闇の深そうな話

関塚衣旅葉

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梅酒

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 元々梅が好きで。
高校在学中も飲むなら梅酒だった。
やっすいパウチのやつとか。
買ってくれる人が、私に対して加齢女子高生像を求めていたから、余計にビールやウイスキーとは距離が遠くなっていた。
売り場を眺めていると、買ってくれるけど梅酒。
それか甘いご飯には合わないサワー。 
甘い飲み物も好きだからいいけれど、大人のようにご飯と一緒に楽しむってのがやりたかった。
成人すればいくらでもできるのは分かっていたが、それでも、美味しくできたチキンステーキとビール。
なんてのをしてみたかった。
頑張って作った、鶏もも肉のやわじゅわステーキは、熱々のうちに宙を舞い、地面に食べられてしまった。
仕方がないことだ。
私が料理が下手で、相手の満足するものを作ることが出来なかったから。
鶏には申し訳ないことをしたなと思いながら片した。
安く買えて嬉しくて、帰り道、歩いて30分。
バスに乗らずに頑張って買ってきたのにな。
とか、なんでこの人押し入れから出てこないのかな。

 それもこれも全部キレのある大人なお酒があったら、今も引きずることは無かったかもしれない。

 今の私はというと、相変わらず料理は、と言うより何もかも下手だし得意なことはないけれど、仕事も辛くてあと2週間で辞めるけれど。
電車に揺られながら、反省会をしている。
次誰かに食べてもらう時は、また食べたくなるご飯を作らないと。
食べることが好きなのに、お酒を飲むのが好きなのに、作れない、知識が入ってない。
このままじゃだめなのに。
と、考えている。

 人生最大の、誰かにご飯を作って喜ばれた記憶。
多分それは小4の時に作ったトライフル。
大好きなおばあちゃんが喜んでくれたのが、ずっと忘れられなくて、小学生の頃から今も変わらずなりたいものがある。

誰かの笑顔の理由になれるご飯やスイーツを作る、売ること。
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