定時に帰る彼女と、残業しまくる僕

もえこ

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第1章

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小さなころから植え付けられてきた劣等感って奴は、そんな簡単に払拭できるものじゃなくて、俺は駄目人間なんだな…って思いながら…現在に至る。

だから今だって、毎日のように残業しまくりで、
…ニコニコしてはいるものの、同僚や上司に内心で罵られながら、なんとか生きてる…ってそんな感じ。

『おいまだかよ…例の資料、とっととくれよ…この前はレイアウトまで済んでたから、もうさすがに終わってんじゃねーの…おっせーな…っチ…』とか、内心思いながら、
「この前の資料、もうそろそろ配布できる感じ?もうそろそろ進めたいから、できたら早目にもらえるかな…?」

…そんな風に、オブラートに包んで笑顔で俺に催促する同僚の顔を見ながら、
「あ、そうだ、すぐにやるね…」と慌てて準備する僕…。

僕のこの変な力…他人の内心がなんとなく聞こえる性質みたいなものは、怒りとかイラつきとか、…そういった一定程度の感情以上のもの…強いモノしか聞こえてこないようで、しかも僕に向けられた感情限定。

周りの人の全ての内心が駄々洩れ状態の世界で生きるとしたら、僕はきっと生きていけない…怖すぎる…今でも十分、こんなもの聞こえなかったらいいのに、なんて思ってるくらいだ。いい感情ならまだしも、怒りとかばっかだし…。

表面的につくられた笑顔のもとで、人は、どれほどその内心にある感情を抑えながら、その…『負の感情』を抑えながら、我慢して人と接しているのか、僕には手に取るようにわかってしまう。

まあ、それこそが、理性ある人間って分類なんだってことだけは、わかるけど。

だから、人間不信…

僕の今は、もうそれに近いかもしれない。

でも、不思議なことが一つだけ…彼女だけ…
美波さんだけは、…それがないんだ…

僕に対しての『負の感情』

…僕の仕事が遅くて、明らかに彼女に迷惑をかけたこともあったのに、彼女にはそれ…が、なかった。

「あ、大丈夫ですよ。私が修正しておくので気にしないでください。」

ただ、その発言だけが、僕の耳に聞こえた。

     他には何もなかった。
             
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