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十三、満月
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今日は、なんだか月が大きい。
夕日をそのまま映したような、橙色の月。
そんな、ちょっと変わった月が空に浮いている。
足を交互に動かして前へ進むと、一緒に月がついてくる。…そう信じていたのは、いつまでだっただろうか。今では、月は規則正しく動いているだけであり、自分と月との間が途方もなく遠い為、見える位置に変化が少ないのだと理解している。
まぁ、理解してはいるが、こんなに暗い夜道を一人で歩く時は、度々月を振り返って、なんとなく孤独を癒やしていた。
今日も、いつも通り振り返る。橙色の、まん丸な月。あまりにも鮮やかな橙色だから、ひとつ、写真でも撮ってやろうと携帯を月に向けた。
カシャッと効果音がして、画像が保存される。
一応確認しておこうと画像を開き、首をひねった。
(…色が、違う…?)
液晶の月と空の月を見比べると、あからさまに色が違う。何度か取ってみても、やっぱりあの橙色は撮れない。…レンズの性能かもしれない。
なかなか見ない月なだけあって、少し残念に思った。
それにしても、手を伸ばせば届きそうなほどにはっきりとした、美しい月だ。
届かないと解っていながらも、ついつい手を伸ばす。
(…あれ?)
月が、『伸ばした手より此方側にある』ように見える。見間違いだろうと一度手を下ろし、もう一度伸ばす。何度やっても、『手で月を遮る』という至極簡単な試みは失敗に終わった。
見間違いではないと解り、遅れてゾワリと背筋が粟立つ。
今、見えている、『コレ』はなんだ。
伸ばした手を徐々に引っ込めていっても、手には何も当たらない。目の前で手を降っても『月』は何も変わらないてそこに在る。瞼をギュウと瞑ると見えなくなったが、開ければやはり『月』が浮かんでいる。
『解らない』という恐怖が足から這い上がってくる。
『月』から逃げるように走り出したが、どこまで行っても文字通り、『月がついてくる』。
怖い、こわい、コワイ、恐い…!
飛び込んだ明るいトンネルで振り返ると、『月』がなくなっていた。
なんだか拍子抜けする。
兎にも角にも、助かったと思い、トンネルを抜けたところで、再び絶望に襲われた。
『月』が浮いている。
おそらく、明るい場所では見えなくなるのだろう。そして、暗くなったらまた現れるのだ。
橙色のまんまるな『月』が此方じ、と見つめる。本能的に、もう、逃げられないだろうと感じた。
『月』から逃げることを諦めたその日から、本来の月を見ていない。
あぁ、今夜も丸い『月』がついてくる。
夕日をそのまま映したような、橙色の月。
そんな、ちょっと変わった月が空に浮いている。
足を交互に動かして前へ進むと、一緒に月がついてくる。…そう信じていたのは、いつまでだっただろうか。今では、月は規則正しく動いているだけであり、自分と月との間が途方もなく遠い為、見える位置に変化が少ないのだと理解している。
まぁ、理解してはいるが、こんなに暗い夜道を一人で歩く時は、度々月を振り返って、なんとなく孤独を癒やしていた。
今日も、いつも通り振り返る。橙色の、まん丸な月。あまりにも鮮やかな橙色だから、ひとつ、写真でも撮ってやろうと携帯を月に向けた。
カシャッと効果音がして、画像が保存される。
一応確認しておこうと画像を開き、首をひねった。
(…色が、違う…?)
液晶の月と空の月を見比べると、あからさまに色が違う。何度か取ってみても、やっぱりあの橙色は撮れない。…レンズの性能かもしれない。
なかなか見ない月なだけあって、少し残念に思った。
それにしても、手を伸ばせば届きそうなほどにはっきりとした、美しい月だ。
届かないと解っていながらも、ついつい手を伸ばす。
(…あれ?)
月が、『伸ばした手より此方側にある』ように見える。見間違いだろうと一度手を下ろし、もう一度伸ばす。何度やっても、『手で月を遮る』という至極簡単な試みは失敗に終わった。
見間違いではないと解り、遅れてゾワリと背筋が粟立つ。
今、見えている、『コレ』はなんだ。
伸ばした手を徐々に引っ込めていっても、手には何も当たらない。目の前で手を降っても『月』は何も変わらないてそこに在る。瞼をギュウと瞑ると見えなくなったが、開ければやはり『月』が浮かんでいる。
『解らない』という恐怖が足から這い上がってくる。
『月』から逃げるように走り出したが、どこまで行っても文字通り、『月がついてくる』。
怖い、こわい、コワイ、恐い…!
飛び込んだ明るいトンネルで振り返ると、『月』がなくなっていた。
なんだか拍子抜けする。
兎にも角にも、助かったと思い、トンネルを抜けたところで、再び絶望に襲われた。
『月』が浮いている。
おそらく、明るい場所では見えなくなるのだろう。そして、暗くなったらまた現れるのだ。
橙色のまんまるな『月』が此方じ、と見つめる。本能的に、もう、逃げられないだろうと感じた。
『月』から逃げることを諦めたその日から、本来の月を見ていない。
あぁ、今夜も丸い『月』がついてくる。
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