異世界に女子高をつくろう

海星

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王女

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「死人に口なし」
暗殺者は人に自分が暗殺者である事を悟られないようにするが、唯一暗殺を見せるのは殺す相手だけだ。
「どうせ死ぬ相手に見られてもいいだろ」という考え方である。
だが殺した相手が生まれ変わったと聞いたら国王は穏やかではない。
暗殺者は「勇者が死ぬ瞬間目を醒まし、顔を見られた」と言っていた。
暗殺者を暗殺者と認識している者はいない。
いつも国王のそばにいるので、ボディガードか何かだと思われていたし、勇者もそう思っていた。
つまり「国王に暗殺されたと認識している人物が生き返った」のである。
しかも王国の協力者であったはずの他の勇者パーティのメンバーも全て引き抜かれた。
もし勇者が本物なら、国王が勇者を裏切った事が発覚するのは時間の問題だ。
勇者を敵に回すと言う事は「世界のすべてを敵に回す」と言う事だ。
そうなってしまえば国王に生き残る術はない。
国王は数少ない可能性に賭けた。
・勇者は偽物。
・勇者が本物だとしても、転生したての今は力はない。
・全てを思い出す前に、もう一度殺す。
残念ながら本物の勇者だし、全ての力を取り戻しているし、もう全てを思い出している。すでに可能性は断たれているのだが国王はそれを知らない。

国王は国の全軍である七十万人を学園都市に進軍させた。
「そこにいるのは勇者パーティ4人だろ?たった4人に大袈裟過ぎないか?」などと言うのは勇者パーティが戦うのを見た事がないもの達だ。
正直この百倍はいないと全てが魔法使いの広域魔法の餌食で、魔力切れにするには人数が足りない。
そこからが勇者パーティの殺戮ショーの始まりで、更に少なくとも現在の千倍の人数は必要だ。
じゃあなぜこれだけの軍勢で進軍したのか?
勇者が力を取り戻す前に攻めなくちゃいけないが、これだけしか集まらなかったのだ。

軍は魔法や弓の射程の外に陣を敷いた。
そこで軍勢は「偽勇者に正義の鉄槌を!」などと野次を飛ばし騒いでいる。
だがそこはグレネードランチャーの射程内だった。
「鉄槌を食らうのはお前らだよ」俺はあきれながら呟いた。
ゴーレム達に指示を出せば、一斉にグレネードランチャーが発射される。一方的な大虐殺の始まりだ。
国王軍の言い分では俺は「勇者パーティのメンバーを騙して仲間にした偽勇者で大悪党」らしい。
挑発に乗るのは癪だが、俺はパーティメンバーに「手出し無用」と言った。
別に何か言われたからそうした訳ではない。
勇者パーティのメンバーにとって、軍勢と戦うと言う事は「かつての仲間達と戦う」という事で、やりにくいのだ。
かつて俺は「所詮は殺しだ。殺しに正義なんて存在しない。せめて理由のない虐殺はするな。周りに『英雄』と言われても増長、勘違いはするな。あと殺してるんだから、いつか殺されるだろう。殺す覚悟と殺される覚悟はしておけ。だが『正義』を口にする人殺しは例外なく独裁者か悪人だ。殺しても胸を痛める必要はない」とメンバーに言っていた。メンバーはかつての仲間を殺す覚悟はしたのだろう。
だが彼女達の辛そうな顔を見ていて俺は気が変わった。俺だって知人は殺せない、彼女達を戦いに加えるのはやめよう、と思ったのだ。

俺も甘いなぁ。この甘さが仲間を死地に追いやる事もある。甘さは時として罪にもなるが、俺は『甘さ=人間らしさ』だと思っているので、仲間の甘さの尻拭いは自分の仕事だとかつては思っていた。
前々世で中二病をこじらせた俺は教授に「誰かの犠牲の上に俺は立っているんだ」と言うと教授は「『パレート最適』ですね。『他者の不利益なくして利益が発生しない状況』なんですね。ですがそういった状況でも『犠牲になる人を少なくする方法』や『犠牲を出さない方法』を探す事は出来ます」と言った。
答えなんて経済学の世界では昔から出てるじゃん!どういう事だよじいさん!じいさんって誰やねん!

つまり、勇者に出来る事と言ったら『犠牲が出来るだけ出ないように足掻く事』しかないのだ。そしてそれでも『勇者は決して正義ではない』という事を忘れてはいけない。
「殺す事は簡単だ。だが『死者を出さないでその場を収める事』は勇者にしか出来ない」師匠である先代の勇者は言っていた。

