偏執の枷〜わたしの幸せはわたしが決める〜

咲木乃律

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第三章

幸せな時間

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 白の神殿から戻ったあと、アラン、ヨハンナ、セキとコクは屋敷でゆっくりと夕食をとった。その後、アランは執務室へと消えたので、ヨハンナは早めの湯浴みをし、寝室に落ち着いた。

 まだ早い時間だったので、セキとコクが話し相手になってくれないかなと思っているところへ、アランが現れた。

 アランは片腕に二本の瓶を抱え、カットグラスを二個、器用に指に挟み込んで持ってきた。

「ちょっと付き合ってくれ」

 アランがサイドテーブルへグラスを並べるので、ヨハンナは慌てて寝台から降りようとすると、そのままでと止められる。

「今日はずいぶんと歩いたからな」

 アランは大きめのクッションを持ってくると寝台の背に置き、もたれるようヨハンナに促す。
 アランは寝台横に椅子を持ってくると腰掛け、サイドテーブルの二本の瓶からそれぞれのグラスへと液体を注いだ。

「ほら。ヨハンナはこっち。俺のは酒だ」

 アランは、ヨハンナに一方を渡すと軽くグラスを持ち上げ、グラスを触れ合わせる。キンと澄んだ音が小さく鳴った。

 アランは琥珀色の液体を一気にあおった。
 ヨハンナも渡されたグラスに口をつけた。
 グラスの液体は果実水だった。ハララの香り付きだ。

 ヨハンナの頬が自然ほころんだ。

 アランはそんなヨハンナの顔をじっと見つめてくる。
 ヨハンナは昼間のことを思い出し、ぱっと赤面した。
 
「……あんまり見ないで…。恥ずかしい……」

 ヨハンナはグラスを置き、掛布を引き寄せ、顔を埋めた。
 好きな人と寝室で二人きりだと思うと余計に心拍数があがる。こういう時、どうしたらいいのかなんてヨハンナにはまるでわからなかった。





 掛布に顔を隠したヨハンナに、アランはくすりと笑うとグラスをサイドテーブルに戻し、寝台の縁に腰掛けた。

 寝台のきしむ音にヨハンナは過剰に反応し、肩をびくりとさせたが、アランが髪に触れるとそろそろと掛布を下ろし、エメラルドの瞳が隙間から現れた。

「ヨハンナ……。昼間の続き、していいか……?」

 一瞬、ヨハンナは戸惑ったように視線を揺らしたが、アランの琥珀色の瞳をしばらくじっと見つめて、小さくコクリと頷いた。

 アランはヨハンナを怖がらせないよう、掛布ごとそっと抱き寄せた。
 まだ少し湿っているふわふわとした髪を梳き、頬に手を添えて上向かせると、ヨハンナは目をつむった。

 アランはヨハンナの小さな口に口づけると、唇を割って舌を差し入れた。瞬間、びくりとヨハンナの体が跳ねたが、宥めるように髪を撫でると体の力を抜いた。

 アランはヨハンナの歯列をなぞり、口蓋をつつき、ヨハンナの舌に舌を絡めた。
 その度ヨハンナはびくびくと反応したが、嫌がっている風ではない。
 
 アランは唇を離すと首筋へとキスを落とし、ヨハンナの様子を見ながら夜着の上からそっと胸の膨らみに触れた。

 ヨハンナは目を見開き、アランを強張った顔で見上げてくる。

「怖いか?……」

 アランは手を離し、再び頬に、唇に、額にと軽いキスを落とした。

 ぎゅっと抱きしめると安心するのか、ほぅと息を吐き出し、再びヨハンナの体の力が抜けていく。

 アランは抱きしめたまま、もう一度胸の膨らみへと手を伸ばした。ヨハンナは、アランの与えるぬくもりに気を取られているようで、今度は少し身を捩っただけだった。

 アランの手にすっぽりと収まるほどのかわいらしい膨らみだ。しばらく触っても怖がる様子のないヨハンナに、アランは袷の隙間から手を差し入れ、直接柔い肉を揉みしだき、突起を捏ねた。ヨハンナは小さく声を上げた。

「もう、やめておくか?」

 アラン自身、これ以上進めば我慢が効かなくなりそうだ。そう思って聞いたのだが、ヨハンナは大丈夫と首を振る。

「……アランとずっとこうしてたい……」

 潤んだエメラルドの瞳で見上げられ、理性が飛びそうだ。

 アランは寝台にヨハンナの体を埋めると体重をかけないようにその上にのり、性急に口づけた。唇を割り、舌をねじ込み、袷の紐を解く。

 両手で掬い上げるように小さな膨らみに触れ、そのまま手を下へと滑らせた。

 その間にもヨハンナのうなじに顔を埋め、首筋にもキスをしながらヨハンナの夜着を乱し、胸の頂を口に含む。
 
 慎ましやかな双丘を撫で、大腿の内側へ手を滑らせると、ヨハンナの体が明らかに強張った。





「…アランっ……。私……」

 アランの与える熱に酔っていたヨハンナだが、アランの手が大腿の内側を辿った時点で限界を超えた。セヴェリの顔を思い出さなかったと言ったらうそになる。思わず体を固くし、アランの目を縋るように見上げた。

 アランはすぐに気がつき、優しく笑うと手を引き、ヨハンナの夜着の袷を整え、紐を締め直し、自ら寝台の背にもたれるとヨハンナを立てた膝の間に座らせ、そっと抱きしめた。

 サイドテーブルから飲みかけだった果実水をとると、ヨハンナに渡し、アランは片手でグラスに酒を注いだ。

「悪い……。つい夢中になった……」

 アランが謝るので、ヨハンナは違うと首を振った。

「アランは、悪くない……」

 たぶん、慣れていない自分が悪いのだ。

 ヨハンナがそう言うとアランはくしゃくしゃとヨハンナの髪を乱した。

「むしろその方が俺は嬉しいがな」
「そうなの?」

 ヨハンナが小首を傾げると、アランは「まぁどちらでもいいんだけれどな」と苦笑し、グラスをあおった。

「どっちでもいいの?」
「そうだな……。そこはあまり問題じゃない」

 そう聞いてなぜかほっとした。
 経験はない。でもセヴェリには触られた。それを経験があるとも言うのだろうか。もう自分の体は清らかではないのだろうかと思うと心配だったが、アランがどちらでもいいと言ったのを聞いて少し安心した。

 それから、アランと二人でいろいろな話をした。

 アランの三人の兄のこと、家令テッドのこと、屋敷内のこと。

 ヨハンナも故郷イクサカ地方の話をたくさんした。

 アランは飽かずいつまでも耳を傾けて聞いてくれた。

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