世界最強の公爵様は娘が可愛くて仕方ない

猫乃真鶴

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王都編

2.娘が花が美しいと言ったので②

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 翌朝はよく晴れていた。絶好のお散歩日和にアルベルトは浮き立つ。なにせ隣には最愛の娘リリアンが、いつもよりほんのちょっと着飾っているからだ。華美になりすぎないよう配慮されているが、アルベルト譲りの銀髪は日の光を受けるときらきら輝いて見える。ドレスのデザインも落ち着いたものだが生地は光沢のある絹だ。それらのおかげで、ほとんど化粧をしていなくても、リリアンの美貌をもってすれば装飾品なんて必要ない。血色のいい肌にちょっとおしろいをはたいて、髪を結い上げて。少しいいドレスを纏えば、それだけでリリアンには十分なのだ。

(普段は必要ないからと着飾ってくれないからな。いや、リリアンが着飾る必要がないのは勿論その通りなんだが。やはりちょっと整えるだけでもリリアンは美しくなる。天使を通り越して女神だ。参ったな、この私の教養をもってしてもリリアンを褒め讃える言葉が『尊い』しか浮かばない。やはりリリアンは素晴らしい、私の限界の更に上を行くのだから。……力が……欲しい……リリアンを讃えるに足る力が……)

 うきうきと小道を行くアルベルトの後ろ、リリアンは日差しに目を細める。侍女のシルヴィアが薦めてくれた通り、帽子を被ったのは正解だった。今は秋だが、日の光が強くて暑くなることがある。日傘よりも良いと、つばの広い帽子を準備していてよかった。傘だと景色を見るのに邪魔になっただろう。

 観光客らしき人々がそこかしこで自由に花畑を楽しんでいる。それを見回して、親子は人気の少ない方を選んで、まずそちらから見物することに決めた。
 ビオラ、パンジーと続いてコスモスを眺め、小川を挟んで向こう側、一面の緑は芝生だと思って近付くと違う植物だった。宿のコンシェルジュに聞いた話からすると芝桜で、春になると一面びっしり小さな花が咲くそうだ。そういえばその時期は濃いピンクの絨毯が広がってたように思う。この辺りに人が少ないのは、今は開花時期ではないので見栄えがしないからだろう。
 その芝桜の緑の丘を過ぎると、また違う種類のパンジーが見えてくる。最も景観の良いここは、最も荒らされた場所でもある。そのせいで、やはり人はまばらだった。今は整備中の看板があり、苗を植え直す作業中だったようだ。中断された状態で道具が置いたままになっている。

「ここは作業中なんですのね」
「そのようだな。都合がいい」

 そう言って周囲を見渡すアルベルトの視界に目当てのものが映った。この区画の奥は林に隣接している。その林から不届き者がやってきて、花畑を荒らすと聞いていた。身を隠すのにはうってつけだからだろう、根城にしているとまで言われているようだ。常に十人ほどがいて近付けなくなっている、そのせいで作業を再開できないという話だった。作業を始めれば、すぐにやってきて妨害してくるから。
 道具を片付けに来た作業員からそのように聞いた。すでに晩秋を迎えることから苗を植え直すのは諦め、土を耕して整えるそうだ。それだけなのに、鍬を入れようとするだけでならず者に囲まれてしまう。小突いて嫌がらせをしてきて、柵や道具を壊される。まだ綺麗な状態の花にまで被害が出るし、作業員に怪我まで負わせるものだから、今ではもう少人数しか畑に出られない。警備を置くとそれこそ手が付けられないくらい、一日中なにかしら嫌がらせをされる。それでもう、放置するしかないのだとか。現に今も、作業員が来るまではこちらに見向きもしなかったのに、彼らが鍬を拾い上げただけで林からぞろぞろと出て来る。数十人がよくもまああの小さな林に潜んでいたものだ。にやけた顔でいるが、何をしようとしているかは一目瞭然だ。手には皆、棍棒のようなものを持っている。
 近くにいた作業員の「お、多い……」という声が聞こえた。普段より数が多いようだ。
 様子を伺っていると、体格のいい男が数人いる作業員のうちの一人に詰め寄っていた。何かしらを言い合ったあと、作業員を追い払うように棍棒を振り回した。驚いた作業員は尻餅をついてしまう。その様子に駆け寄った別の作業員には、別のならず者が数人、行く手を阻む。そしてやはり棍棒を振り翳して脅して——あろうことか、それを振り下ろしたのだった。

