世界最強の公爵様は娘が可愛くて仕方ない

猫乃真鶴

文字の大きさ
100 / 144
南の国編

22.お父さんは南の国でも暗躍する④

しおりを挟む
「私に従え。いいな」
「は、はひっ」

 ボスとその周囲を焼いたアルベルトの眼力は鋭い。震え上がったボスの口から息が漏れた。それが返事のようになってしまったのだが、呼吸すらままならないボスは弁明もできない。合意したわけではない、違うと首を振ろうにも強張った体は満足に動かず、納得するアルベルトを止められなかった。

「スリや泥棒の居る街はリリアンには相応しくない。そういう連中は一人残らず抹消しろ。貴様らの手でな。ただしその痕跡は残すな。街並にも影響を出すのは許さん。景観は最善を維持しろ」
「お、俺達が?」
「出来ないと言うのならそれまでだ。死ね」

 目の前の冷たい魔力が勢いを増す。氷の刃が突き刺さるような感覚は、一気にボスの体温を下げた。さっきまで焼かれていたというのに、今は凍えるくらい空気が冷え切っている。
 このままでは本当に殺される。彼もまた荒事の中を潜り抜けてきた身だ、そういう瞬間は無数にあった。
 だが、今はどうだろう。これは対抗すべき、いや、対抗できるものではないと直感する。彼の目の前にあるのは、自然災害とかそういう類いのものだ。それから逃げる術はなく、ただ通り過ぎるのを待つだけ。いや、逃れようと思えば、自然災害は避けられる。その範囲から遠く離れればいいだけだ。だが今彼の体は強張っていて動かせない。
 何より、目の前の男は自分を逃したりはしないだろう。逃げた先まで追ってくる……だけでなく、その間もずっと見張られて、一瞬足りとも彼の視界から逃れられないに違いない。
 そういう絶対的な力の存在を、この時初めて感じた。反射的に従わなければとボスは跪く。焦げた床に額を擦り付けた。

「あ、や、やりますっ、やらせてくださいっ!」
「始めからそう言え」

 呆れを乗せて表情を崩し、アルベルトは舌を打つ。

「景観に屑たる貴様らが入るのは駄目だ。リリアンが来るまではまあ許してやるが……リリアンの視界には決して入り込むな。労働に対する報酬は出してやろう。報酬があるのなら、こなせるよな?」

 疑問系ではあったが、その言葉は命令だった。断ればこの場で首を刎ねられる、そういう確信のようなものが生まれた。

「……承りました……」

 それでもう、従う以外の選択肢がボスの中から消滅していく。項垂れるように床に頭を擦り付ける姿を見て、うむ、とアルベルトは頷いた。
 アルベルトがずっと不機嫌なのには理由があった。

(さっさと済ませてリリアンの元へ帰……じゃない! 少しでも早くリリアンが散策に出られるようにしなければ。レイナードがああ言っていたからには退屈はしていないだろうがいつまでも待たせておくわけにはいかない。おのれ、もどかしい……! こんな事に時間をかけなければならないとは。ああ、リリアンの喜ぶ姿が早く見たい……)

 瞼に描くリリアンの姿。その鮮明さがだんだん薄らいでいたのだ。
 組織の規模が大きく、即日すぐに完了というわけにいかなかった。拠点に乗り込み、ボスを屈服させたはいいが、ここからまた更に時間が掛かるだろう。ソロントの街に赴いている事もあり、ろくにリリアンと会話できていない。楽しみを待たせてしまっている、という負い目もあって、アルベルトの表情は硬いままなのだ。
 それがどう捉えられるかなどこれっぽっちも考えていない彼は、そのままの顔でマフィアの拠点を闊歩する。毛羽立つ魔力には殺気が籠っているので、知らずのうちに周囲を威圧していた。ぐさぐさと魔力を突き刺された構成員達は震え上がり、脅威を遠ざけんと奮闘する。結果、瞬く間にアルベルトの要求は広がって行き、街に残る構成員達は全力で治安保持に勤しんだ。
 街からはスリ、強盗が消え、少しでも観光客と揉めるような輩はマフィアの残党がすぐに駆けつけ締め上げる。詐欺紛いの商売をしていた店は存在を抹消され、新たに出店する場合でも厳しく審査が入るようになった。もはや自警団となりつつある旧マフィアはベンジャミンによって更なる教育を施され、規律を遵守し街をクリーンに保つ役目を全うする組織へと生まれ変わった。
 マフィア崩壊からたったの二日しか経っていないのにである。常にアルベルトが街のあちこちで目を光らせていたとは言え、異常な早さであった。
 だが、これで万事解決だ。元構成員達に役目を忘れるなよと厳重に言い渡したアルベルトは、意気揚々とリリアンの元へ帰った。

