世界最強の公爵様は娘が可愛くて仕方ない

猫乃真鶴

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生誕祝い編

幕間 朝焼けの再興は琥珀の輝き〜銀朱の爆薬を添えて〜⑤

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 コーラルは馬車から降り、鼻歌混じりに玄関へ向かう。
 と言っても入ろうとしている屋敷は慣れ親しんだサングローのものではなく、なんとヴァーミリオン家の別邸だ。
 前もっての訪問は伝えていないが、問題ないだろう。なにしろコーラルは、婚約者となるレイナードに会いに来ただけなのだから。
 だと言うのに、侍女を従えるコーラルが扉の前まで行くと、門番らしき男達に遮られた。
 途端コーラルの眉間に皺が寄る。

「なんなの、お前たち。そこを退きなさい」
「来訪のご予定の無い方はお通しできません。お戻りを」
「わたくしに向かって、そんな事を言うの?」

 ぎり、とコーラルの奥歯が鳴る。さっき屋敷を出る時も、執事が同じことを言っていたのだ。それを思い出した。
 どうして彼らがそう言うのか、それを考えてはっとした。そうだ、彼らはコーラルがレイナードの婚約者になったと知らないのだ。なにせ、クラベルをレイナードに相応しくないようにしているのは、秘密裏にやっている。
 一昨日護衛騎士達が出発して、この時まで露呈していないのだ。作戦は上手く実行されているに違いない。だからこそコーラルはこうしてヴァーミリオン家にやって来たのだし、上手くいっているのなら教えてやっても問題ない。
 コーラルは不機嫌な顔を一変、にこやかなものにする。つんと顎を上げた様子はいかにも得意気で、門番は返ってそれが怪しく見えた。

「よく聞きなさい、わたくしは」
「そこで何をしているんだ」
「レイナード様!」

 キィ、と扉の開く音と同時、聞こえた声にコーラルが歓声にも似た声を上げる。
 駆け寄ろうとしたコーラルを、門番達が間に入るように抑えた。無礼な、とコーラルが叫んでいるが、どちらがだ、とレイナードは冷ややかな視線を向ける。

「ここをどこだと思っている? サングロー家の屋敷じゃないんだ、君がやっているのは不法侵入だぞ」
「なにを言っているの、わたくし達は婚約者じゃ……」

 そんなレイナードとは対照的に、コーラルはうっとりとした視線で扉の方を見ていた。頬は桃色に染まっていて恍惚としている。
 なにせ、本日のレイナードはこれまでのラフな格好とは違い、ぴしっと着飾っていたのだ。
 前髪は後ろに撫で付け、緩く三つ編みにした髪は肩の前に。三つ揃えには彼の髪色を取り入れたのか、金糸で刺繍が施されていた。
 実にコーラル好みだ。ほう、と息を漏らして見入っていると、開いている扉の向こうに煌びやかな衣装が見えた。コーラルが纏っているものより格段に質がいいドレスが、歩みに合わせて揺れている。
 そんな上質のものを纏える者は限られる。やはりレイナードの妹だろうかと注視していると、どうもおかしい。想像しているより、いくらか輝きが少ないような——。
 次第に近付いてくる令嬢の姿に、コーラルの目が見開かれていく。

「どうしてあなたがここにいるのよ!! それに、そのドレスは」

 扉から姿を現したのは、リリアンではなくクラベルだったのだ。
 思いもよらぬ人物の登場はひどくコーラルを混乱させる。
 クラベルは今頃、国境付近で酷い目に遭っているはずだ。それなのに、どうして今、レイナードの隣にいるのか。
 品の良い上質な空色のドレスは、彼女がレイナードの婚約者だから贈られたものに違いない。だったらあれは、本当なら自分に贈られていたはずでは? だって、レイナードの婚約者には、自分がなるのだから。
 取り止めもなく溢れてくる言葉はあっても、それがコーラルの口から出ることはなかった。混乱のあまり、コーラルはなにをどう紡いでいいのか分からなくなっていたのだ。
 そんな彼女を、扉の前、数段上から見下ろす形でいるクラベルとレイナードは、腹の底から怒りを覚えていた。

