【完結 R18】ほかに相手がいるのに

もえこ

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~智花~

酔い

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「かんぱー-い…!」
「乾杯!!」 「おつかれ~~」

カツンカツンと、グラスが触れ合う音。

その夜、私は歳の近い同僚数人で、会社近くの居酒屋に飲みに来ていた。

「や~~林さんがこっちきて数か月になりますけど、どうですか林さん、福岡の方は…もう慣れました…?あ、仕事の話は抜きにしましょうね~ストレスたまっちゃうから…」

少し年上の既婚の男性社員に笑顔で聞かれる。

「ええ…!福岡ってすごく、いい所ですね~何より食べ物が美味しい…!買い物の場所にも困らないし東京ほど人が多くなくて本当に気に入ってます…永住してもいいくらいに…」

「やーそう言ってもらえると嬉しいよな?こっち出身の俺らとしてはな~三橋君」

「…そうですね~ でも林さんって、見た目も何もかも都会的だから、本当は物足りないんじゃないすか?福岡…やっぱさすがに、東京には負けるでしょう…」
三橋君がジョッキのビールを片手にニヤリと笑いながらそんなことを言う。

「いちいちそんなん言うなよ~三橋…福岡も最高じゃん…ね?林さん…!」

「ええ。もちろんです…福岡、本当に大好きですよ、私」
これは本心だった。
なんて住み心地がいいんだろうと…東京のように人で溢れかえってごみごみしていないし、それでいて十分に都会だ。生活に困ることなんて、一度もなかった。

「そうかな~なんかやっぱ林さんからは、東京に戻りたがってる気がひしひしと感じられるんですよね…彼氏がいるんでしたっけ…、確か」
三橋君がそんな風に言葉を続ける。

「えっと… … 」思わず、言い澱む…

そうだった…こちらに来て直ぐの少人数の飲み会の時に誰かに聞かれて、ちらっと修哉さんの話をしたことを思い出す。

「そうですね、います…遠距離です、けどね…」

「それはいるでしょう~智花さんめっちゃ魅力的ですもん…!綺麗だしスタイル抜群だし…同性から見ても素敵でめちゃめちゃ羨ましいですよ~色んな人から告白されまくりじゃないんですか…?」
二つほど年下の女の子が、大袈裟に、そんなことをいう…。

「いえいえ、そんな…! …告白だって私から、ですし…しかも同じ人に二回も…したんですよ… 」

「え~~!?そうなんですか…!?二度も告白って、なんだか意外です…今後の参考に教えてください!」

結局その子に聞かれるまま…修哉さんと付き合うに至った経緯を皆の前で簡単に話し…その後はそれぞれの恋の話や質問コーナーに終始した。

帰り際、少しふらついていた私を、家が同じ方向だからと言ってタクシーに乗せてくれたのが三橋君だった。
その後のことは、いまだに信じられない…

           私はやはり、酔っていたのかもしれない… 















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