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32 どうにもならない言葉
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風に飛ばされたユリアのハンカチを追いかけ、ある程度の距離を走ってきたミーティアは、そこで大事そうにユリアのハンカチを愛でる王太子を見つけ、彫像のように固まった。
「うわぁ……なにあれ、気持ち悪いんだけど」
サッとその辺にあった手頃な木の陰に隠れ、ミーティアは王太子を観察し始める。
以前、校舎の陰でユリアとのやり取りを盗み見た時から疑っていたけれど、やはり王太子は転生者で間違いなさそうだ。
その証拠に、彼は風によって飛ばされてきたユリアのハンカチに頬を擦り寄せたり、さり気なく匂いを嗅いだりしている。
ハンカチなんて普通は誰のものか分からないのに、あんな風に愛でている時点で、持ち主を知っているのが丸分かりだ。そして、持ち主を知っているということはつまり、転生者だということ。
何故なら、中庭でユリアのハンカチが風に飛ばされたのは小説内のイベントであり、本来ならそれを追いかけて行ったユリアが、出会した王太子とその護衛達に散々罵倒され、ハンカチを踏み付けられる──という筋書きだったのだから。
たとえ王太子が転生者であったとしても、相手は男だし、内容をあまり知らない可能性もあるから……とあまり気にしないようにしていたけれど、どうやら甘かったらしい。
こんなちっさいイベントを知ってるなんて、どう考えても読破してるわ……!
しかもミーティアが懸念した通り、彼は明らかにユリアへと好意を抱いている。それはレスターとの婚約破棄を彼が後押ししたことからも、疑いようがない。何より──。
「まぢキモ過ぎて引くんだけど……」
何事かを護衛に言ってハンカチを受け取り、代わりにユリアのハンカチをそっと自分のポケットに忍ばせるところを、バッチリ目撃してしまった。
どうやら事前にユリアのハンカチの情報を手に入れ、同じ物を用意させていたようだ。
「王族の権力、悪用してんじゃないわよ……」
ギリギリと木の幹に爪を立てていると、不意に後ろから肩をつつかれた。
「ひっ……!」
思わず声をあげそうになったミーティアは、「しーーーっ!」と言われ、慌てて自分の口を覆う。
自分の肩をつついてきた人物を見てみれば、それは側近候補のパルマークで。
彼は、小さなメモ用紙に「少しだけお話よろしいですか?」と書いたものを見せてきて、どうして筆談? と思ったものの、ミーティアはそれに頷きを返し、移動を促す彼の後に、大人しくついて行くことにした。
ユリアに渡す予定のハンカチを握りしめ、彼女が来たらなんと言おうかと考え続ける王太子を置き去りにして──。
※※※
「……よし、この辺でいいかな」
人気の少ない中庭の隅までやって来たところで、フェルディナントが漸くレスターから手を離す。
強い力で肩を掴まれ、無理矢理ここまで連れて来られたレスターは、掴まれていた肩をほぐすようにしながら、フェルディナントを鋭い瞳で睨み付けた。
「お前は一体なんなんだ? どうして僕の邪魔をする?」
しかしフェルディナントは睨まれてもなんとも思わないようで、飄々とした笑みを浮かべて答える。
「俺はお前の邪魔をしたっていうより、ユリアを助けただけだけど?」
「はあ⁉︎ どういう意味──」
「お前分かってんの? 今更お前がユリアに近付けば、あいつがまた変な噂に巻き込まれるってこと」
「あ……」
そう言われて、レスターは初めて自分が愚かなことをしようとしていた事実に気付いた。
自分はただ、少しでもユリアと直接話がしたいと思っただけだった。しかしそれは結局、ユリアを再び新たな噂の渦中へと引き摺り込むだけの行動でしかなかったと。どこまでも、自分本位の行動でしかなかったと。
「だけどっ……だったらどうしろって言うんだ? 婚約継続のための話し合いには参加できない、学園ではユリアに声もかけられない、放課後の訓練のせいで帰宅は毎日遅い時間だし、夜は夜で成績維持のために勉強しなければならないし……こんな毎日で、僕はどうしたら──」
つい弱音を吐くと、フェルディナントに鼻で笑われた。
「だから? そもそも学園で距離を置くっつったのはてめぇだろ? 人にはなぁ、絶対言っちゃいけない言葉ってもんがあるんだ。一回言ったらどう足掻いても取り消せない、どうにもならない言葉ってのがな。その上訓練のせいで帰宅が遅い? 成績維持のための勉強? 言い訳ばっかで聞いてるこっちが情けなくなるぜ。……まぁ、他人を貶めることばっかしか考えてない王太子の側近にはいいかもな? 俺ならぜってぇいらね~けど」
言いたいことだけ言って、フェルディナントはレスターへと背を向ける。そんな彼に、レスターは縋るようにして声をあげた。
「ま、待ってくれ! 僕は……僕はこれからどうしたら良い? どうしたらユリアを失わずにすむんだ?」
その問いに返されたフェルディナントの視線は──極寒の吹雪のような冷たさを孕んでいた。
「そんなこと言ってる時点で……無理だろ」
「…………っ!」
言葉をなくしたレスターが、その場に頽れる。
そのまま顔を覆い、全身を震わせ始めた彼を見て、フェルディナントは今度こそ、その場を後にした。
「……っ、ユリア……僕は……っ、うっ……」
自分以外誰もいなくなった中庭の隅で、レスターは一人、慟哭した──。
「うわぁ……なにあれ、気持ち悪いんだけど」
サッとその辺にあった手頃な木の陰に隠れ、ミーティアは王太子を観察し始める。
以前、校舎の陰でユリアとのやり取りを盗み見た時から疑っていたけれど、やはり王太子は転生者で間違いなさそうだ。
その証拠に、彼は風によって飛ばされてきたユリアのハンカチに頬を擦り寄せたり、さり気なく匂いを嗅いだりしている。
ハンカチなんて普通は誰のものか分からないのに、あんな風に愛でている時点で、持ち主を知っているのが丸分かりだ。そして、持ち主を知っているということはつまり、転生者だということ。
何故なら、中庭でユリアのハンカチが風に飛ばされたのは小説内のイベントであり、本来ならそれを追いかけて行ったユリアが、出会した王太子とその護衛達に散々罵倒され、ハンカチを踏み付けられる──という筋書きだったのだから。
たとえ王太子が転生者であったとしても、相手は男だし、内容をあまり知らない可能性もあるから……とあまり気にしないようにしていたけれど、どうやら甘かったらしい。
こんなちっさいイベントを知ってるなんて、どう考えても読破してるわ……!
