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第四章
俺が代わりに受け止める*
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ユリウスが部屋に入ってきたとき、ルカはゲージの前で頬杖をつき、微動だにせずじっとポポを見つめていた。ユリウスの姿に目線だけをちらりと動かす。
怒られるのかな。それだと嫌だな。
ルカは頬杖をとき、意味はないと思いながらもベッドの掛布を引き寄せて頭から被った。
さっきリサに聞いたら、尻もちをついた少女は助け起こすのだと言った。ルカは何もしなかった。ただ見ていた。そういうところが、躾がなっていないとコーバスに言わしめる所以なのだろう。そのせいでユリウスが悪く言われた。ユリウスだって嫌な気分になったはずだ。
ユリウスに嫌われたらどうしよう。
ずっとここに居ていいとユリウスは言ったし、結婚だってルカがいればしないと言った。でもユリウスに嫌われたら、その全部がなくなる。
「……ごめんなさい」
嫌われたくなくて、謝った。
「これからはちゃんとできるようにするから、許して」
下唇を噛んでユリウスを見上げたら、ユリウスは盛大なため息をつき、ルカの前にしゃがんだ。
「ルカ。俺はそんなにおまえに信用されていないのか? リサから聞いたぞ。エミーを助け起こさなかったことを失敗だと思っているんだろう?」
ルカはこくこく頷いた。
「だってそのせいでユリウスが嫌な思いをしたから」
「してないぞ」
「うそだ。だってコーバス様がユリウスに文句言ってた」
「あんなのは文句のうちに入らんし、俺は気にもしていない。大体な、そんなことで俺が怒るとでも思っているのか? ルカにそう思われている方が、俺はよほど落ち込むぞ」
ほらとユリウスが両手を広げる。ルカはおずおずとその腕の中に擦り寄った。
「俺は何があってもルカのことを嫌いにはならんし、一生俺の側から離してやるつもりもない。言ったろう? ずっとここにいればいいと」
ユリウスの言葉に、ルカの目からつつと涙が筋となってこぼれ落ちた。その涙をユリウスの指が優しくすくう。
「ほら。話してみろ。今日はエミーと何があったんだ? 俺には隠さず何でも話せ」
ルカは、ポポをゲージから出した時エミーが扉の前にいたところから順を追って話した。最後まで頷きながら聞いたユリウスは「そうか。わかった」とルカの髪を撫でた。
「エミーはポポに驚いただけなんだな。ならルカは何も悪くない。シマリスに驚いてこけても恥ずかしいことではないが、あの場には俺もいたし、エミーは言いづらかったんだろう。それだけだ」
ルカは涙の跡をユリウスの服の肩口に押し付けてぐりぐり拭った。
「それとな、ルカ。これから外に出るようになれば、そういうことももっと増えてくるだろう。こんな辺境では希少種というだけで珍しいし、口さがない者というのはどこにでもいる。それをいちいち真に受けていては身が持たん。だからな、ルカ。その時正しいと思うことをすればいいんだ。そうやって行動した結果なら、誰がなんと言おうと気にすることはない」
「でも、それだとユリウスがまた嫌な思いしない?」
「しないさ。むしろルカの代わりに俺が全部受け取ってやる。そんなことで俺は揺らがん。だから我慢はするな」
「なんか、うれしいかも」
ルカはそう口にして、なんだかたまらなく恥ずかしい気がした。顔が見えないよう、ユリウスの首に腕を回して抱きついた。顔に熱が溜まったみたいにカァと熱くなって、耳まで火照った。どうしてだろう。どきどきする。
「どうした、ルカ。鼓動が速いぞ」
指摘され、顔をのぞかれそうになる。ルカは「見たらだめ」と金糸の髪に顔を埋めた。
「あのね、ユリウス。ありがと。目、閉じて」
顔は見られたくないけれど、ユリウスとキスがしたい。
「ねぇ、閉じた?」
「ああ」
ルカはそろりと金糸の髪から顔をあげるとユリウスの顔をそっと見た。するとぱちりと碧眼の瞳と目が合った。
「ユリウスのうそつき。目ちゃんと閉じてない」
「はは。そうか?」
「ユリウスのうそつき。わっ」
ユリウスはルカを突然抱きかかえると、ベッドの上に仰向けにルカを倒した。覆いかぶさるようにしてユリウスはルカに口づけた。
