せてそのまま陽菜ちゃんを胸元に抱き寄せる。おかげで衝突や怪我をすることは無かった。

「っと!大丈夫か、陽菜ちゃん。」

「は、はひ…。」

?よくわからんが顔が赤くなってる。というか目の焦点あってるのか?

「急ぐ気持ちは分からんでもないが、イルミネーションはすぐに消えるわけじゃないし、閉園までまだまだ時間は余ってるしもうちょっとゆっくりしていこうぜ。」

「は、はひぃ。」

?なんだ。よく分からんが隣で歩く陽菜ちゃんはずっと下を向いている。俺の見間違えじゃなかったら顔も赤いように見えるぞ。

俺はあんまり人と関わることがなかったから人の気持ちを読み取る能力が欠けている自覚がある。だが、最近は少しずつ人と関わることが多くなってきたことでなんとなくだが気持ちを察せるようになってきた。

多分だが今の陽菜ちゃん心境はきっと……落ち込んでいるのだろう。先程のぶつかりそうになったことを反省しているとみた。

う~ん。かと言って励ますなんてことは俺には難しいんだが。

「ひ、陽菜ちゃん。周りすげぇ綺麗だぞ!見てみ!」   

「え、えぇ!そうですね!」

まだ緊張しているというか、硬いな…。

「そういえば社会や国語の勉強はしてる…よな?」

ギクッ!って擬音が聞こえてきそうなぐらいに動揺してるな…。全く別の話題を持ち出して気を紛らわそう作戦は上手くいったみたいだ。

「そ、それはですね~、ほら先輩とかなり勉強したあとってもうやる気が起こらないんですよ!それにそこまで勉強しても役に立つと思いませんし。」

まぁ確かに分からんでもないな…。こういう時は諭しても無駄なことはよく分かる。「将来のため~」と言われても全くピンと来ないのだ。俺自身がそうだった。

こういう時に有効なのは…。

「そうだな~。それじゃあこういうのはどうだ?その月の勉強を頑張っていたら俺がご褒美を用意しよう。ただしあんまりだった時はなしだ。」

秘技、アメとムチ!目の前に餌をぶら下げてやる気を出させるという作戦!結局のところ明確な目標や勉強をするわかりやすい理由さえあれば自然とやる気は出てくるものだ。

「おー!なるほど~!考えましたね!でもどうやって頑張ったって決めるんですか?」

「そうだな~。模試の結果や学校のテストの結果、参考書のテストの結果で俺が独断で決めることにするか。」

「了解です!…ちなみに今月はどうですか?」

陽菜ちゃんは少し不安そうな表情で聞いてくる。

「う~ん。今月は結構頑張ってたからご褒美をあげるよ。」

「やったー!ちなみにこれがご褒美とか言いませんよね?」

「もちろんイルミネーションとは別だ。そうだな…。陽菜ちゃん正月とか空いてる?」

「えっ?はい。一応空いてますけど…。もしかしてデートのお誘いですか!?」

「違うぞ。その日に陽達と一緒に初詣に行くんだが、陽菜ちゃんもどうだ?そこでご褒美を見せるってことで。」

ちなみにご褒美とはモデルである月夜姉ちゃんの事である。陽が陽菜ちゃんにtukiの正体を言ってないことと陽菜ちゃんがtukiを好きなことを利用したご褒美だ。陽菜ちゃんからしたらかなり嬉しいはず…。なんたって憧れのモデルと喋れるんだから。

しかし12月のご褒美にこんな豪華?なものをご褒美にしたら残りはどうしようか…。正直これ以上ってなかなか難しいぞ。

「分かりました!それじゃあお正月は空けておきますね?」

「そうしてくれたらありがたいな。」

多分成人式まではいると思うが、結構急に来て急にいなくなるのが姉ちゃんだからな。

「先輩先輩!もし…、私が第一志望の高校に受かったら…、3月のご褒美は私のお願いをひとつ聞いてくれませんか?」

「おう。もちろんいいぞ。高い物でも遠慮せず買ってやるよ。」

「やった…。先輩約束ですからね?忘れないでくださいよ!」

「俺は今まで約束を破ったことがないことだけが取り柄なんだよ。」

友達との約束は破ったことがない。マジで俺の取り柄はこれぐらいだと思う。まぁ、友達ほとんどいないから約束も両手で数えるぐらいしかしたことなんだけどな……。もしかすると片手でも数えれるか??