「リリアンとお茶会の練習をしているところへ来るなんて、本当にいいタイミングね」
「せっかく、リリーが綺麗に着飾っているのに……よくも邪魔してくれたな」

 クラベルはにこやかに笑っているし、レイナードは極限まで表情が消えている。対照的な二人から感じるのは、同じ熱量の怒気。
 せめて数刻早いか遅いかすれば、正式な形を模したお茶会の練習、という口実でおめかししたリリアンと楽しくお茶をできたというのに。コーラルの登場で、それがだめになってしまった。
 無論これは、心配そうにするリリアンを元気付けるためのもので、美しく着飾った愛らしいリリアンを堪能したいから、などという身勝手な思いからでは決してない。
 せっかく、沈んでいたリリアンの表情が明るいものに戻ったというのに。
 二人の怒りは収まらず、クラベルはともかく、レイナードの魔力がコーラルの周囲に広がってる。彼女と彼女の侍女の、ドレスの裾に泥が附着していた。気付いた門番達が払っていたが、コーラル達からしてみれば急に衣類に触れられたようなものだ。不服そうに「なにをするの」と声を上げている。

「なんなのよ、何だって言うの? 離しなさいってば!」

 不安と不満からかコーラルが叫ぶ。家人が出てしまったからには内密に済ますのも無理なので、騎士が集まってきた。それが余計にコーラルの不安を煽った。どうしてこんな事になっているのか、理解しているか怪しいが、只事でないのは実感したようだ。顔色がどんどん悪くなっていく。
 このまま送り返しても良かったが、レイナードとしてはもう許す気はない。サングロー家に殴り込み、いや抗議しに行こうか、と思ってるところへ、見慣れた馬車がやって来た。
 かなり早い戻りだが、当然だろうな、とレイナードは正面を空けるよう指示を出す。
 空いた場所へ停まる馬車の御者はベンジャミン、停まるなり男を蹴り落としたのはアルベルトだ。
 どしゃりと音を立てて地面に落ちた男は後ろ手で縄をかけられている。呻き声を上げた男の頭を、後方から追いついたデリックが掴んで上げさせた。

「セト!」

 その男の顔を見たコーラルが名前を呼ぶ。
 回転する石に轢かれ、泥まみれになった顔は今は赤黒く腫れ上がっている。それでも判るのなら、この男は本当にコーラルに近しいのだろう。

「わたくしの護衛騎士に、なんてことを」
「ほう。貴様の身内で間違いないんだな?」

 にたりと笑みを浮かべ、アルベルトは馬車から降りた。
 それが分かれば充分だ。だがコーラルの方は足りないらしい。ギッときつくアルベルトを睨んでいる。

「こんな真似をして、いくらヴァーミリオン公でも許されると」
「そっくりそのまま返してやろう、躾のなっていないクソガキめ。うちの馬車を襲うよう指示を出したのは貴様だな?」
「な、なんの事」
「とぼけるな。まあ、認めないなら認めないでもいい。すぐに喋りたくなるだろうからな」

 アルベルトが指示を出すと、ベンジャミンが「失礼します」とコーラルを拘束する。侍女達やコーラルから即座に抗議する声が出たが、それらはまるきり無視された。
 コーラルは新たに出した馬車に、セトは乗せられていた馬車に引き上げられる。

「父上、僕も行きます」
「は? 必要ない」
「そういうわけには。きっちり絞めないと。リリーとのお茶会を邪魔した罪は重い」
「何!? お前のその格好、まさか……リリアン、おしゃれしているのか!?」

 途端、アルベルトはくわっと目を見開く。今のレイナードの姿に合うとなると、かなり正装に近い。
 アルベルトでさえ滅多に見られない、着飾ったリリアン。今日はクラベルも滞在しているから、いっそう華やかにしているかもしれない。いや、逆に大人びたシンプルな装いか? アルベルトの想像力は記憶からまだ袖を通していないドレスの一覧を引き出し、次々リリアンに着せていく。
 その姿は実に素晴らしいものばかりだが、目の前のレイナードはアルベルトを差し置いて、すでにリリアンの姿を見ているのだ。腹立たしい。

「私の居ない間に勝手な真似を」
「リリーの為に必要だったんです。それよりもさあ、早く行きましょう」
「離せ! 私もリリアンを見たい!」
「また後でじっくり見ればいいですよ」
「ふざけるな、今見たい! リリアーーーーーン!!」

 切実ささえ含んだ叫び声は、レイナードとベンジャミンの手によって馬車に押し込められ遠ざかっていく。
 魔法を使い抵抗しようとするのは、レイナードが言った「僕の髪に乱れがあるとリリーが荒事に勘付きますよ」の言葉でなんとか抑えられた。「早く終わればすぐ帰れますから」と続けると、「それもそうか」とすとんと腰を下ろす。
 その代わりに、じりじりと足元から燃やされるような魔力を感じるようになった。やる気が出て、いつでもどんな魔法が使えるよう、集中しているらしい。
 あんまりやる気になられても困るレイナードは、どう落ち着かせようか思案したが、別にやり過ぎてもいいか、とすぐに考えるのを放棄した。
 コーラルとサングロー家がどうなろうと、リリアンに悪影響はないはずだ。他ならぬアルベルトがそのように処理するはずである。なら、早く帰れることの方が重要だった。


