【完結(番外編)】ほかに相手がいるのに

もえこ

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~杉崎~

葛藤

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「… …え? …」

俺は、自身の耳を、疑った…。

      マグロ… ?

彼女の発した言葉に、一瞬面食らってしまった。
すぐには、言葉を発せないほどに…。

受身の相手を、確かに俗に…「マグロ」と揶揄することはきっと誰でも…特に年頃の男なら知っているはずだ…。

だが、水無月さんの…彼女の口から発したその言葉は、
一瞬、違う意味で言ったのかと疑いたくなるほどに、俺に結構な打撃を与えた。

どこで得た知識だろうか… 

ネットの普及と、雑誌等でも…特集などがあるのかもしれないが、まさか…

まさかとは思うが、あの男に… 
拓海に…  かつて、言われたことが、ある…とか…? 

まさか、あの男が彼女に…行為の際にそのようなことを言って、彼女を傷付けたのではないだろうか…。

それとも彼女は…俺が思った以上にそういう話に敏感で…日々、その方面の勉強に励んでいるとでも…?

いや、まさか、な…

「… … …」俺は無言で彼女を見つめる…。

おどおどした表情で俺を見返す彼女の綺麗な瞳の中に、俺が映っている…。

いや、ないな…

こんなにも純粋で無垢な彼女が、そんなことを自ら進んで、学習するはずがない…。

きっと、アイツに違いない…。

あの男なら、無神経に彼女に、そんなことを言ってしまいそうだ…
あの男ならやりかねないと、うっすらと頭の隅で思う…。

これまでも、彼女にいらぬことを… 
おかしな情報を与えて、これまで無駄に、彼女のことを傷付けてきたのではないか…?

「… … … 」

胸の中に、なんともいえない嫌な気持ちが、渦を巻きながら広がっていく…。

自身の中に目覚めた嫉妬のような力も加わったことで、彼女を自分だけのものに…滅茶苦茶に、したい…
そんな…激しい衝動をなんとか抑え込んで冷静に努め、葛藤の末、なんとか…行為を中断し、彼女から物理的に身体を離したというのに…。

再び、あの男の残像が頭の中に浮かんでくるようで、黒い感情が巻き起こりそうになるのを必死に抑え込む…。

これ以上、醜態を…彼女の前にさらすわけにはいかない…。

まだ、きっと彼女は気付いていない…。
俺がなぜ、途中でやめたのか。

俺の中にこれほどまでに嫉妬心が芽生えていること…。
もはや、過去の男に…あの男のことに、いちいちこだわっていることに気付かれていない今のうちに…

今日は、何もせず… 
自身の欲望すら抑え込んで、平常運転に戻すつもりだったのに…。

彼女は、俺のはぐらかすかのような説明には始終、納得がいかない様子で…

俺の想像もしない方向に動き始めた…。

「嫌です… 今日は、私が…」 

「 … え… ?」 今日は、私が…?

何を、言っている…?  どういう、意味だ… 

まさか、彼女は…  
  
もぞもぞと身体を動かし、下の方にずれていく彼女の白く、華奢な肩が見えた…。

俺の腰の方向へ伸びる彼女の白く、細い腕を…
俺は呆然と、見つめた。




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