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~二人~
約束
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身支度とメイクを済ませ、私は部屋に戻った。
「わ… すごく、美味しそう…」
テーブルの上にはグリーンサラダとオムレツ、焼きたてのクロワッサン。
デザートのヨーグルトも並べられていた。
背後からはコーヒーのよい香り…
「どうぞ… あ…先に珈琲飲むなら、いれようか…?」
ガタンと音を立てて椅子から立ち上がろうとする杉崎さんに慌てて声をかける。
「あっ…大丈夫です、ジュースがあるので…珈琲は食後にいただきます。」
「そう…?じゃあ、いただきます…。」
「いただきます…。」
カチャカチャと、互いのカトラリーの音が響く…。
シンとした室内…
何か言わなきゃと思うのに…言葉が出てこない…。
先ほどのことがどうしても頭をかすめてしまう…。
恥ずかしさと戸惑い…
正直なところ、杉崎さんの行為にも驚いてしまった…。
「… あ… サラダにナッツ、いいですね…すごく美味しい…杉崎さん、女子力、高い…!」
なんとか、会話の糸口を見つけて杉崎さんを見る。
「…女子力?いやいや…健康とか美容とかじゃなくて、普通に好きなだけだよ…酒のつまみにもなるしね?」
にこりと笑う杉崎さんと目があってしまい、再び心臓がなる。
「… あ… の、さっきはごめん… 」
「あ…いえ、全然… 」
ドアを突然開けたことを言っているのか、お尻を撫でたことを言っているのか真相は闇の中だ…。
「… ちょっと、あの時のこと…思い出した… 」ふふと、杉崎さんが笑う。
「え… ?」
「… あの…ほら… 社員旅行の下見の…時の、あれ… 俺がさっきみたいに、洗面所に乱入… 」
「あっ … 」
そう言われて、すぐに思い出した…
洗面所の鏡の前で…
私の浴衣ははだけ… あの時は… 完全に…上下の下着とも、丸見え状態だった…
「… そう、でしたね… 恥ずかし…かった…です… あの時も… 」
「本当に、わざとじゃなかったんだけど…俺、あの時ほど…びっくりしたことは、なかったかも… 」
ぼそりと呟く杉崎さんの顔が、ほんの少し赤らんでいることに気付く…。
「…そう、ですよね…私も…あの後もう、普通に杉崎さんの顔見るの無理って…思いました…恥ずかし過ぎて…」
「… だよね… でも… 正直に言うと、俺… 」
「… はい… 」
「… 可愛いって… 思った、よ… 君の、その… 下着… 見て… 」
「えっ …だって、あの時、見てないって…っ 」杉崎さんは確かに、そう言った…。
「…うん、そう言ったけど…でもしっかり、目には焼き付いてたっていうオチ…みたいな…?ごめん…男だしね…」
「… ぁ、…ますます、恥ずかしい…です」
「… でも… 今となっては… 見放題… 」
ぼそりと、杉崎さんの口からそんな言葉が聞こえて、耳を疑った。
「えっ…!?み… 見…放題… !?」
「… そう… 少なくとも俺は… そう思ってる…彼氏なんだし…いつでも見たい…駄目、かな…?」
杉崎さんの視線が私に突き刺さるようだ…。
「… や… あの…っ えっと…」
何と返すのが正解なのか、さっぱりわからない…。
私は完全に杉崎さんの言葉に動揺して、思わずフォークを落としそうになる…。
「あ…明らかに動揺してるね…なんてね、冗談冗談……残り、食べちゃおう…」
「は… はい… 」
完全にからかわれている…?
私は気を取り直して、フォークを握り直す。
「…とにかくお互いに、お互いの過去にこだわってたんだね…それがわかっただけでも良かった…」
杉崎さんがまるで独り言のように静かに、つぶやいた。
「はい、本当に… あの…この際、聞いても、いいですか…?」
「ん…?」
「あの…あの日…杉崎さんと一緒に泊まったホテルで出会った女性は…女性とは… その…どんな…?」
「あ… それって… 沙織… のこと…かな… 」
杉崎さんが呼び捨てで呼ぶ「沙織」というワードに、ずきりと胸が痛む…。
「はい… あの… 実は…あの時から…ずっと、気になっていて… 」
「… その話は、また…今度… 」杉崎さんが困ったように苦笑する。
「え~~~ … 」そんな返しをしながらも…
聞かない方が良いのかもしれない…不意に、そう思った…。
「…そうだ… 前から言おうと思っていたんだけど… もう少し暖かくなったら… 」
「はい… 」
「旅行に行かないかな…と、思って…3月あたりはどうかな…?できれば、あの旅館に今度は二人で行きたいなって…思って…その…料理もお風呂も、すごく良かったし…」
私も実は、いつか……あの旅館に、いつか杉崎さんと二人だけで行きたいと思っていた…。
「 … はい、是非… !」嬉しさのあまり、声が高くなる…。
「良かった…じゃあ計画を立てるね…約束。そうだ、今日は天気もいいから外に出かけようか…公然と、初デート…映画でも行く…?あ…既に予定あるなら無理しないでいいよ…?」
そう提案しながらも、やっぱり遠慮がちな杉崎さんが、心から愛おしい…。
「… はい… はい… 」
デート…
普通に外で、大好きな杉崎さんとデート… そして、温泉旅行…
杉崎さんは林さんと別れ…私は拓海と別れ…
やっと…これまでできなかったことが、杉崎さんと…堂々と…できる…