 一方、アルベルトに同行させた部下が戻り、作戦の成功を察したアンバーは、予定通り次の段階へ駒を進めた。
 サングロー本家の屋敷に忍ばせておいた者達に合図を送る。あちらこちらで本家の騎士達を取り押さえ、あっという間に乗っ取ると、当主のグレストーンと妻のリッシェルを広間に押し込める。同時に門と玄関は全開にしておき、いつでもアルベルト達が入れるように入り口を固めた。
 ヴァーミリオン家の馬車が到着したのは屋敷の制圧が完了してから一時間ほど経ってからだった。コーラルはあえて外出させ、それから行動に出たのは、コーラル自身に罪を認めさせる為だ。それがうまくいかなかったと分かったのは、アルベルト達が広間に男達とコーラルを転がせた時だった。
 突然の出来事の連続に目を丸くするのはグレストーン。リッシェルは眉間に深い皺を刻むだけだったが、レイナードが姿を見せるとそれが更に険しいものになる。
 それが何故なのか気になったが、今はそれどころではない。アンバーはソファに座るグレストーンを見下ろし、詰め寄る。

「あんたの差し金かい? グレストーン」
「なんの事だ」

 グレストーンは狼狽えつつそう答える。態度は怪しいが、言葉に嘘は無いのだろう、戸惑いの色が濃かった。その間にリッシェルの様子も伺ったが、なんの変化も見られなかった。
 やはり、コーラルの独断によるものなのだろう。

「コーラル。あんたなんだろう、馬車を襲えと命じたのは」
「な、なんのこと?」
「しらばっくれるんじゃないよ。どうしてアタシがここに居るか、分かってないようだね」
「……だから、なんのことって言ってるじゃない!」
「あんたは誰にも聞かれてないと思ってんだろうけどね。はっきりとアタシが聞いてるのさ、クラベル嬢を傷物にしちまえばいいと、王城の廊下で言ったのを」
「……!」

 アンバーの言葉にコーラルは口を噤む。
 まずいと思ったのか、思い切り視線を逸らしたが、今そんな事をしても何の意味もない。
 アルベルトはふんと鼻を鳴らすと、近くに転がっている男の腹を靴の先で示した。

「それだけではない。この間抜けな顔をした男が言っていた。令嬢を悪漢が襲うのだとな。この娘が寄越した護衛のはずの男が、なぜそんな発言をする。まるで直後に襲われるような言い方だったが」
「……コーラル、どういうことだ!?」

 堪りかねた様子のグレストーンが叫ぶ。信じられない、というのが彼の本音だろう。

「ヴァーミリオン公とあの女が言ったのが事実なら、お前は傷害事件を起こしたんだぞ。公爵家の令嬢として……いや、人としてあってはならぬ事だ」
「お父様がレイナード様の婚約者になれと言ったんじゃない!」
「それで令嬢を害したというのか。恥を知れ!」

 コーラルの肩がびくりと跳ねる。人生でほとんど初めて怒鳴られたのだ、衝撃的だったのか、その後はかたかたと震えていた。
 娘を怒鳴りつけると、グレストーンはアンバーとアルベルトとを交互に見る。

「それで、そのクラベル嬢というのは、無事なのか」
「無事だ。なにせ襲われたのは、この私だからな」
「は……?」

 返したのはアルベルトの方で、それにグレストーンは目を丸くした。

「いや、この子が狙ったのは令嬢では……もしや、襲う馬車を間違えたのか?」
「いいや。この男はうちの馬車だと分かっていて襲撃したんだ。証拠ならあるぞ。表を見て来い。扉の外れた馬車がある」

 にぃ、と口角を上げるアルベルトには妙な迫力がある。グレストーンはそれを、罪を明らかにする強者の笑みと受け取り息を飲んだが、レイナードやベンジャミンは正しく意味を理解していた。あれは——悪巧みの顔だ。

「こいつらは突然、動いていた馬車を止めたんだ。急に止まるものだから額を強く打ち付けてしまった。分かるか、この私の顔に、傷が付いたんだ!」
「ヴ、ヴァーミリオン公の顔に、傷が!?」

 それにはレイナードが「どこにもそんな痕は見当たらないけど……」と呟く。

「抵抗せず大人しくしろ、さもなければどうなるか分からないと脅され引き摺り出されるところだった。偶然にも開けた扉にこいつらが当たり難を逃れたが、扉が壊されてしまったわけだ。そのままでは馬車を破壊されかねん。仕方なく反撃に出た私の恐怖が分かるか?」
「う、むぅっ……」