「ふふ。それ以外にも先輩の取り柄は沢山あると思いますけどねー。それじゃあ先輩指切りげんまんしましょう?」

「お、いいぜ。」

俺は右手の小指をフック状に曲げて差し出す。そこに陽菜ちゃんも小指を差し出し、お互いの小指を絡め合う。

「そういえばゆびきりの起源とかって先輩知ってます?」

「?いや知らないなぁ。約束を守るためじゃないのか?」

というかそれ知ってる人いるのか?なんか大正時代とかに大衆に約束を守る文化として広がったとかじゃないのか?

「当たらずとも遠からずってところですかね。江戸時代に遊女がお客さんに小指の第1関節を本当に切って渡したんですよ。」

「………いやなんでそんなことするんだよ。」

普通に怖くない??え?痛くないの??それ本当になんのためにしてんの?や〇ざ?しかもそれがどうやって約束を守ることに繋がんの?

「分かりませんか?」

「全く。」

繋ぎっぱなしの小指を見るが本当に分からない。なんの意味があるんだ?

「指切ると当たり前ですが結構痛いでしょ?」

「そうだろうな。」

実際に切ったことないから分からんけど。今後も切る予定はない!

「それほど愛してるってことなんですよ…。」

あぁ…。なるほど。少し納得がいった。夜遊びが多い江戸時代において痛みで不変の愛を伝えようとしていたのか。

「まぁ、実際には指を斬る遊女は少なかったみたいですけどね~。」

「そりゃそうだろう。」

「そこから約束を守るってことに繋がったみたいですね~。」

「へ~。それは知らなかった。」

こんなに細かいところまで知っているということは陽菜ちゃんが歴史をしっかりと勉強しているということなんだろうな。……多分。

「だから、指切りげんまんは好きな人とするべきなんですよ♪」

イルミネーションの光で見える陽菜ちゃんの顔はとても笑顔で綺麗だった。

「!…そりゃ江戸時代の話だろ……。今は違うだろ。というか高校生をからかうもんじゃないぞ。」

「とか言いつつ、赤くなってますよ?」

……マジか。俺今赤いのか?こんな話で動揺させられるとは情けない。というかあんな話された後なら勘違いする人もいるんじゃないか?

……陽菜ちゃんはかなり可愛いから中学生なんかコロッと落ちそうだな。大丈夫かな?北風みたいになんか将来問題に巻き込まれそうだわ。今度陽に相談しといた方がいいよな…。

「俺はただ寒いだけだ。そう言う陽菜ちゃんも赤くなってるぞ?」

「にゃっ!?わ、私も違いますっ!寒いだけです!!」

「お、おう。そうか。」

なんか結構激しく否定されたな……。ちょっとからかい返したつもりだったのに。もしかして…本当に寒いのか?なのに俺がからかったことで怒った…とか?

はぁ。北風といい本当に女心というのはよく分からんなぁ。

「「指切りげんまん~♪嘘ついたら♪ハリセンボン飲~ます♪」」

「先輩…」

「ん?」

お互いが絡まった小指を見ていたら歌の途中で陽菜ちゃんが話しかけて来た。と思ったら上目遣いのまま顔を俺の耳元の方に近づけてくる。

いや、本当に何すんの?

「約束…ですよ♪」

「!!?」   

「ふふっ。ゆーび切った♪」

そして絡み合っていた小指が離れる。というか俺はそれどころじゃない。さっきの陽菜ちゃんの声が耳から離れない。

あぁ…。冷えるな…。本当に…顔が赤くなるぐらい。

「さ!神楽先輩!続きを楽しみましょう♪」

そのまま陽菜ちゃんは前を歩き始める。

「…はぁ。先輩をからかうもんじゃありません。」

本当に陽に頼んどいた方がいいな。うん。帰ったらように連絡しよう。

約束をした小指を見ながらそんなことを考えていた。
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