しかもミーティアが懸念した通り、彼は明らかにユリアへと好意を抱いている。それはレスターとの婚約破棄を彼が後押ししたことからも、疑いようがない。何より──。
「まぢキモ過ぎて引くんだけど……」
何事かを護衛に言ってハンカチを受け取り、代わりにユリアのハンカチをそっと自分のポケットに忍ばせるところを、バッチリ目撃してしまった。
どうやら事前にユリアのハンカチの情報を手に入れ、同じ物を用意させていたようだ。
「王族の権力、悪用してんじゃないわよ……」
ギリギリと木の幹に爪を立てていると、不意に後ろから肩をつつかれた。
「ひっ……!」
思わず声をあげそうになったミーティアは、「しーーーっ!」と言われ、慌てて自分の口を覆う。
自分の肩をつついてきた人物を見てみれば、それは側近候補のパルマークで。
彼は、小さなメモ用紙に「少しだけお話よろしいですか?」と書いたものを見せてきて、どうして筆談? と思ったものの、ミーティアはそれに頷きを返し、移動を促す彼の後に、大人しくついて行くことにした。
ユリアに渡す予定のハンカチを握りしめ、彼女が来たらなんと言おうかと考え続ける王太子を置き去りにして──。
※※※
「……よし、この辺でいいかな」
人気の少ない中庭の隅までやって来たところで、フェルディナントが漸くレスターから手を離す。
強い力で肩を掴まれ、無理矢理ここまで連れて来られたレスターは、掴まれていた肩をほぐすようにしながら、フェルディナントを鋭い瞳で睨み付けた。
「お前は一体なんなんだ? どうして僕の邪魔をする?」
しかしフェルディナントは睨まれてもなんとも思わないようで、飄々とした笑みを浮かべて答える。
「俺はお前の邪魔をしたっていうより、ユリアを助けただけだけど?」
「はあ⁉︎ どういう意味──」
「お前分かってんの? 今更お前がユリアに近付けば、あいつがまた変な噂に巻き込まれるってこと」
「あ……」
そう言われて、レスターは初めて自分が愚かなことをしようとしていた事実に気付いた。
自分はただ、少しでもユリアと直接話がしたいと思っただけだった。しかしそれは結局、ユリアを再び新たな噂の渦中へと引き摺り込むだけの行動でしかなかったと。どこまでも、自分本位の行動でしかなかったと。
「だけどっ……だったらどうしろって言うんだ? 婚約継続のための話し合いには参加できない、学園ではユリアに声もかけられない、放課後の訓練のせいで帰宅は毎日遅い時間だし、夜は夜で成績維持のために勉強しなければならないし……こんな毎日で、僕はどうしたら──」
つい弱音を吐くと、フェルディナントに鼻で笑われた。
「だから? そもそも学園で距離を置くっつったのはてめぇだろ? 人にはなぁ、絶対言っちゃいけない言葉ってもんがあるんだ。一回言ったらどう足掻いても取り消せない、どうにもならない言葉ってのがな。その上訓練のせいで帰宅が遅い? 成績維持のための勉強? 言い訳ばっかで聞いてるこっちが情けなくなるぜ。……まぁ、他人を貶めることばっかしか考えてない王太子の側近にはいいかもな? 俺ならぜってぇいらね~けど」
言いたいことだけ言って、フェルディナントはレスターへと背を向ける。そんな彼に、レスターは縋るようにして声をあげた。
「ま、待ってくれ! 僕は……僕はこれからどうしたら良い? どうしたらユリアを失わずにすむんだ?」
その問いに返されたフェルディナントの視線は──極寒の吹雪のような冷たさを孕んでいた。
「そんなこと言ってる時点で……無理だろ」
「…………っ!」
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そのまま顔を覆い、全身を震わせ始めた彼を見て、フェルディナントは今度こそ、その場を後にした。
「……っ、ユリア……僕は……っ、うっ……」
自分以外誰もいなくなった中庭の隅で、レスターは一人、慟哭した──。
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