闇の深そうな話

関塚衣旅葉

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カシオレと18の夜。

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 まだ、18歳だった時の話。
当時交際していた相手の家に住んでいたと言いますか、家政婦みたいな役割でいたと言いますか。
あの頃はまだ交際相手に対して、若干の好意というのがあった。
本当に5ミリ程度の好意。
あるかないかで言われたらほぼないけど。
当時はまだ未成年の僕だが、酒を飲まないとまともに彼氏と会話ができなかった。
酒を飲むことでやっと生きてる、みたいな感じだった。
だって、少し前まで他人だった人と一緒に生活して、なんならお世話して。
生活力皆無の人間と過ごすなんてさすがの僕も出来なかった。
梅酒をロック(氷が入ったグラスに梅酒を注いでとかさずグイッと)飲んで、明日も頑張らなきゃ、洗濯まだ干してなかった、お風呂もまだだ、この後起こして、お風呂に入れて、その後あれか、地獄のような時間が待ってるんだ。

「このくらい、平気、きっと平気」

そう言い聞かせて、僕は恋人のお世話をする。
魔法の言葉と酒はセットで摂取する。
この言葉を唱えると、やっと動けるようになる。
真夜中の痛みしか感じない性行為。
それが終われば別々に眠る。
なんのための行為なのか不思議なくらい痛かった。
そんな毎日を繰り返していたある日。
カシスのリキュールとオレンジジュースを買ってきた。
だからカシスオレンジを作って飲んだ。
作っては飲んで、作っては飲んで、それを繰り返した。
恋人は何をしてたかと言うと、なんか女と電話してた。
誰だったかなんて覚えていない。
てか聞いた時にはもう遅くて、何が遅いかと言うと。
「気持ち悪い…」
未成年がストレス軽減のためとはいえ、飲みすぎたらそりゃどうしていいかわかる訳もなく。
でも、電話してる彼氏はこっちが苦しんでるのに気が付かない。
だから僕は、当時唯一と言えるレベルの男性の知り合いに連絡をした。
助けて、飲みすぎて気持ち悪くなって、でも誰にも連絡できなくて。
優しいから、その人は文面で丁寧に対処法を教えてくれた。
実はこの出来事の後にその男性の家に行くことで、たった5ミリの好意を向けることをやめようとしたのだけど、失敗に終わり、僕の生活がさらに酷いものになったのはまた別の話。

飲み過ぎには気をつけてねって言われた時、なんで僕はこんなにいい人とは付き合えないんだろうと思ったんだ。
それは僕が妥協したからなのだけど。
とりあえず一緒にいてくれればそれでいいみたいな理由で恋人を作ったからそうなった。
カシオレは悪くない。
飲み方が悪かったと、今もとても反省しているって話。
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