ある女の苦悩

外の世界

余裕

「さ…入ってください」
「…　はい…　」

私は静かに部屋に入室した。

シックな装いではあるが、ごく普通のビジネスホテル…　
入ってすぐに、ブラウンのシーツがかかったベッドが目に映る。

こんな場所で、私は初めて、夫以外の男に抱かれる…

もちろん、高級で洒落たホテルを期待していたわけではないが…
あまりに無機質な見た目の部屋に、少しの落胆を覚える。

だがそれは当たり前だ…。

この…
今私の目の前で柔らかに微笑みながら私を見下ろしている男は
私を愛しているわけではないのだ…。

ただ単に、遊びで、少し年上の女を抱きたいと思っている男が
今、私の目の前にいるに過ぎない…
お互いの利害が一致しただけの男女の関係…

「あ…　っ…」私は思わず、声を上げた…

いきなり、男の腕に引き寄せられたからだ…
「あの…」私は戸惑う…
戸惑うと同時に、年下の男に物怖じしてどうするという、そんな気持ちが働く…。

「え…？どうしました…？こうするのは駄目ですか…？」男はふふと、笑う…。

男はやはり遊び人に違いない。
既婚者でありながら、自身の妻だけでは飽き足らず、度々こうやってほかの女に手を出しているのだろう…。
きっと、このようなシチュエーションには慣れている男なのが見てわかるほどに、
甘いマスクの下に、余裕の表情が覗いている…

そうだとわかっていても、１８０センチほどはありそうな長身の男に突然抱き締められ、息を飲む…。

「はは…　何とも可愛らしい反応をされるんですね…とても、既婚者だとは思えないな…」

「そんな、ことは…」恥ずかしいほどに声が震える…

「さ、始めましょう…」

「あっ…　」

男に抱き締められたままの格好で、私はゆっくりとベッドに押し倒された…