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家庭教師

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あの時以来、久しぶりに圭一の家に行くことになった。いつものように、漫画を借りにいくのと、あと真面目な理由をいうと、圭一の勉強をみに。

圭一は今、現役の高3で受験生。
もし仮に進学を望むなら、今年は確実に勉強をしなければいけない年だ。その関係で俺が、正式な家庭教師じゃないけど、奴に気持ち程度、勉強を教えることになってしまった。
 
もちろん、圭一にせがまれて。

ただ一番の理由は、圭一の両親に頼まれたことが大きい。時々家にお邪魔していることもあり、とてもじゃないが、断ることは不可能だった。

きっとこれも奴の作戦だと思うのだが、俺が行っている大学は、実はまあまあ難関の県立大学。だから、それを材料に…親をゆっくりと説得したに違いない。

俺はちょっとした手土産と参考書を片手に圭一宅を訪問する。

呼び鈴を鳴らすと、圭一が顔を出す。
「先輩。こんにちは」…ぱあっと明るい笑顔。
フリフリと、犬コロのしっぽが見えるようだ。

「あれ、一人か…?とりあえず、お邪魔します」

俺は靴を揃えて、いつものように先に二階に上がる。勝手知ったるじゃないけど、もう何度、ここに来たことだろう。
 
思えば大学の同級生でもない年下高校生のコイツのうちに、よく遊びに通ったものだ。やはりどうしても俺にとって、圭一といるのは楽で、居心地がいいのだ。

いつものように俺の定位置に座ろうとし、一瞬ドキリとする。圭一の使うベッドが俺の座る場所の真後ろに位置していた。この位置は、もちろんいつも通りなんだけど…あのようなことがあったからか、今までの訪問で全く意識していなかった奴のベッドが…気になってしまう、というか、少しでも離れていたくなる…変な感じだ。

だが、平静を装い、俺は定位置に座り、持参した参考書や筆記用具を机に広げる。

 ガチャ… …

圭一がお盆を片手に部屋に入ってくる。
「お待たせしました、先輩」
俺を見て、ニコニコと笑う。

可愛い奴…なんだか最近俺は、圭一が可愛くて仕方がないのだ。
でっかくて図々しい奴なのに、笑顔を見ると俺も嬉しくなってしまう。うーん、ちょっと前まで、本当に想像もしなかった感情だ…

それはそうと、圭一は意外にも、真剣に勉強に取り組んだ。学校の課題と、俺が適当に出した課題、すべてを終わらせ、俺が添削をする。

は…  まじか…、全問正解…
 
結構難しい問題も混ぜて出したつもりが…奴は難なく解答してくる。しかも、正解…

こいつ、もしかして…できるタイプなのか…?

俺が、奴の能力を推し量っている間に
「先輩、次の問題、俺が全部、正解したら、キスしても、いいですか…?」
いきなり、圭一が真顔でそんなことを聞いてくる。

「は!?…」
俺は考える、うん…実は本心、俺もちょっとしたい…もちろん、これは、内心の声。

「ん…まあ、いいけど…そのかわり、間違えたら俺の言うこと、…ひとつ、聞くんだぞ。」

もちろん、何も浮かんでいないが、なんとなく交換条件を出してしまう。

せっかくだからと、ひっかけが入ったような、かなり難しい数学の問題を五問程度出す。
これがもし全て解けたら、確実に圭一はかなり頭が良いと、そう判断できるようなレベルの問題をいくつも出してみる。
さあ、解けるか?…やってみろ。

……………

結果、圭一は見事に…解きやがった。しかも、短時間で…全て正解。
 
俺の予想は確信に変わる。
コイツに家庭教師は全く必要ない…多分、勉強は単なる口実にしか、すぎなかったんだ。

  俺は、全て添削したあと、ため息をつく。

  圭一が、しっぽを振りながら、ご褒美は?とばかりに俺を見る。

   やっぱりわんこだ…  

      そう、思った‥  


                  
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