 リリアンが悲鳴をあげる。その声でこちらに気付いたのだろう、三人の不届き者が振り返り、近付いて来る。

(ああリリアン、可哀想に。乱暴な輩の非道を目の当たりにさせてしまった。悲惨な様子を見せるのは良くないが……リリアン、良いタイミングで悲鳴を上げてくれた。これ以上被害を出すわけにもいかないからな。そもそも奴らがこんなことをするから、可愛いリリアンが心を痛める羽目になったんだ。手加減は必要無いな)

 方針が決まったところで、アルベルトはリリアンを庇うように一歩前に出る。

「お父様?」
「リリアンはここを動かないように。いいね?」

 不安がるリリアンを侍女のシルヴィアに任せ、アルベルトはならず者の方へ向かった。
 一応、アルベルトの腰には護身用の細剣が下がっている。が、アルベルトはこれを使う気が無い。剣を見て一瞬ならず者共が怯んだが、アルベルトをまじまじと見てなんとかなると思ったのだろう、さらに数人を呼び寄せて周りを取り囲んだ。見るからに身なりが良いのも効いたに違いない。身ぐるみ剥ごうとしているのが見て取れる。
 ならず者というから盗賊のような格好を想像していたが、装備は思ったよりしっかりしている。冒険者の端くれのようだが、やっていることは盗賊と変わりないから、やっぱり盗賊と呼んだ方が相応しいかもしれない。アルベルトはこいつらを盗賊と呼ぶことに決めた。
 盗賊その一からその三までが口々に言う。

「なんだぁ? てめえは。俺たちのやることに口を出そうってのか?」
「見るからに弱っちそうだな。痛い目に合いたくなきゃ、引っ込んでな」
「ま、金を出しゃあ見逃がしてやってもいいぞ。有り金全部置いて行きな!」

 絵に描いたような盗賊である。

「ハッハァ! びびって何も言えないかぁ?」
「金ならあるだろ? そんだけいいモン持ち歩いてんだからよぉ」
「それを置いていけばいいだけだぜ? カンタンだろ?」

 盗賊その四からその六までもが小物らしいセリフを吐く。いっそ清々しいくらいの盗賊ぶりに内心関心していると、怯える様子もないアルベルトの表情に、もっと揺さぶりをかけようとした盗賊その七がリリアンの方に視線を向けた。
 アルベルトはそれに不快感を覚えてくわっと目を見開いた。
 娘に危害を加えられると、そうアルベルトが思ったと勘違いをした盗賊その七は、へっ、と品のない笑いを浮かべる。

「あのお嬢ちゃんもいいナリをしてら。あんだけのドレスなら、さぞかしいい値段がつくだろうよ。お嬢ちゃん自身もなぁ」
「違いねえ」

 と盗賊その八が同意の声を上げた瞬間だった。

「リリアンを視界に入れるな。穢れるだろうが」

 ぎゃあ!という悲鳴と、キンと高く鋭い音が響いた。同時に盗賊その七と八がその場に崩れ落ちる。目が、頭が、と叫ぶその七と八に他の盗賊が駆け寄ると、なんと目の周り一帯に氷が纏わりついていた。慌てて剥がそうとするが触れるだけで指先が凍るほど冷たい。思わず手を引っ込めると、その指先にも氷の膜ができている。

「な、なんだこりゃあ!」
「てめえがやったのか!?」

 盗賊共がアルベルトを振り返る。アルベルトは不機嫌そうに、

「当たり前だ。貴様らの視界にリリアンを入れるわけにはいかない。リリアンが穢れる」

と、そう言って、盗賊共の視界にリリアンが入らないよう、リリアンに重なる位置に動いた。
 盗賊達は「リリアン?」「リリアンって誰?」と囁き合っているが、やがて遠くにいる少女のことだと合点がいったようで「遠くにいるお嬢ちゃんを俺たちが見るとお嬢ちゃんが穢れるってことかぁ」と言うと、一斉にアルベルトを見る。