 そこで「ミリ単位も恐怖してなかったでしょうが」と声がした。デリックだ。

「身の危険を感じ、ついやり過ぎてしまったが、加減ができずこうなったのは仕方あるまい。あまりの恐怖で魔力を込め過ぎてしまったらしい」
「それで、あんな風に……」

 小さく「また、心にも無いことを」と言ったのはベンジャミンだった。
 三人はとても正直に、真実を口にしただけだ。ただあんまり続いたせいなのか、アルベルトがぐるりと振り返って顔を顰める。

「お前ら、さっきからうるさいぞ!」
「父上、あんまり過度な誇張は、どうかと思います」
「私は事実しか言っていないが!?」
「それは、どの辺が」
「……そう。そういう事なのね」

 騒がしい男達の中、低く響いた声があった。コーラルだ。
 深く納得したような声色だが、アルベルトの虚言でなにが理解できたのか。事実ではなく、見当はずれの思い込みから答えを導き出したらしい。勢いよく頭を上げたと思ったら、とても令嬢がするに相応しくない形相で男達を睨みつけた。

「お前たち! あの子がめかしこんでいたのは、お前たちが失敗したからなのね! わたくしはフィリルアースの令嬢を襲えと命令したのよ! 馬車を間違えただなんて、それでもサングローに仕える者なの!? セト、お前には特に目を掛けていたのに! 恩を仇で返す無礼者め!!」
「コーラル……! やはりお前が命じたのか」

 実際には、馬車を間違えたわけではない。グレストーンが勝手に勘違いしてそう言っただけで、そもそも馬車の中身が違っていたのだ。というか直後にアルベルトが否定しているのだが。
 それを確かめもせず糾弾する。しかもきっちり犯行を自白してしまっている。これではもう言い逃れはできまい。

「聞いたな」
「はい。この耳でしっかりと」

 というか、させる気のないアルベルトは、この為にわざわざコーラルを連れ帰ったのだ。証人はたっぷりいる。これできっちり処分できるだろう。リリアンの心の平穏を奪ったのだ、不足のないようにせねば、と気を引き締めた。
 成り行きを見守っていたアンバーは、重苦しく息を吐く。

「……馬鹿だ馬鹿だと思ってたけど、ここまでとはね。爺さん連中は何を考えてたんだか。グレストーン、この落とし前はどうつける気だい?」
「な、なんだと」
「あんたの家の者が、コーラルの指示で、ヴァーミリオン公を襲撃したんだ。処分されて当然だろう」
「ぐっ……!」

 グレストーンは預かり知らぬ事であったようだが、きちんと事態は飲み込んでいるらしい。顔色は悪いが、歯を食いしばって耐えているように見える。この後身に起こるであろう事も予測し、受け入れる覚悟のようだ。それはいい心掛けだが、だったらなぜ、こうならないように目を光らせておかなかったのか。それだけは本当に理解できなくて、アンバーは同情する気は起きなかった。
 そんな父親とは違い、コーラルの方は何も理解していないようで、まだキィキィ喚いていた。

「わたくしは何もしていないわ! 襲ったのはそいつらよ! 処分ならそいつらを」
「確かに実行したのは彼らだが、その責は上の者が負うんだよ。あんたの護衛騎士に、あんたが命令したんだろう? そんな事も分からないのかい」
「田舎者に何が分かるというのよ!」
「少なくともあんたよりは、道理ってのは理解できてると思うよ。連れて行きな!」

 自白もさせた事であるし、この場でこれ以上の問答は無用だ。罪を明らかにするのは王城の官吏の役目である。後はそちらに任せるべきだろう。
 グレストーンとコーラルらが拘束され連行されていく中で、リッシェルは「自分で歩けるわ」と誰にも触れさせず、毅然と部屋を出て行く。
 アンバーには無論見向きもしなかったが、彼女がちらりとレイナードに視線を向けたのをアンバーは見逃さなかった。
 コーラルが執心していたというのもあるが、実際婿としてのレイナードはなかなかの人材だったろう。能力もさる事ながら、第一王子の片腕とも言える立場にある。それだけ近ければなにかと融通が効くし、何より実家の影響力は大きい。
 この後に及んで彼の存在を確認するのは、まだ可能性が残っているとでも思っているのだろうか。
 つんと澄まして目の前を通り過ぎるリッシェルを、アンバーは呼び止める。

「リッシェル。不用意な発言は控えるか、娘の教育に手を割くかしとくんだったね。でなきゃあの子も、こんな手段は取らなかったろうに」
「……お黙り。お前の指図は受けません」
「馬鹿な娘だね」