「リリアン、待たせてすまなかった。街の状態が整ったから、もういいぞ」
「まあ。お父様、お疲れ様でした。こちらは準備が終わっていますので、早速ヘレナ様に声を掛けますわね」
「うん。そうするといい」

 そう答えるアルベルトは実ににこやかだった。期待に胸を膨らませるリリアンの姿に同調しているのだ。直後、そう言えばヘレナが同行者だったのを思い出し、一瞬真顔になる。だがリリアンが楽しみにしていたのは事実なのですぐに切り替え、出発の準備を手伝う。
 今回のリリアンの希望は「新しくできた友人とのお出掛け」だ。本当に、非常に残念でならないが、そこにアルベルトが加わる事はできない。だが、散策を楽しんでいるリリアンの姿は心に刻んておきたい。
 そんなアルベルトの取った行動は、単純なものだった。

「リリアンお姉様、どう、ソロントの街は! なかなか壮観でしょう?」
「ええ。ヘレナ様がおすすめされるだけありますね。とっても素敵です」

 護衛騎士や侍女を従え、リリアンとヘレナは待ちに待った街歩きを楽しんでいる。気ままに店先を覗き込むヘレナ、それに付き合うリリアン。彼女達の行動が一切阻害されないのは、街中に害になる者がいないからだ。騎士達が警戒していたが、それ以上に元構成員があちこちに忍び目を光らせる。アルベルトはその中に混ざり、遠くからリリアンを観察したのだ。
 目立つ銀髪は帽子で隠し、物陰から半分だけ顔を覗かせる。歳下の、できたばかりの友人と共に散策するリリアンは、ただでさえ美しい瞳を更に輝かせていた。
 眩しい。あまりにもまばゆい。リリアンを中心に光っている、いや、リリアンが太陽のように輝きを放っている。

「すすす素晴らしいッ……!」

 ぎちりとアルベルトの握り締めた手が音を立てる。

「自身が楽しんでいるのはもちろんだが王女がリリアンを誘導するのを楽しんでいる、その姿もリリアンは喜んでいる……! ああ、素晴らしい笑顔、まさしく太陽ッ! なんという輝きだ、最高級のドレスも宝石も無くあんなに輝くだなんてさすがリリアン、この世の全てを照らすかのようだ! 待たせてしまったのに、あ、あんなに楽しそうにして……いや待て、もしかすると期待していたからこその歓喜……!? つ、つまり、この日を楽しみに待っていた、それがスパイスになった……?」

 だとしたら、とアルベルトは目を見開いた。

「私の行動も、リリアンのお出掛けに一役買ったという事か!? り、リリアンの為になっていたなんて……! か、感動だ。感激だ。リリアン、お前に楽しんで貰えて、私は嬉しい……!」

 感激で胸を詰まらせるアルベルトの口からは、自然とリリアンへの想いが溢れ出ていた。普段ならここまで出て来ないのだが、久しぶりにまじまじと見た(約三日ぶりの)リリアン、しかもとっても楽しげな姿に箍が外れてしまったのだ。
 声はあまり大きくない。距離があるので、幸いにもリリアン達のところへは届いていないようだが、側で控えるベンジャミン達にはばっちり聞こえている。ほとんど見た事のない主人の姿に、デリックは目を丸くした。

「声に出てますね」
「聞いてはいけませんよ。これはお嬢様への言葉ですからね」
「……っす」

 ベンジャミンの言葉にデリックは短く答える。ボーマンも、声には出さないが頷いていた。

「お嬢様との時間ってわけっすね……立ち入っちゃまずいわ、殺される」

 それが聞こえたらしい元構成員はぶるりと身を震わせる。デリックの言葉が誇張でもない事を知っているからだ。
 全力で耳を塞ぐ周囲だったが、アルベルトの目にはそんなものは入っていない。この時の彼の世界にはリリアンしか存在していなかった。
 が、隠して抑えてはいるものの、当のリリアンにはアルベルトの存在は筒抜けだった。ヘレナは気付いていないようだが、熱烈な視線を向けられるのに慣れたリリアンは、父親がこっそり影から見守っているのを察知していた。姿は見えないけれども、あの角に居るのでしょうねと、窓ガラス越しに見てリリアンは微笑む。