私は高鳴る気持ちを抑えながら、杉崎さんに笑いかけた。
~fin~
「わ… すごく、美味しそう…」
テーブルの上にはグリーンサラダとオムレツ、焼きたてのクロワッサン。
デザートのヨーグルトも並べられていた。
背後からはコーヒーのよい香り…
「どうぞ… あ…先に珈琲飲むなら、いれようか…?」
ガタンと音を立てて椅子から立ち上がろうとする杉崎さんに慌てて声をかける。
「あっ…大丈夫です、ジュースがあるので…珈琲は食後にいただきます。」
「そう…?じゃあ、いただきます…。」
「いただきます…。」
カチャカチャと、互いのカトラリーの音が響く…。
シンとした室内…
何か言わなきゃと思うのに…言葉が出てこない…。
先ほどのことがどうしても頭をかすめてしまう…。
恥ずかしさと戸惑い…
正直なところ、杉崎さんの行為にも驚いてしまった…。
「… あ… サラダにナッツ、いいですね…すごく美味しい…杉崎さん、女子力、高い…!」
なんとか、会話の糸口を見つけて杉崎さんを見る。
「…女子力?いやいや…健康とか美容とかじゃなくて、普通に好きなだけだよ…酒のつまみにもなるしね?」
にこりと笑う杉崎さんと目があってしまい、再び心臓がなる。
「… あ… の、さっきはごめん… 」
「あ…いえ、全然… 」
ドアを突然開けたことを言っているのか、お尻を撫でたことを言っているのか真相は闇の中だ…。
「… ちょっと、あの時のこと…思い出した… 」ふふと、杉崎さんが笑う。
「え… ?」
「… あの…ほら… 社員旅行の下見の…時の、あれ… 俺がさっきみたいに、洗面所に乱入… 」
「あっ … 」
そう言われて、すぐに思い出した…
洗面所の鏡の前で…
私の浴衣ははだけ… あの時は… 完全に…上下の下着とも、丸見え状態だった…
「… そう、でしたね… 恥ずかし…かった…です… あの時も… 」
「本当に、わざとじゃなかったんだけど…俺、あの時ほど…びっくりしたことは、なかったかも… 」
ぼそりと呟く杉崎さんの顔が、ほんの少し赤らんでいることに気付く…。
「…そう、ですよね…私も…あの後もう、普通に杉崎さんの顔見るの無理って…思いました…恥ずかし過ぎて…」
「… だよね… でも… 正直に言うと、俺… 」
「… はい… 」
「… 可愛いって… 思った、よ… 君の、その… 下着… 見て… 」
「えっ …だって、あの時、見てないって…っ 」杉崎さんは確かに、そう言った…。
「…うん、そう言ったけど…でもしっかり、目には焼き付いてたっていうオチ…みたいな…?ごめん…男だしね…」
「… ぁ、…ますます、恥ずかしい…です」
「… でも… 今となっては… 見放題… 」
ぼそりと、杉崎さんの口からそんな言葉が聞こえて、耳を疑った。
「えっ…!?み… 見…放題… !?」
「… そう… 少なくとも俺は… そう思ってる…彼氏なんだし…いつでも見たい…駄目、かな…?」
杉崎さんの視線が私に突き刺さるようだ…。
「… や… あの…っ えっと…」
何と返すのが正解なのか、さっぱりわからない…。
私は完全に杉崎さんの言葉に動揺して、思わずフォークを落としそうになる…。
「あ…明らかに動揺してるね…なんてね、冗談冗談……残り、食べちゃおう…」
「は… はい… 」
完全にからかわれている…?
私は気を取り直して、フォークを握り直す。
「…とにかくお互いに、お互いの過去にこだわってたんだね…それがわかっただけでも良かった…」
杉崎さんがまるで独り言のように静かに、つぶやいた。
「はい、本当に… あの…この際、聞いても、いいですか…?」
「ん…?」
「あの…あの日…杉崎さんと一緒に泊まったホテルで出会った女性は…女性とは… その…どんな…?」
「あ… それって… 沙織… のこと…かな… 」
杉崎さんが呼び捨てで呼ぶ「沙織」というワードに、ずきりと胸が痛む…。
「はい… あの… 実は…あの時から…ずっと、気になっていて… 」
「… その話は、また…今度… 」杉崎さんが困ったように苦笑する。
「え~~~ … 」そんな返しをしながらも…
聞かない方が良いのかもしれない…不意に、そう思った…。
「…そうだ… 前から言おうと思っていたんだけど… もう少し暖かくなったら… 」
「はい… 」
「旅行に行かないかな…と、思って…3月あたりはどうかな…?できれば、あの旅館に今度は二人で行きたいなって…思って…その…料理もお風呂も、すごく良かったし…」
私も実は、いつか……あの旅館に、いつか杉崎さんと二人だけで行きたいと思っていた…。
「 … はい、是非… !」嬉しさのあまり、声が高くなる…。
「良かった…じゃあ計画を立てるね…約束。そうだ、今日は天気もいいから外に出かけようか…公然と、初デート…映画でも行く…?あ…既に予定あるなら無理しないでいいよ…?」
そう提案しながらも、やっぱり遠慮がちな杉崎さんが、心から愛おしい…。
「… はい… はい… 」
デート…
普通に外で、大好きな杉崎さんとデート… そして、温泉旅行…
杉崎さんは林さんと別れ…私は拓海と別れ…
やっと…これまでできなかったことが、杉崎さんと…堂々と…できる…
私は高鳴る気持ちを抑えながら、杉崎さんに笑いかけた。
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