 そう言うと、リッシェルはぎろりとアンバーを睨んだ。
 同時に歩みが止まるが、連行する騎士が先に進むよう促すと黙って従う。その時も黙っていたが、形相は男達を睨み付けるコーラルのものとそっくりだった。
 アンバーの呟きは、連行されるリッシェルを指してのものだったが、同時にコーラルに向けてでもあった。
 コーラルは確かに色々と足りていないが、リッシェルはそうではなかった。ならば当然、娘の教育が不足しているのも理解していたはずだ。だが思い返せば、リッシェルが淑女のなんたるかを説いているようなこともなく、可愛がるわりに教育する素振りも見せない。
 そんな中で、コーラルが世の仕組みを理解するのは、少し難しかったかも知れない。
 彼女なりの思惑があるはずだが、アンバーには見当もつかない。その背中をただ見送った。
 一方で、アンバーの呟きにうんうん頷いている者も居た。アルベルトだ。

「リリアンを見習うべきだ。あの聡明さに気遣い、性根も清らかで美しい。完璧過ぎる」

 それにはレイナードも頷いていた。それだけではない、ヴァーミリオン家から来た連中は、軒並み深く同意していたのだ。
 アンバーには同意は難しかったので、聞こえなかったことにした。




 後日、アンバーは再度ヴァーミリオン家を訪問した。諸々の処理がひと段落したので礼を言うためだ。
 アルベルトは当然のように「知らん、要らん」と断ろうとしていたが、レイナードが受けた。前のようにリリアンを同席させたので、アルベルトもちゃんとこの場に居る。なんとなく状況を察したアンバーは、これでいいんだろうか、などと思ったものの、他家の事であるので見てみないふりをした。
 煌びやかな一家を前に、アンバーは軽く頭を下げる。

「今回は世話になった。ありがとう、礼を言うよ。お陰で無事、追い出せる事になった」
「これから、色々大変なのでは」
「まあね。それなりの騒ぎになったから。でもまあ、なんとかなるだろう」

 父と兄の間で気遣うような視線を向けるリリアンに、アンバーは笑みを浮かべる。本来なら、そこには当主が座っているはずだが、今更だろう。特に指摘したりせず、アンバーは王家との間で交わされたやり取りを語った。
 サングロー公爵家がアルベルトを襲撃した——これは、公爵家同士の諍いと見られるのを防ぐ為、秘される事になった。
 クラベルが襲われそうになったのが周知される、というのは、もっと避けなければならない。国家間の問題になってはサングロー家自体の存続が危うくなる。グレストーンを排除するだけが目的だったのだから、そうなってはまずい。

「でも、クラベルお姉さまが襲われる必要がある、とおっしゃっていましたよね?」
「それは完全に失脚させる方便だからね。サングロー家の決定権を持つ長老達に、グレストーンとコーラルを諦めさせる理由が欲しかったんだ」

 そうしてコーラルはそれを実行した。その事実さえあれば、実際誰が襲われたって良かった。だからこそ当初はアンバーが身代わりになるつもりだったのだ。
 蓋を開けてみれば、被害に遭ったのはアルベルトだった。長老達は諦めるしかない、というわけだ。
 外向きの理由として準備したのは、グレストーンが正しく税を納めていなかった、というものだ。それは王家に対する虚偽であるとして一家を処罰。サングロー家の今後は国と一族の協議で決定する。幸い、分家であればアンバーだけでなく、何人か継げそうな者がいる。次代が育つまでの繋ぎでもいいので、適当な人間が選ばれるだろう。
 そう言うと、リリアンは生真面目に頷く。理解しているかどうかはともかくその姿勢は素晴らしい。自然、アンバーの表情は柔らかいものになった。
 リリアンの隣で更に真面目な顔でいるのはレイナードだ。

「では、当主はアンバー殿が?」
「さすがにそれは無いだろうよ。なにせアタシはこんなで、爺さん達には見放されてるからね」

 無い無い、と笑うアンバーに、レイナードは首を傾げる。
 これだけサングロー家の存続に貢献しているアンバーだ、素質も含め、彼女は適任そうに見える。人柄だけで否とするには惜しいのでは。
 そうは思うが他家の問題なので口は挟めない。それに、レイナードは成人前だ。立場も無いのだから、余計に何も言えなかった。

「は? ふざけるな、貴様がやれ」
「はっ?」

 が、そんな中で声が上がる。アルベルトだ。
 反応した声はアンバーのもの。レイナードは予想外の事に声が出なかった。

「どういう意味だい、ヴァーミリオン公」

 アンバーも想定外だったのか、身を乗り出していた。目を瞬かせている表情は意味が分からない、と言っていた。
 そんなアンバーに、アルベルトは苛立ちを隠さない。ちっ、と舌を打つと面倒そうに口を開く。