「ってことはつまり、俺たちが汚ねえってことか!」
「誰が汚物だ、誰が!!」
「そこまでは言っていないが、自覚があるなら何よりだ。汚物は排除する」
「あぁん!? なんでてめえがそんなことをするんだ!」
「リリアンの為だ。花畑を荒らされるのは困る」

 アルベルトが花畑、と口にしたことで盗賊共の纏う空気が一変した。カツアゲの対象だったのが、花畑からの排除対象に変わった。そうなると話は別だった。痛めつけてやって、二度と花畑に近付かないようにしてやらねばならない。それが盗賊共の仕事だ。

「そうかい、じゃあ、有り金全部置いて、とっとと消えな。野郎共、やっちまえ!」

 しれっとカツアゲもしようとする盗賊その一の号令に、その他の盗賊が一斉にアルベルトに襲い掛かる。後方からリリアンの「お父様!」という声援を受けたアルベルトは——実際にその声は悲鳴だったのだけれど——やる気を一気に爆発させた。

(リリアンが私を応援している……! よし! 格好良いところを見せるチャンスだ!!)

 アルベルトのやる気は魔力の奔流となった。体内の魔力が昂った精神の影響を受ける。瞬間、溢れ出て周囲に満ちた。濃度が極めて高くなった魔力が可視化される。青く輝く魔力はアルベルトを中心に広がり、瞬く間に周囲の熱を奪った。

「な、なんだ!?」

 可視化された魔力の輝きそのものが視界を遮る。その一瞬をついてアルベルトは集中力を高め魔法を行使した。周囲の水分を適度に集めて更に熱を奪う。
 瞬きする間もない、急に現れた靄に息を飲んだ次の瞬間には、盗賊たちは首から下が凍りついて身動きできなくなっていた。
 なにが起きたのか理解できない盗賊たちは氷を壊そうと身じろぐ。が、氷はびくともしない。そうやっているうちにパキパキと音を立てて更に氷は厚くなっていく。

「どうなってるんだ!」
「さ、寒い……! なんだこれはぁ!」

 冷たいだの寒いだのと騒ぎ立てる盗賊共に、アルベルトは

「口も塞いだほうが良かったか? うるさいな」

と、口も塞ぐべきか悩んでいた。
 そうこうしているうちに、異変に気付いた残りの盗賊がこちらへ来てしまった。作業員たちを乱暴に突き飛ばし、「てめえ」「なにやってる」「なにしやがった」と口々に叫びながら走ってくる。だいたい二十人くらいだろうか。
 先陣がアルベルトを間合いに捉えた。足の速い男だったようで、その勢いのままに棍棒をフルスイングする。大振りだったから余計なことをするでもなく、アルベルトはひょいっと後ろに下がってそれを避けた。棍棒は、そのまま横の盗賊の氷漬けにヒットした。ぐしゃりと鈍い音がしたが、棍棒が根元からへし折れる音だったようだ。氷漬けのほうが「いてぇ!」と叫ぶ。氷にはヒビひとつ入っていない。

「なにやってんだ馬鹿!」
「あ、あいつが避けるから……ちきしょう、手が痺れて……」

 盗賊の氷柱にフルスイングしたほうの盗賊が手の痺れに悶絶している間に、アルベルトはそいつを同じように氷漬けにしてやった。
 その後も続々と雄叫びを上げながら盗賊が襲いかかってくる。
 振り回される棍棒を最小限の動きで回避してやれば、何度目かで相手がバランスを崩す。その際に棍棒に触れて凍らせる。前方が急に重たくなり、バランスを崩していたせいで前のめりに相手は倒れた。
 突進してきた男に足を引っ掛けてやる。倒れ際に腕を棍棒を握り締めたままの状態で凍らせてやれば、顔面から地面に突っ伏した。その男に躓いた別の男はその隙に氷漬けにする。
 野郎、という声が聞こえたのでちらりと見れば、棍棒を二本、両手に構える盗賊の姿が。正直言って武器を増やしたところでなんの利点もないのだが、本気でアルベルトを排除しようとしているらしいことはわかった。その盗賊と隣のもう一人が同時に駆け出す。同時攻撃で回避させないつもりのようだ。