「んっ……。ユリウス、待って待って」
キスしたかったのはルカなのに先にされた。そう文句を言うと、ユリウスはどっちでも一緒じゃないか?と首を傾げる。結果は同じでも、ルカがしたかった。
「ユリウスが下だからね」
ルカはうんしょとユリウスの大きな体躯をベッドに仰向けに転がすとその上に乗っかった。両手でユリウスの目を覆うと、ルカはユリウスの口にそっと口づけた。
「ねぇユリウス。ユリウスも我慢しないでね。ほんとはわたしとこうするのが嫌だったらちゃんと言ってね」
「待て。どうしてそうなる? 俺は嫌だと思ったことは一度もない」
「でも、時々我慢してるみたいな顔するから」
「それは……」
ユリウスは困ったように苦笑した。しばらく何事か考えているようだったが、やがて口を開いた。
「正直に言っていいか? 聞いても俺のことを避けるなよ」
「避けないよ。ユリウスのこと好きだから」
「まぁ、あれだ。その、俺も男だ。こうしているともっとルカに触れたいと思うし、欲もでる。でもその全部をルカにぶつけるわけにはいかないからな。それを我慢しているだけだ」
「そんなの我慢しなくていいのに」
ユリウスはまいったというように額に手を当てた。
「あのなルカ。あまりそう軽々しく言うもんじゃないぞ。本当に我慢できなくなる」
「だから我慢しなくていいってば」
「あー、くそっ。ほんとに知らないぞ」
ユリウスはそう言うやルカの腰を持って体を反転させ、敷布にルカを押し倒した。上から覆いかぶさるようにユリウスはルカの口を奪う。強引に舌を絡め取られた。
「んんっ」
いつもの余裕のある優しいキスではない。激しく奪っていくような口づけに、ルカは喘いでユリウスのシャツを握りしめた。ユリウスはルカの舌に舌を絡めながら、服の上から胸の膨らみに触れてきた。ルカは思わず体をびくつかせたが、ユリウスは気づかず、掬い上げるようにルカの胸の膨らみに触れ、頂きを指で押してきた。
「んんんっ!」
ルカはユリウスの胸をドンと叩いた。が、スイッチの入ったユリウスは、そのルカの手を敷布に押さえつけると、膝で足を割った。ユリウスの手がワンピースの裾をたくし上げ、直接大腿を撫で下着の下へと手が滑り込む。
双丘に直接触れられ、今度こそルカは耐えきれず、ユリウスの首にかぶりついた。
怒られるのかな。それだと嫌だな。
ルカは頬杖をとき、意味はないと思いながらもベッドの掛布を引き寄せて頭から被った。
さっきリサに聞いたら、尻もちをついた少女は助け起こすのだと言った。ルカは何もしなかった。ただ見ていた。そういうところが、躾がなっていないとコーバスに言わしめる所以なのだろう。そのせいでユリウスが悪く言われた。ユリウスだって嫌な気分になったはずだ。
ユリウスに嫌われたらどうしよう。
ずっとここに居ていいとユリウスは言ったし、結婚だってルカがいればしないと言った。でもユリウスに嫌われたら、その全部がなくなる。
「……ごめんなさい」
嫌われたくなくて、謝った。
「これからはちゃんとできるようにするから、許して」
下唇を噛んでユリウスを見上げたら、ユリウスは盛大なため息をつき、ルカの前にしゃがんだ。
「ルカ。俺はそんなにおまえに信用されていないのか? リサから聞いたぞ。エミーを助け起こさなかったことを失敗だと思っているんだろう?」
ルカはこくこく頷いた。
「だってそのせいでユリウスが嫌な思いをしたから」
「してないぞ」
「うそだ。だってコーバス様がユリウスに文句言ってた」
「あんなのは文句のうちに入らんし、俺は気にもしていない。大体な、そんなことで俺が怒るとでも思っているのか? ルカにそう思われている方が、俺はよほど落ち込むぞ」
ほらとユリウスが両手を広げる。ルカはおずおずとその腕の中に擦り寄った。
「俺は何があってもルカのことを嫌いにはならんし、一生俺の側から離してやるつもりもない。言ったろう? ずっとここにいればいいと」
ユリウスの言葉に、ルカの目からつつと涙が筋となってこぼれ落ちた。その涙をユリウスの指が優しくすくう。
「ほら。話してみろ。今日はエミーと何があったんだ? 俺には隠さず何でも話せ」
