【完結 R18】ほかに相手がいるのに

〜彼氏〜

拓海の要望

「でも…　…」
私は食い下がる。

「…んだよ…そんなに、嫌…かよ…？　…」
拓海が少し、不服そうに唇を尖らす。

いっそのこと…今、言ってしまおうか…


　　　　　…別れたいと…


今日会ってからいきなり身体を求められた時に、
直接会って別れを切り出すのは私の性格では難しいと…思ったばかりだが…

でも…

いずれ、近いうちに話さなければならない。
気まずいとはいえ、どのみち、今まで経験したことのないような嫌な雰囲気になるのは避けられないのだから…。

「あ…の…拓海…」

私は押し倒されたまま、拓海を見上げる…。

「なんだよ…？　…」

「あ…あの…　…」

今…この体勢で、突然、別れを切り出したとしたら、拓海はどう出るだろうか…。

もう、夜も遅い、
ここに、このまま拓海が泊るのは間違いない…
そんな状況で、

『別れたい…』そう伝えた場合、
拓海は冷静に…私の話を聞いてくれるだろうか…。

でも、普段ならまだしも、かなり酔っている状態の拓海にそんなことを言えば、拓海に限らず世の男性は…逆上して…怒り出すのではないだろうか…。

「…　…」再び、私は無言になる…なかなか言葉が出てこない…。

「…なんなんだよ、言いたいことがあるなら、言え…」

拓海の目に、少しの苛立ちのような色が、見え隠れする。

やはり…今夜はやめた方がよさそうだ…
もしも機嫌が悪くなったら、とても冷静に話が出来る気がしない…。

「…別に…ない　…でも…拓海、ほんとに今日は…あっ…んっ…！　…っ…」

いきなり、両方の胸を…大きな手で鷲掴み…される。

「拓…海っ…　痛っ　…い…　はぁ　…　っ、　ん…」

拓海を見上げる。
いつもよりぎらついた目で、少し…怖い…。
もう…何を言っても、聞いてくれそうにない…。

「そんなに、嫌ならさ…」
拓海が妖しい表情で、舌なめずりをしながら私を見下ろす…

「じゃあさ…　アレ…　してくれる…？」

あれ…って、…何…　…　　…　

「あ…あれ…って…　…」

「おまえって、ほんと…　…はぁ…、アレだよ…あれ…最初の頃さ、すげー前に…俺が教えた…あれ…」

…　拓海に教えられた…あれ…とは…何だろう…　　
すごく前にとは…　

付き合い始めた…最初の頃ということ…だろうか…　本当に、わからない…何…
考えを巡らせる…

「おまえって…マジで、…こども、だな…」　
チッと、舌打ちをするような素振りを見せる拓海…

なんだか、少し…嫌な気分になる…。

拓海が少しだけ身体を起こして、カチャカチャと音を立てて、ベルトのバックルを…はずす。

「……　…　…　」

まさか…私の頭の中によぎった、その行為…

「おまえのその…口…で、してくんねえ…？　たまにはさ……おまえが本番、やだってんなら、…今日はそれで我慢する…」

いやらしく上擦った拓海の声が…私の頭に…低く、鳴り響く。

付き合いたての頃、お互いに処女と童貞同士だった私たちが手探りでセックスをしていた頃に、拓海に…確か…してみて欲しいと言われてした…その行為…。

全然…方法がわからず、呼吸も出来なくて苦しくて…うまくできなかったその行為…。

結局、最初の数回で断念して、お互いに口ですることはなくなった…のだけど…

その行為…　のこと…か…　

そんなこと…なぜ数年も経って…　今更…？？

やはり拓海は…　どこか、おかしい…　

もしかしてやはり…誰かほかに…。


「な…イイじゃん…たまにはさ…な……」

「あっ…　…！」

言いながら、既にむき出しになった自身の下半身に、私の手を持っていき、直に触れさせられる…。

既に…屹立して脈打っている…拓海の性…

　　　　　 　「…　…　…」

もう、どうしたら良いのか…わからなくなった…。

さっき別れたばかりの…彼に…会いたい…


私の脳裏に、

            杉崎さんの柔らかな笑顔が、浮かんだ…。