「面倒だな」

 たくさんいて手間だし、なにより時間がかかる。あと、うるさい。すごく。

「リリアンとのお散歩時間が減るだろうが!」

 アルベルトの周囲に冷気が漂う。すると、地面に雪がうっすらと積もったような、白い光が落ちた。やがてそれは盗賊達の足元まで広がっていく。そうなるとアルベルトの周囲の冷気は強まり、実際に雪を降らせていた。強い日差しの快晴の中で、である。
 足元から感じる猛烈な冷気に、盗賊の一人がぶるりと身を震わせた。

「……魔法だ」

 雪の結晶がきらきらと陽の光を反射させる。それは、ダイヤモンドダストと呼ばれる現象によく似ていた。

「これは魔法だ! でなきゃこんなこと、できるもんか!」

 盗賊その十七くらいが叫ぶ。

「みんな、こいつから離れるんだ、早く!」

 でないと——という言葉ごと、次の瞬間盗賊その十四から残りが、ごう、と巻き上がる雪に覆われる。そしてぱきりと凍った。足元から伸びる氷柱が口元まで伸びて盗賊達の自由を奪う。
 そうして身動きのできる盗賊は一人も残らなくなった。
 その頃にようやく作業員が呼んだらしい警備兵がやってきて、異様な氷の彫刻が生えている畑を前に困惑した様子だった。漂う雪は盗賊達を凍らせた後、風で巻き上げて消した。冷気も一緒に巻き上げれば、あとに残るのはちょっと乾燥した空気だけ。

「後は頼む」

 アルベルトは一言警備兵に告げると、リリアンへ向かって駆け出した。

「ええ、はい。……えっ。あの、これっていつ解けるんですか!?」

 警備兵の叫びが響く。結局アルベルトがその問いに答えることはなく、氷が解けるまでの間、盗賊達は数時間放置されたのだった。

 リリアンの元に辿り着いたアルベルトはとてもいい笑顔だ。格好良いところを見せることができたとうきうきしている。そのせいで、足取りも非常に軽かった。

「リリアンが応援してくれたから、つい張り切ってしまったよ」
「応援したわけではないのですが……ともかく、お怪我がなくてなによりですわ」

 はあ、と息を吐くリリアンは、胸に置いた手を下ろす。危なくはなかったが、荒事を目の当たりにしたものだから驚いたのだろう。大丈夫だと、そう思いを込めて、アルベルトは更に笑みを深める。

「さ、問題も解決したことだし、散策を続けようか。あちらはまだ行っていなかったな」

 その顔から伺えるのは喜びだけ。それもそのはず、もうすでにアルベルトの頭には、しょうもない悪党共のことは綺麗さっぱり消えていたのだ。
 あとはもう、着飾ったリリアンと一緒に花畑を回って、花を鑑賞するリリアンを心行くまで堪能したアルベルトだった。


◆◆◆


 リリアンとアルベルトの出発の、二日前。ヴァーミリオン家嫡男のレイナードは、一足先にプレート伯爵家を訪ねていた。先方にはあらかじめ前触れの手紙を送っている。その返答が来ての来訪だ。
 ヴァーミリオン家としては、過去に一度面識がある。庭の整備に、近場で一番の花苗の生産地ということで苗の購入を申し入れた。とは言えそれ以降は庭師がやり取りをしているから、親交が深いかと言われるとそうでもない。リリアン個人が令嬢と親しい、それくらいだ。
 レイナードは伯爵家とは面識がない。伯爵家の子息とは歳も違うし、社交界でも挨拶をしたことがなかった。それで、今回の来訪には伯爵家がたいへん驚いていた。さもありなん、といったところだ。
 手紙は父アルベルトから、伯爵家の当主宛に送られた。要件は、花見をしたいから行くけれど、挨拶は必要ないということ。娘から不届き者が畑を荒らしていると聞いていること。仮に公爵家の者がそれに巻き込まれても、伯爵には責任はないということを綴ったと聞いた。ならばなぜレイナードが伯爵家を訪れるかというと、それらとは別件で話があるから、レイナードの話を聞いてほしいという内容も織り込まれていたからだった。
 やや緊張した面持ちの伯爵と挨拶を交わし、レイナードは早速手にしていた資料を執事に預ける。