「どうもこうもない。アンバー・サングロー、貴様が当主になれと、そう言っているだけだ」
「どうしてそうなるんだい」
「どうしてだと? それ以外に無いからだろうが」

 ぎろりと睨むアルベルトの眼光は鋭い。ぞくっと悪寒がして不意に身体が震えるが、なぜ、と思う前に理解した。アルベルトが不快を露わに魔力を放っているのだ。
 サングロー家の歴史は長い。傍流であっても、公爵家の血はアンバーに豊富な魔力を授けたが、対峙するものはあまりに大きかった。

「貴様がやれ。いいな」

 有無を言わさない一言は低く響く。
 これは逆らえるものではない——アンバーは本能的に悟る。
 それからどう帰ったか、よく覚えていない。けれども「承りました」と答えたのだけは、はっきりと思い出せた。
 アンバーはヴァーミリオン家から戻るなり、長老達と面会をした。アルベルトの要求を伝える為だ。
 長老達は想像通り反対したが、アルベルトの推薦であると告げるとぴたりと口を閉ざした。もしも不服なら彼に直接抗議しろと伝えると、震えたり恐慌状態に陥ったりと様々な反応を見せる。
 何を恐れているんだ、と訊ねれば、アンバーにしてみたら意外な言葉が返ってきた。

「あの鬼神きしんの息子、狂月きょうげつと関わりたい者などおらん! お前達世代は知らぬのか」
「無知故のようだ。なんと恐ろしい」
「だが、いくらあれの推薦とはいえ、これに託して良いものか」

 なんとも酷い言われ様だ。
 アンバーだって噂くらいは耳にしている。先王の頃、アルベルトは単身戦地へ赴き、たった一人で敵軍を殲滅したのだという。それがきっかけで終戦の運びとなった。そう聞けばこの反応はあり得なくはないだろう。
 ただ、長老達の恐れの由来はそれだけではなかった。かつてサングローを取り纏めていた彼らは、自分達の利益から、グレンリヒトではなくアルベルトを王の座に推していた事があった。
 無論、そこにアルベルトの意思はない。彼らと、それから他家の連中が勝手に目論んでいたものだ。それなりの年月を掛けてのものだったらしいが、それが当のアルベルトの手によって破綻させられてしまった。代償は大きく、再起不能となる家まであったらしい。
 それはアンバーも初耳だった。そういう片鱗すら見えないのだ、恐らく痕跡さえ辿れないよう、徹底的に隠蔽されたのだろう。
 誰がやったのかなど聞くまでもない。長老達の様子から、相手の表情までもが想像がついた。
 それで長老達の世代の人間は、先王ゴットフリートだけでなくアルベルトも恐れていると、そういう事らしい。当時は両親と国外で過ごしていたアンバーとしては、あまり実感が沸かなかった。——これまでは。
 つい先程、その片鱗に触れた。あの、全身が冷えるのに、頭の中心で血が沸騰するような感覚。
 本能が脳を掻き立て、今すぐ平伏か逃げるかすべきだと警鐘を鳴らす。だというのに身体は恐怖で凍りつき、身動きができない。
 確かにあれを間近で感じれば命の危険を覚えるだろう。思い出すだけで身がふるりと震えた。
 そんな事を考えていると、老人達はまだピーチクパーチクと喧しくさえずっている。
 アンバーは、はぁ、と溜め息を吐き、言ってやった。