「リリアンお姉様、なにか気になるものでもあった?」

 ヘレナは、リリアンが笑ったのが、店先を覗いたからだと思ったようだがそうではない。でも本当のところをヘレナに伝えるつもりはなかった。

「いいえ。とっても楽しくて嬉しいなと思ったら、つい」
「まあ! あたしもよお姉様。ね、次はあっちを見ましょうよ」
「ええ」

 リリアンは更に笑みを深め頷く。軽やかにドレスの裾を靡かせる可憐な姿にアルベルトが悶絶するのだが——建物の向こう側で行われたものなので、リリアン達にその奇行が知られる事はなかった。


 後日、組織は騎士団に引き渡され、傘下となる事で、王国公認の自警団になった。自警団を管理する事になった騎士は「調教された猟犬の集団のようだ」と、その統治力に驚いたという。
 統制はとれているものの、元はマフィアだ。しかも組織の大半はそのままの人員で稼働しており、それを危険視する声が当然起きた。さすがにボスは処罰されているが、捕えられていてもアルベルトへの忠誠があるからと強く組織へ戻る事を希望した。それは出来ないのだと説明しても聞かず、抑えるのが難しい。騎士団が手を焼いているという報告を受けたヒースは頭を抱えた。

「なあ、アルベルト。もっと穏便に……いやマフィア相手に穏便にとか無理だけど、もっと別の方法があったんじゃないか? すっごい大変なんだけど、これ」
「知るか。お前の管理が甘いからだろう」
「そんな事言ったってさぁ~~~」

 古くからのマフィアとなると、ただ規模が大きいだけではない。取引相手として貴族と繋がっている場合が多い。古参のマフィアとなると、繋がる家門はひとつやふたつでは済まないだろう。
 ヒースが恨みがましくアルベルトを見るのはそれが理由だ。ボスの証言、押収された品、そこからの調査結果がヒースの手元にある。政治バランスが崩れそうな内容なので、正直見たくもないものだ。これができた原因、それを起こした人物を前にすれば一言言いたくもなるというもの。しかもその理由が、街歩きの為なのだ。いくら安全を危惧してとは言え、やり過ぎるに感じる。
 が、アルベルトは不快そうに眉を寄せ、ヒースを一瞥した。

「王女が出掛けている街だろう。野放しにしておく理由が分からない」
「潰す理由が無いんだよ。マフィア同士のパワーバランスだってあるしさ、そう簡単にはいかないんだよ」
「それで連中を放置していると? とても娘を持つ親とは思えんな」
「……うん……」

 前提がまるで違う。というか、起点が違うという表現の方が正しいか。これはもう何を言っても無駄だなと、ヒースはそれ以上は言わず口を噤んだ。

 ヒースは知らない。アルベルトが、リリアンが住むのに危ないからと、トゥイリアース王国王都ミリールの不穏因子全てを取り除いた事を。
 ミリールにはスラム街というものが存在しない。マフィアも居ない。そういうのは正しい形にして国に組み込まれている。スラムはただの下町に、マフィアは自警団に。そうやって綺麗にしたのだ。
 ただその時も王が頭を抱えていたので、アルベルトとしては見慣れた光景だった。

「あのねリリアンお姉様、他にもおすすめの街があるのだけど」
「まあ。どんなところかしら」

 そこへ、ヘレナとリリアンの会話が聞こえてくる。存分に楽しんだ二人は、さっそく次の予定を立てているようだ。
 楽しげな様子にアルベルトが聞き耳を立てている。もしかしなくても、どこの街なのか特定しようとしているのだろう。

「か、勘弁してくれ~!」

 何度目かの、ヒースの悲痛な叫びがこだまするのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する

ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。 きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。 私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。 この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない? 私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?! 映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。 設定はゆるいです

公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

谷 優
恋愛
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。 お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。 ただ、愛されたいと願った。 そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。 ◆恋愛要素は前半はありませんが、後半になるにつれて発展していきますのでご了承ください。

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

異世界に転生したけど、ボクは何をすればいい?まずは生活を快適にすることから始めようか?!〜塩味だけの世界に前世の知識で美味い料理作ってく〜

あんり
ファンタジー
下門快斗は20歳で事故に遭い、ちょっぴり残念な女神様に異世界転生のチャンスをもらった。 新たな名はカイト・ブラウン・マーシュ。マーシュ辺境伯家の嫡男として生まれ変わるが、待っていたのは「塩味だけの料理」しかない世界!? 「そんなの耐えられない!ボクが美味しいご飯を作る!」 前世の知識で和食や沖縄料理を振る舞えば、パパ、ママたち異世界人は驚き、感動に打ち震え、夢中になる。 さらに女神様からは、全属性魔法+新たな魔法を作れる“創造魔法”の祝福を授かり、どんな傷も癒す聖水に変わる魔法のペットボトルを手にし、ついには女神の使いである幻獣・白虎と契約してしまう! 美味しいご飯と不思議な魔法、そして仲間たちに愛されて。 笑いあり、クスッとありの“グルメ&ファンタジーライフ”が、今ここに始まる!