「あの、そちらは?」
「これは私個人が集めたものです。きっと助けになると思います」

 はあ、と眉間に皺を寄せる伯爵だったが、すぐにはっとなる。まさか、という言葉の先をレイナードは遮った。

「出所は不明、ということに。その方が都合がいいと、父から言われています」

 レイナードの父、公爵当人からと言われてしまうと、伯爵にはこれ以上追及できない。もともと公爵家というのは雲の上の方々だ。公爵家の御令嬢が懇意にしてくださっているが、それはたまたま、娘ヴァイオレットと話が合ったから。その気になればそんなこと無かったことにできる、それが公爵家である。
 それ以上触れることなく、拝見します、と伯爵は資料を受け取って目を通す。と、次第にその表情が変わっていく。眉間の皺がぎゅぎゅっと深くなる。

「……なるほど。わかりました、協力しましょう」
「助かります」

 いいえ、と伯爵は首を横に振る。

「助かるのはこちらの方です。ああいや、協力して頂くのもこちらですね。なんとお礼を言ったらいいのか」
「お気になさらず。リリアン……妹が望んだことですので」
「妹御には、娘がお世話になっているとか。しかしそれだけです。それだけで、これだけのことをして頂くわけにはいかないのですが」

 レイナードは伯爵の言葉に首を傾げた。

「妹が、望んだこと。それ以上の理由が必要ですか?」

 きょとんと言われて、伯爵は困惑した。

(ええっ? ヴァーミリオンの至宝、月の宝玉と言われるリリアン様が望まれたというのが肝要ということか? それほどリリアン様は心を痛めていると……? ううむ、よくわからんが、理由はともあれお助けくださるというのなら、受けるしかない。断るものでもなし、断れるものでもなし、だものな)
(リリアンは花畑をこれ以上めちゃくちゃにされたくないと思っている。だから止める、それ以上になにか理由がいるか?)

 うーん、と各々がそれぞれ考えるが、考えてもよくわからない。
 伯爵がレイナードの動機に気付くはずもなかった。おそらくきっと、ヴァーミリオン家の者じゃないとわからないだろう、家に利点が無ければ動かないのが本来の貴族の行動概念であるからして。
 なので伯爵は深く考えるのはやめることにした。

「と、とにかく承知しました。では、手筈通りに」
「ええ。よろしくお願いします」


 こうして準備は整った。後はアルベルトとリリアンが到着して花畑を見物している時に、偶然ならず者が作業員と揉めている場に遭遇すればいい。ならず者達の行動をある程度操作する為に、中断していた作業を少しずつ再開して、林に潜む人数が増えるよう細工する。それだけで良かったのでかなり簡単だった。
 花畑で連中を捕まえた後は、襲われたのが公爵家当主のアルベルトであったことからヴァーミリオン家が調査を行った。
 盗賊まがいのことをしていたのは、アルベルトの見立て通り冒険者として登録のある者達だった。素行が良くないからと仕事を貰えずにいた連中で、報酬が悪くなかったことから、観光客を脅す仕事を秘密裏に引き受けたと語っていた。花畑を荒らし、作業の妨害をすることはついでに行ったという。今回のことで、完全に冒険者の登録は抹消されることになった。
 ならず者が供述したことで、そいつらに依頼を出していた人物も明るみに出た。伯爵が予想していた商売敵が関与していたことがわかったのだった。
 それとは別に、その商売敵の不正の証拠も見つかった。脱税、帳簿の誤魔化し、取り扱い品のすり替えなどなど。それもあって、その商家は破産した。かなり悪どいことをしていたのでもう二度とこの国で商売はできないだろう。レイナードが持ってきた資料が役に立った。
 動機は伯爵に対する個人的な怨みによるものだった。きっかけはささいなもの。取引があった時に、先方が伯爵家を選び、その取引がたまたま莫大な利益をもたらした。成功を妬んだ結果だということだった。いい迷惑だ。
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