【完結】人妻の危険な誘い

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それはそうと、あんな要領の悪い田代にも、一応家族がいた。

不思議だが…
あんなアイツには勿体ないくらいに美人で控えめな妻と…子供が二人。
確かまだ小さな、5歳と…３歳くらいの子供がいたはずだ。

アイツの葬式で…散々泣きはらしたのがわかる赤い眼をしたその美人妻が、気丈にも涙を見せずに静かにお辞儀をしている姿が、あまりに不憫だった。

俺は正直、奴の葬式に行くのは気が進まなかったが、上司命令には逆らえず、結局、奴に比較的近しい数名の社員と俺とで、参列することになった。

田代が家族に…奴の妻に…
俺のことを愚痴っていないか…パワハラ上司がいるとかなんとか…言っていないか色々気になっていた俺は、気が気でなかった…

だがそれは全くの、杞憂で‥

田代の妻は、涙を堪えながら俺たちに深々とお辞儀をして、俺たちを見送ってくれた。

なんか、アイツらしいな…　
人の悪意を身体でひしひしと感じているくせに、それについては外に愚痴ったりせずに自分の内にだけ溜め込む…　んで結局、身投げなんて。