ルカは、ポポをゲージから出した時エミーが扉の前にいたところから順を追って話した。最後まで頷きながら聞いたユリウスは「そうか。わかった」とルカの髪を撫でた。
「エミーはポポに驚いただけなんだな。ならルカは何も悪くない。シマリスに驚いてこけても恥ずかしいことではないが、あの場には俺もいたし、エミーは言いづらかったんだろう。それだけだ」
ルカは涙の跡をユリウスの服の肩口に押し付けてぐりぐり拭った。
「それとな、ルカ。これから外に出るようになれば、そういうことももっと増えてくるだろう。こんな辺境では希少種というだけで珍しいし、口さがない者というのはどこにでもいる。それをいちいち真に受けていては身が持たん。だからな、ルカ。その時正しいと思うことをすればいいんだ。そうやって行動した結果なら、誰がなんと言おうと気にすることはない」
「でも、それだとユリウスがまた嫌な思いしない?」
「しないさ。むしろルカの代わりに俺が全部受け取ってやる。そんなことで俺は揺らがん。だから我慢はするな」
「なんか、うれしいかも」
ルカはそう口にして、なんだかたまらなく恥ずかしい気がした。顔が見えないよう、ユリウスの首に腕を回して抱きついた。顔に熱が溜まったみたいにカァと熱くなって、耳まで火照った。どうしてだろう。どきどきする。
「どうした、ルカ。鼓動が速いぞ」
指摘され、顔をのぞかれそうになる。ルカは「見たらだめ」と金糸の髪に顔を埋めた。
「あのね、ユリウス。ありがと。目、閉じて」
顔は見られたくないけれど、ユリウスとキスがしたい。
「ねぇ、閉じた?」
「ああ」
ルカはそろりと金糸の髪から顔をあげるとユリウスの顔をそっと見た。するとぱちりと碧眼の瞳と目が合った。
「ユリウスのうそつき。目ちゃんと閉じてない」
「はは。そうか?」
「ユリウスのうそつき。わっ」
ユリウスはルカを突然抱きかかえると、ベッドの上に仰向けにルカを倒した。覆いかぶさるようにしてユリウスはルカに口づけた。
「んっ……。ユリウス、待って待って」
キスしたかったのはルカなのに先にされた。そう文句を言うと、ユリウスはどっちでも一緒じゃないか?と首を傾げる。結果は同じでも、ルカがしたかった。
「ユリウスが下だからね」
ルカはうんしょとユリウスの大きな体躯をベッドに仰向けに転がすとその上に乗っかった。両手でユリウスの目を覆うと、ルカはユリウスの口にそっと口づけた。
「ねぇユリウス。ユリウスも我慢しないでね。ほんとはわたしとこうするのが嫌だったらちゃんと言ってね」
「待て。どうしてそうなる? 俺は嫌だと思ったことは一度もない」
「でも、時々我慢してるみたいな顔するから」
「それは……」
ユリウスは困ったように苦笑した。しばらく何事か考えているようだったが、やがて口を開いた。
「正直に言っていいか? 聞いても俺のことを避けるなよ」
「避けないよ。ユリウスのこと好きだから」
「まぁ、あれだ。その、俺も男だ。こうしているともっとルカに触れたいと思うし、欲もでる。でもその全部をルカにぶつけるわけにはいかないからな。それを我慢しているだけだ」
「そんなの我慢しなくていいのに」
ユリウスはまいったというように額に手を当てた。
「あのなルカ。あまりそう軽々しく言うもんじゃないぞ。本当に我慢できなくなる」
「だから我慢しなくていいってば」
「あー、くそっ。ほんとに知らないぞ」
ユリウスはそう言うやルカの腰を持って体を反転させ、敷布にルカを押し倒した。上から覆いかぶさるようにユリウスはルカの口を奪う。強引に舌を絡め取られた。
「んんっ」
いつもの余裕のある優しいキスではない。激しく奪っていくような口づけに、ルカは喘いでユリウスのシャツを握りしめた。ユリウスはルカの舌に舌を絡めながら、服の上から胸の膨らみに触れてきた。ルカは思わず体をびくつかせたが、ユリウスは気づかず、掬い上げるようにルカの胸の膨らみに触れ、頂きを指で押してきた。
「んんんっ!」
ルカはユリウスの胸をドンと叩いた。が、スイッチの入ったユリウスは、そのルカの手を敷布に押さえつけると、膝で足を割った。ユリウスの手がワンピースの裾をたくし上げ、直接大腿を撫で下着の下へと手が滑り込む。
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