闇の深そうな話

関塚衣旅葉

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それと昔の私 2

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 でもね、約束は守られなかった。
小学五年生か、六年生か、地震の後だったとは思う。
怖かったからママと二人でお家にいる時ずっと泣いてた。
パパ帰ってくるかな、パパ大丈夫かなって。
私はまだケータイを買って貰えてなかったから、パパとは連絡が取れていなかった。
大丈夫だと思い込んで、どんどん時が流れ、私が12歳になった頃かな。
昔のことを思い出した。
昔、家族3人でおばあちゃん家に向かう時、高速使っていたけど長いドライブだったから、私は車の中でリサイタルしていた。
その頃ずっと歌ってた曲があってね、それはまあ、ここでは言えないんだけど。
その歌を歌ってる時は私は無敵だなって思ってた。
なんの根拠があるんだか。
また、3人で車に乗って旅行したり、ドライブすると思っていたのに。
 
 我が家は崩壊した。
物理的ではなくてね。
内側から。


 小学校最後の運動会の日。
パパとママが2人で見に来てくれてた。
でも、最後の運動会だからご飯食べて直ぐに友達と写真撮ってもらってたから。
何も気づかなかった。
家に帰ってみると、居ないのだ。
「パパ、どこ行ったの? またお仕事なの?」
そうみたい、寂しいね。
多分そんなことを言われた気がする。
わかんない、私のママはそんな優しい言葉をかけてくる人だった記憶はない。

 後々考えると、この日以来、我が家でパパを見ることはなくなっていた。
でも、私は気が付かなかった。
否、気付かないふりをした。
その頃から心の方に問題を抱えていた。
ちょっとのことで泣いたり、キレたり。
元々は泣くだけだったのにキレたりするようになったのは、この出来事が原因だったのかもしれない。

 ここから少し時が進む。
あっという間に中学生になっていた。
なんか、父親が居ないことも何も思わなくなっていた。
けど、無自覚なうちに色々起きていた。
中学生にもなったのに泣くことが多く、冷静に考えてもあの頃の私はおかしかった。
でもまあ、周りからすると、泣き虫な子なのかな。
くらいにしか思われてなかった。
だって、父親が突然消えたとか、母親が仕事はじめてあんまり家にいないとか、言わないでしょう。
仲いい子には言うけどさ。
そんな感じで、おかしかった中学生の私。
そのまま中学生最大のイベント、自然教室が来た。
その日、の少し前かな。
1ヶ月くらい前かもしれん。 
わかんないけど、ガラケーをゲットした私は、何らかの方法で父親の電話番号をゲットした。
ちなみにこの頃、ママはおばあちゃんに██と連絡が取れない。
多分着信拒否されている。
と言っていた。
でも、私は家でパパの話をするのはタブーだと思っていたからママから電話番号を聞いた覚えはない。
だとしたら、電話番号はどうやって知ったのだろうか。
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