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第三章
セービン伯爵の思惑 2
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色とりどりの花が咲き乱れる小道を進んでいくと緑の屋根の四阿が現れた。
四阿の下には丸いテーブルが置かれ、二人の人物が椅子に腰かけていた。
可憐な妖精の異名に相応しい、金髪碧眼の美少女グロリアーナ嬢と、同じ金髪碧眼の妙齢の女性、セービン伯爵夫人だ。
アランを出迎えるため、二人は腰を上げ、優雅に貴族式の礼をとった。
アランが、遅れた非礼を詫びると、「ご連絡はいただいていましたのでお気になさらず」と夫人が告げる。
夫人は早速アランに席を勧め、侍女を呼び寄せるとティーカップに紅茶を注いだ。テーブルの上には、夫人とグロリアーナ嬢心尽くしの菓子や軽食が所狭しと並べられている。
これは自分で作ったのだとグロリアーナ嬢が勧める菓子を口に運び、アランは夫人とグロリアーナ嬢の話に適当に返事を返しつつ、庭へと視線を投げた。
ヨハンナの好きなハララはないかと思ったが、咲いているのはどれも手の掛かる高級な品種の花々ばかりだ。
伯爵家の庭に、どこにでも咲いているハララの花などあろうはずもなかった。
話に相槌をうちながらも心ここにあらずのアランに焦れたのだろう。
グロリアーナ嬢がお庭をご案内しますわとアランの手を引く。夫人は、この小道の先にバラが見頃を迎えておりますのでぜひと若い二人を送り出す。
アランは作法としてグロリアーナ嬢の手をとると、夫人の勧める先へと足を運んだ。
「お会いできて嬉しゅうございます。アラン殿下ったらお誘いしてもなかなか来てくださらないんですもの」
グロリアーナ嬢が、桃色の頬を膨らませ、うらみがましい視線をアランへ向ける。
それをアランは曖昧に笑ってかわし、見頃となっているバラの品種を尋ねた。
グロリアーナ嬢はすらすらと品種を答えていく。その他にも小道の途中に植わる花々の名をあげていく。
教養もあり、少女らしく可愛らしい幼さも残している。
容姿だって申し分ない。友のグラントリーが言っていたように、グロリアーナ嬢は引く手数多の社交界の花なのだ。
けれど――。
アランは屋敷に滞在しているヨハンナのエメラルドの瞳を思い出す。
目の前の少女は確かに可憐で、男なら庇護欲をそそられ、同時に乱してみたいとの欲を抱くに十分な存在だ。そう頭では冷静に判断できるが、惹かれるかと問われればそれはまた別の話だ。
自分がいま焦がれているのは、あのエメラルドの瞳だ――。
小道の先のバラは、夫人が勧めるだけあってすばらしいものだった。グロリアーナ嬢によると夫人自ら手を入れているそうで、配色も、見頃も考え、作庭されている。
十分にバラを堪能し四阿へ戻ると、夫人の隣にセービン伯爵がいた。
四阿の下には丸いテーブルが置かれ、二人の人物が椅子に腰かけていた。
可憐な妖精の異名に相応しい、金髪碧眼の美少女グロリアーナ嬢と、同じ金髪碧眼の妙齢の女性、セービン伯爵夫人だ。
アランを出迎えるため、二人は腰を上げ、優雅に貴族式の礼をとった。
アランが、遅れた非礼を詫びると、「ご連絡はいただいていましたのでお気になさらず」と夫人が告げる。
夫人は早速アランに席を勧め、侍女を呼び寄せるとティーカップに紅茶を注いだ。テーブルの上には、夫人とグロリアーナ嬢心尽くしの菓子や軽食が所狭しと並べられている。
これは自分で作ったのだとグロリアーナ嬢が勧める菓子を口に運び、アランは夫人とグロリアーナ嬢の話に適当に返事を返しつつ、庭へと視線を投げた。
ヨハンナの好きなハララはないかと思ったが、咲いているのはどれも手の掛かる高級な品種の花々ばかりだ。
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話に相槌をうちながらも心ここにあらずのアランに焦れたのだろう。
グロリアーナ嬢がお庭をご案内しますわとアランの手を引く。夫人は、この小道の先にバラが見頃を迎えておりますのでぜひと若い二人を送り出す。
アランは作法としてグロリアーナ嬢の手をとると、夫人の勧める先へと足を運んだ。
「お会いできて嬉しゅうございます。アラン殿下ったらお誘いしてもなかなか来てくださらないんですもの」
グロリアーナ嬢が、桃色の頬を膨らませ、うらみがましい視線をアランへ向ける。
それをアランは曖昧に笑ってかわし、見頃となっているバラの品種を尋ねた。
グロリアーナ嬢はすらすらと品種を答えていく。その他にも小道の途中に植わる花々の名をあげていく。
教養もあり、少女らしく可愛らしい幼さも残している。
容姿だって申し分ない。友のグラントリーが言っていたように、グロリアーナ嬢は引く手数多の社交界の花なのだ。
けれど――。
アランは屋敷に滞在しているヨハンナのエメラルドの瞳を思い出す。
目の前の少女は確かに可憐で、男なら庇護欲をそそられ、同時に乱してみたいとの欲を抱くに十分な存在だ。そう頭では冷静に判断できるが、惹かれるかと問われればそれはまた別の話だ。
自分がいま焦がれているのは、あのエメラルドの瞳だ――。
小道の先のバラは、夫人が勧めるだけあってすばらしいものだった。グロリアーナ嬢によると夫人自ら手を入れているそうで、配色も、見頃も考え、作庭されている。
十分にバラを堪能し四阿へ戻ると、夫人の隣にセービン伯爵がいた。
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