「じゃあ、爺さん達の誰かがやるのかい? ヴァーミリオン公の推薦を無視して」

 途端、再びしんと静まり返る。呆れた心地でアンバーはまた息を吐く。

「決まりだね」

 長老達からはもう否の声は上がらなかった。そうしてアンバーは無事、当主の座に収まった。
 腐っても公爵家、サングロー家にはいくつか協力的な家門があった。国内での派閥と言っていいそれは、賛同しているうちはいいが、一度問題が起これば途端反発的になるという、ある意味敵対している連中よりも厄介な存在である。アンバーが当主となった時も、当然のように大きな反発があった。
 分家の中で一番本家に近い血筋で、年齢も無理がない。すでに既婚であるのもそう問題ではなかった。けれども女性であること、グレストーンの不正を暴いたことが逆風となった。悪く見る気がなくとも、乗っ取ったと見られたのだ。
 それは正しいが、野心があったわけでも、おとしめたかったのでもない。それが家門の為、国の為……いや、領民の為だったのだ。
 グレストーンのやりようを見る時、いつも頭のどこかで当主交代を考えていたのも事実だ。こうなったらもう、腹を括るか、と決めたアンバーは強かった。
 ドレス姿で着飾る時の方が良い方向に進む事もあったが、男性社会においては舐められる事も多かった。だから男物を纏って、社交界に出た。澄ました連中の、面食らった顔は痛快だった。侮りは無くならなかったが、一筋縄ではいかないというのが一目で分かるせいか、交渉自体拒まれるというのは少なくなった。面妖な姿の女が珍しかっただけかも知れないが。
 一方で、そんなアンバーの姿は、なぜか女性陣には好評だった。その理由は少しずつ明らかになる。どうやら、ズボン姿でブーツを鳴らして歩くのが様になっていたらしい。アンバーを真似る娘まで現れた。
 女性らしさというのに欠ける自分を真似るのはどうかと思ったが、熱の籠った目を向けられると指摘するのもはばかられる。そういうのに憧れる時代もある、そういう事にした。
 そうこうしているうちに、派閥内での反発は綺麗さっぱり消えていた。公爵家の女当主としての自分に違和感を覚えなくなった、二年後のことである。





 ——そんな一幕を思い出し、アンバーはふっと口角を上げる。
 普段は意識にも登らない記憶が蘇ったのは、懐かしい顔に会ったからかもしれない。
 クラベルからはその後、丁寧なお礼の手紙を受け取ったがそれだけだ。こちらからの詫びも「気にしていませんので、そちらもお気になさらず」と言って最低限しか受けて貰えなかった。
 それが、アンバーを気遣ってのことであるのは理解している。彼女の立ち位置ではそうなるだろうことも。
 同時に、コーラルがそうならなかったのが残念に思えて仕方がなかった。
 二人は同じ公爵令嬢。育った国、生れた年に違いはあれど、似通っている部分も多い。本人の性質があるとは言え、コーラルには充分すぎるほどの土台があった。それを活かせないというのは貴族としては致命的な欠陥だ。そういう意味でも、グレストーンら一家に未来は無かった。
 後から知ったが、レイナードの婚約者候補として、コーラルにも手紙が来ていたそうだ。それを長老達が握り潰していたらしい。いわく「あの鬼神の孫に可愛い孫娘をやるだなんて、とんでもない!」との事で、それが結果的に彼女が破綻する要因となったのだから、なんとも皮肉だ。
 そんな彼らは、アンバーがサングロー家を建て直すと途端に態度を変えた。
 現金なものだ、と呆れてしまうが、実際後ろ盾としては頼もしいもので、多忙なアンバーをバックアップした。老獪なだけあるな、と利用しているのだから、アンバーも図太いと言える。珍しい三日月型の真珠が持ち去られたのも、彼らがなんとかしてくれるだろう。
 アンバーが当主になって七年余り。サングロー家は完全に持ち直した。どころかそれ以前よりも栄えている。これまでアンバーが手を回していたのが功を奏したのもあるが、それよりもヴァーミリオン家の存在が大きかった。
 というのも、ヴァーミリオン領で開発される様々な物は、交易を取り纏めるサングロー家があちこちへ運んでいる。ヴァーミリオン家が直に動かすのは極一部——リリアンが使う分だけなのだ。それ以外の一般品、つまり量産品はアズール家しかり、外部が売買する。
 国内は勿論、他国でも非常に人気のある品々は数が多い。それだけの荷を纏めて運ぶにはサングロー家が適任というわけだ。
 おこぼれに預かるとも言えるが、少し前のミスリル騒ぎでは短期間に馬と荷馬車の準備を強要され、挙句定期便を完備しろという依頼があった。いや、あれは依頼などではない、命令だ。断るという道も、期間の延長も存在しない、絶対的なもの。通常なら荷の重量、宿場町の場所、道中の勾配や天候の特徴なども加味してじっくり決めるものを、一ヶ月で用意しろというのだ。無理難題はいつもの事だったが今回は酷い。費用はかなり吹っ掛けてやった。もっともその程度、ヴァーミリオン家なら些細な出費だろう。
 とにかくそういう取引が多いのだ。信じられないくらいの勢いで資産が増えて、その分仕事も増えた。目の回るような七年だった。
 それにしても、とアンバーは目を閉じる。
 久しぶりに会った、銀朱の至宝。幼い頃の生真面目な面差しはそのままに、ただただ真っ直ぐ成長しているなど、誰が想像できただろうか。
 普通、あんなに持ち上げられたら、それこそコーラルのように増長するものだろう。にも関わらず、リリアンは一切思い上がる事もなく、純粋に他者の為に心を砕いていた。それを美徳とする風潮があるとは言え、実行するのが難しいのが貴族社会だ。偽りでもなくあれだけ自然に振る舞えるのは、きっと本心から願っているからこそだろう。そう成れた、というのは、正直信じ難い。
 何より素晴らしいのは、あのアルベルトを自身の意に沿うように調整して発言していた事だ。その手腕は本当に見事としか言い様がない。
 あの次元に到るまで何があったのか。なんでもない風に見えるが、リリアンはリリアンなりに努力した事だろう。
 そんなリリアンを育てたのは、あのアルベルトなわけで。
 至宝と呼び慈しまれている姫君は、あの男の元で更に輝きを増すだろう。あれだけの輝石を磨ける人間など限られてくる。きっと、それ以外を考えない者でなければ、不可能だろう。

