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第三章
色とりどりの
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二頭立ての馬車は、アランとヨハンナを乗せるとすぐに走り出した。
「おい、ヨハンナ。ヨハンナ!」
腕の中のヨハンナはまだぐったりとして目が虚ろだ。
強く呼びかけてもアランの方を見ようとしない。
「ヨハンナ……」
アランは反応のないヨハンナの、ぐにゃりとした体を支えたまま、その小さな口に口づけた。
様子を確かめながら舌を絡め、混ざりあった唾液が頬を伝うと、ヨハンナのエメラルドの瞳に光が戻った。
気がつけば口付けられている状況に、ヨハンナは目を丸くし、じたばたと暴れたが、アランは少し強引に唇を割って深く口腔内を弄った。
はじめは抵抗していたヨハンナだが、次第に体の力が抜け、唇が離れる頃には潤んだ瞳でアランを見上げていた。
「守ってやれなくて悪かった」
アランが謝れば、ヨハンナはううんと首を振る。
「私なら大丈夫。なんともないし」
「ニクラスが群衆から連れ出したのか?」
ヨハンナは首を傾げた。
「わからない……。気がついたら馬車の中だったから」
不安そうにアランを見上げてくる。
アランはヨハンナの髪を梳き、もう離すまいと強く抱き寄せた。
「あ! それは僕のだぞ!」
「それこそ僕のだぞ!」
土産にと持ち帰った飴を前に、セキとコクが早速小競り合いを始めている。
夕食後のお茶の時間。テーブルに包みを開いて載せると色とりどりの飴が現れ、セキとコクはかじりつくように釘付けになった。
これ欲しい、このきれいな色のがいいと二人で欲しい飴を取り始め、分けているうちに小競り合いに発展した。
ヨハンナは、同じものをいくつも買おうとするアランを止めたが、アランはいいからと笑ってたくさんの飴を購入した。
セキとコクの様子を見ていると、アランの大量買いは正解だった。
「おいこら。ヨハンナの分を残しておけよ」
アランが呆れて声をかければ、セキとコクは自分にと取り分けた分から、いくつかの飴をヨハンナにおずおずと差し出した。
「ありがと」
差し出しながらも未練たっぷりに飴へと視線が注がれている。
ヨハンナは二人の様子を見ながら、小さな手のひらに載った飴をいくつかもらった。
「遠慮すんなよな。ほら、この水色のもやるよ」
コクがヨハンナの手のひらに水色の飴を載せると、セキも仕方ないといった様子で自分のコレクションから、吟味した赤と白の混じった飴を差し出す。
アランは横を向いて笑いをかみ殺した。
「そうやってると、まるっきり子供だな」
やれやれとアランが吐息をつくと、セキもコクも頬をぷぅと膨らませた。
「子供扱いすんなよな」とセキ。
「そうだぞ。僕達は千里万里ひとっ飛びの空駆ける龍だぞ」とコク。
どれだけ威勢のいい言葉を使っても、色とりどりの飴を両手いっぱいに死守する姿は可愛らしい。
ヨハンナは二人の手から飴を受け取りながら、包みに残った飴をコクとセキに等しく分けてやった。
とたんに顔いっぱいに喜色を浮かべたセキとコク。
コクはヨハンナの視線にすぐに気がつき、照れたようにそっぽを向いた。
「おい、ヨハンナ。ヨハンナ!」
腕の中のヨハンナはまだぐったりとして目が虚ろだ。
強く呼びかけてもアランの方を見ようとしない。
「ヨハンナ……」
アランは反応のないヨハンナの、ぐにゃりとした体を支えたまま、その小さな口に口づけた。
様子を確かめながら舌を絡め、混ざりあった唾液が頬を伝うと、ヨハンナのエメラルドの瞳に光が戻った。
気がつけば口付けられている状況に、ヨハンナは目を丸くし、じたばたと暴れたが、アランは少し強引に唇を割って深く口腔内を弄った。
はじめは抵抗していたヨハンナだが、次第に体の力が抜け、唇が離れる頃には潤んだ瞳でアランを見上げていた。
「守ってやれなくて悪かった」
アランが謝れば、ヨハンナはううんと首を振る。
「私なら大丈夫。なんともないし」
「ニクラスが群衆から連れ出したのか?」
ヨハンナは首を傾げた。
「わからない……。気がついたら馬車の中だったから」
不安そうにアランを見上げてくる。
アランはヨハンナの髪を梳き、もう離すまいと強く抱き寄せた。
「あ! それは僕のだぞ!」
「それこそ僕のだぞ!」
土産にと持ち帰った飴を前に、セキとコクが早速小競り合いを始めている。
夕食後のお茶の時間。テーブルに包みを開いて載せると色とりどりの飴が現れ、セキとコクはかじりつくように釘付けになった。
これ欲しい、このきれいな色のがいいと二人で欲しい飴を取り始め、分けているうちに小競り合いに発展した。
ヨハンナは、同じものをいくつも買おうとするアランを止めたが、アランはいいからと笑ってたくさんの飴を購入した。
セキとコクの様子を見ていると、アランの大量買いは正解だった。
「おいこら。ヨハンナの分を残しておけよ」
アランが呆れて声をかければ、セキとコクは自分にと取り分けた分から、いくつかの飴をヨハンナにおずおずと差し出した。
「ありがと」
差し出しながらも未練たっぷりに飴へと視線が注がれている。
ヨハンナは二人の様子を見ながら、小さな手のひらに載った飴をいくつかもらった。
「遠慮すんなよな。ほら、この水色のもやるよ」
コクがヨハンナの手のひらに水色の飴を載せると、セキも仕方ないといった様子で自分のコレクションから、吟味した赤と白の混じった飴を差し出す。
アランは横を向いて笑いをかみ殺した。
「そうやってると、まるっきり子供だな」
やれやれとアランが吐息をつくと、セキもコクも頬をぷぅと膨らませた。
「子供扱いすんなよな」とセキ。
「そうだぞ。僕達は千里万里ひとっ飛びの空駆ける龍だぞ」とコク。
どれだけ威勢のいい言葉を使っても、色とりどりの飴を両手いっぱいに死守する姿は可愛らしい。
ヨハンナは二人の手から飴を受け取りながら、包みに残った飴をコクとセキに等しく分けてやった。
とたんに顔いっぱいに喜色を浮かべたセキとコク。
コクはヨハンナの視線にすぐに気がつき、照れたようにそっぽを向いた。
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