小さな貴族は色々最強!?

谷 優
ファンタジー
神様の手違いによって、別の世界の人間として生まれた清水 尊。 本来存在しない世界の異物を排除しようと見えざる者の手が働き、不運にも9歳という若さで息を引き取った。 神様はお詫びとして、記憶を持ったままの転生、そして加護を授けることを約束した。 その結果、異世界の貴族、侯爵家ウィリアム・ヴェスターとして生まれ変ることに。 転生先は優しい両親と、ちょっぴり愛の強い兄のいるとっても幸せな家庭であった。 魔法属性検査の日、ウィリアムは自分の属性に驚愕して__。 ウィリアムは、もふもふな友達と共に神様から貰った加護で皆を癒していく。

元王城お抱えスキル研究家の、モフモフ子育てスローライフ 〜スキル:沼?!『前代未聞なスキル持ち』の成長、見守り生活〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「エレンはね、スレイがたくさん褒めてくれるから、ここに居ていいんだって思えたの」 ***  魔法はないが、神から授かる特殊な力――スキルが存在する世界。  王城にはスキルのあらゆる可能性を模索し、スキル関係のトラブルを解消するための専門家・スキル研究家という職が存在していた。  しかしちょうど一年前、即位したばかりの国王の「そのようなもの、金がかかるばかりで意味がない」という鶴の一声で、職が消滅。  解雇されたスキル研究家のスレイ(26歳)は、ひょんな事から縁も所縁もない田舎の伯爵領に移住し、忙しく働いた王城時代の給金貯蓄でそれなりに広い庭付きの家を買い、元来からの拾い癖と大雑把な性格が相まって、拾ってきた動物たちを放し飼いにしての共同生活を送っている。  ひっそりと「スキルに関する相談を受け付けるための『スキル相談室』」を開業する傍ら、空いた時間は冒険者ギルドで、住民からの戦闘伴わない依頼――通称:非戦闘系依頼(畑仕事や牧場仕事の手伝い)を受け、スローな日々を謳歌していたスレイ。  しかしそんな穏やかな生活も、ある日拾い癖が高じてついに羊を連れた人間(小さな女の子)を拾った事で、少しずつ様変わりし始める。  スキル階級・底辺<ボトム>のありふれたスキル『召喚士』持ちの女の子・エレンと、彼女に召喚されたただの羊(か弱い非戦闘毛動物)メェ君。  何の変哲もない子たちだけど、実は「動物と会話ができる」という、スキル研究家のスレイでも初めて見る特殊な副効果持ちの少女と、『特性:沼』という、ヘンテコなステータス持ちの羊で……? 「今日は野菜の苗植えをします」 「おー!」 「めぇー!!」  友達を一千万人作る事が目標のエレンと、エレンの事が好きすぎるあまり、人前でもお構いなくつい『沼』の力を使ってしまうメェ君。  そんな一人と一匹を、スキル研究家としても保護者としても、スローライフを通して褒めて伸ばして導いていく。  子育て成長、お仕事ストーリー。  ここに爆誕!

獣舎の全魔獣を管理していた私を、無能呼ばわりで解雇ですか?じゃあ好き勝手に旅をします。困っても知りません。

藤 ゆみ子
ファンタジー
光属性の魔力を持つフィーナは聖女の一人として王宮に就職するが、一向に治癒魔法を使うことができなかった。聖女として働けないと解雇されるが、帰る家なんてない。  そんな時、日々の癒しのためにこっそり行っていた獣舎の魔獣たちが騎士団長グランディに頼み、獣舎の掃除婦として働くことに。  実はフィーナの持つ魔力は人ではなく、魔獣や魔物に使えるものだった。  無自覚に使い魔たちを癒していたフィーナだったが、グランディに気に入られていることに不満を持つ王女に解雇されてしまう。  フィーナは王女の命令なら仕方ないと王宮を出る。  今だ見たこともない魔獣と出会うため、かつての親友だった魔獣のキュウと再会するために旅に出ることにするが、思わぬ事件や問題に巻き込まれていく。  一方でグランディや魔獣たちはフィーナを取り戻すため奮闘する。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...