「嫌な奇跡もあったもんだね」

 アルベルトにはそれができてしまう。良いのか悪いのか、リリアンの方も受け入れられるだけの器がある。
 その結果、なにが現れるのか、アンバーにも予測ができない。
 そのまま真っ直ぐ育てばいいが、と思わずにいられなかった。


 ◆◆◆


「ところで、お父様。あの時、アンバー様を当主にと仰ったのはなぜですか?」

 まだ正式に社交界に出ていないリリアンは、正式な式典への参加は許されていない。多忙なアンバーと会う機会はほとんど無く、面識はあっても港で遭遇したのが数年振りとなる。記憶の中にある姿より、より凛々しくなっていた彼女を見ていると、幼い頃の記憶が甦った。その中でもとびきりの印象を残した瞬間を切り出し、リリアンは訊ねる。
 小首を傾げるリリアンの肩から、さらりと美しい髪が滑り落ちる。その輝きに意識を持って行かれそうになったのを太ももをつねったことで堪えたアルベルトは、こほん、と咳払いをひとつした。へにゃりと崩れそうになった表情を改めるのを誤魔化したのである。

「何か気に掛かるのか?」

 そう言えば、リリアンはいいえ、と首を横に振った。
 素晴らしい事に、それで耳に下がったイヤリングがしゃらりと音を立てる。リリアンの鈴のような澄んだ声と合わさり、まるで天から響いているかのように聞こえた。全身でそれを浴びると活力が漲ってくる。
 普段通り麗しい輝きリリアンを吸収するアルベルトに、リリアン本人は生真面目な表情で続ける。

「アンバー様にその気はなかったようですのに、急にあんな風に薦めるのですもの。もしや、アンバー様の才覚を見抜いたのではないか、と思ったのだけれど」

 リリアンの真面目な態度に呼応するように、アルベルトもキリッと表情を引き締める。そうした所でリリアンは何の反応も示さないが。

「そうだな。調べた限りでは、あれ以外に適切な人材はいなかった。だからそうなるようには言ったが」
「やっぱり。アンバー様の代になってから、サングロー家は持ち直したと聞きましたわ。お父様のお眼鏡に適うアンバー様も素晴らしいですが、そんな方を推薦されるだなんて、さすがはお父様だわ!」
「ま、まあな!!」

 一体なんの話だろうと思っていたところに突然褒められ、アルベルトのテンションは急激に上がる。引き締めた顔はどこへやら、ゆるゆるに解けきっていた。
 その後もすごいすごいと称賛され、有頂天になったアルベルトはだらしのない顔を晒し続ける。
 それにレイナードやベンジャミン、シルヴィアが冷めた視線を向けることになった。



 この国では、女性当主というのは少ない。継承権は認められているが、幸いというべきか、女性が当主として立たねばならない事態というのが少なかった。
 そのせいか、女性が一時的にでも当主になろうものなら必要以上に注目を集めてしまうようになり、思うように行動がし辛くなった。それから女性当主というものが珍しくなってしまったのだ。アンバーがあれだけ目立っていたのは、なにも彼女の経歴や容姿だけではない。
 アルベルトの狙いはこれだった。

(リリアンが当主になりたい、と言わないとも限らない。アンバーは馬鹿ではなさそうだ。成功例として立ち、少しでも風当たりを弱くしてもらわねば)

 そんなアルベルトの思惑は見事成功する。アンバーは反発を抑え、実績を上げ、サングロー家の立場を強固なものにした。その決して媚びない姿勢に傾倒する者まで現れた。想像以上の結果である。それはつまり、土台の出来上がっているリリアンであれば、それ以上の成果を出せる、という意味だ。それなら当然、反対する者など居ないだろう。
 ありとあらゆる道をリリアンに差し出せるようにしなければ。
 今日もアルベルトはそれだけを考えるのだった。
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