俺が未だに勇者ならばこの場で死者を出さないで乗り越える事が出来るはずだ。
俺は一人で軍勢の前に進んで名乗り出た。
「俺は勇者の生まれ変りだ。我々、学園都市は亡命者を受け入れている。この中に学園都市に亡命したい者はいないか?」
力を見せつけて平伏させるのは愚策だ。
「我々はお前らを滅ぼす力を持っている。だから我々に従うのが得策だ」などと言うのは核爆弾を持った独裁国家と同じで脅迫だ。勇者の手口ではない。
ここで俺に求められているのは「勇者と信じてもらえる表現力」と「思わず亡命したくなるプレゼン力」だ。
だが現実は非情だ、軍勢の中に学園都市に亡命してこようという者はいなかった。
俺、前から感じてたけど勇者と言っても勇者のカリスマ性少ないよな。本当に俺って勇者なんだろうか?
亡命どころか誹謗中傷が聞こえてくる。
「オイコラ偽勇者!」
「何で勇者が学園都市作るんだよ?説明出来るなら説明してみやがれ!」
何で学園を作るのか?と言ったな、ここで女学生の素晴らしさを小一時間語っても良い。
だけどここで俺が若い女の子がどれだけ好きか語ってもお前ら引くじゃん?
お前らだって好きなクセに・・・。
だいたい何で男って体裁つくろうんだろ?
制服モノのAV見た事ないヤツなんて知らない。
キャバクラで水着デーより制服デーのほうが混むだろ?
アイドルだって制服風のコスチュームを纏うじゃねーか。
元生徒と結婚した教師だって、どうせ生徒が在学中に付き合ってたのに「気持ち悪い」じゃなくて「アイツ上手い事やりやがったな」って言われるんだよ。
飲み屋で本音で腹割って話す時には「学生好き」って言ったら「そりゃそうだ」って話になるのに、テレビで有識者が「理解できない」って語った時にはそいつに「理解出来ないなら黙ってろ!クソインポのにわかが!」って言う人いないんだよ。なんで本音じゃなくて建て前がまかり通るんだろ?そんなの日本だけかと思ってたけど、異世界でもそうなんだもんな、参っちまう。
何で「若い女の子が大好きだ」って言っちゃダメなんだろ?「やーいロリコン!」って言われたくないから?う~んわからん。

そんな事を考えながら軍勢に近づくと集団の先頭付近に檻になっている馬車があった。
檻の中を覗き込むと血液が沸騰した。
檻の中には俺の両親が閉じ込められていたのである。
前世の記憶を取り戻したからと言って今世での事を否定するわけではない。
今まで育ててくれた両親は変わらず大切な存在だ。
国王は保険をかけていた。もし勇者が本物の生まれ変わりで本当に強かった場合七十万の軍勢ではどうする事も出来ない。だが勇者には「情にもろい」という弱点がある。今世での育ての親を人質に取れば勇者の命を取れるかも知れない。
両親に手を出したんだ、この喧嘩善悪じゃない。
売られた喧嘩は利子をつけて買わなきゃいけない。
両親が人質に取られている?要は両親が無傷だったら良い訳だろ?
敵を殺さない?知るかよ!俺は聖人君子じゃねーんだ、両親に手を出されたらそれこそ何でもアリだろうが!
俺はキレながら檻にダッシュした。
両親は国王にとって切り札である。
腕利きの騎士達が檻の周りを取り囲んでいる。
だが誰と比べて腕利きか考えるべきだったな。
騎士達は俺と比べるとデク人形みたいなモンだった。
俺は馬車の周囲にいる全ての人に麻痺パラライズの呪文をかけた。
この呪文は相当の実力差がないとかからない。
だが民衆が操られて俺に攻撃をしかけてくる場合には、この呪文が使い勝手が良い。民衆を殺すわけにはいかないからである。俺にとって民衆も腕利きの騎士も大差ない。馬車の周りの人々がバタバタと倒れる。
もちろんこの呪文にも欠点はある。
「広範囲には展開出来ない」という事である。
もし広範囲に展開出来ていたら軍勢全てにこの呪文をかけただろう。だが呪文の有効範囲は三万人といったところか。俺だから三万人なのだ。普通は数人である。
もう一つ「人間以外には効果はない」という事もある。
馬車の周りの兵士はバタバタと倒れたのに、馬車の馬はピンピンしている。
馬車を奪って逃げようかと思ったが、地面にバタバタと倒れて麻痺している人達を曳いてしまうので檻を壊して両親を助け出すことにした。
大立ち回りになるかと思ったが、殺到してこようとしている軍勢は倒れている三万人を乗り越えなくてはいけないし、死んでいるなら踏んずければ良いだけなのだが倒れている人達は麻痺しているだけなので、よけながら通らなきゃいけない。俺のところに来るまでは時間がかかるようだ。「相手を足止めするには相手を殺さずけが人にする。そうすれば怪我していない人が怪我している人を背負うので行軍ペースが遅くなる」などと言うが、場合によっては相手は殺さないほうが足止めになるらしい。兵法書でも書こうかな?その兵法書を学園で学ばせる・・・良いかも知れない。

「父さん、母さん久しぶりだね」俺は鉄製の檻を引っ張って曲げた。のれんを持ち上げるような手軽さで簡単に鉄が曲がったのだ。前世の事を思い出すまでこんな事は出来なかった。どういうメカニズムなんだろうか?
両親は倒れている。誰だこんな事をしたのは!両親を抱え上げてみると麻痺パラライズの呪文がかかっていた。あ、馬車の周りに呪文をかけた時に一緒に両親にも呪文かかっちゃったんだね。・・・誰って俺か。
麻痺したままの両親を両肩に担ぐと、一旦移動魔法で街に戻った。
戻った先には勇者パーティのメンバー達がいた。
「この人達は誰なんですか?」エマが俺に聞く。
「今世での俺の両親。麻痺パラライズの呪文かかってるから治療よろしく」俺はそれだけ言うと移動魔法でいなくなった。

俺は元の戦場に移動魔法で戻ったのではない。
両親を人質にする卑怯さは見事だった。思わず冷静さを失った。その卑怯さを見習わなくてはいけない。いや、別に怒っている訳ではない。人質を取る卑怯さを見習おうと思っただけだ。
俺は移動魔法で王城に飛んだ。
そこは王城の食堂で王女と国王が食事をしていた。
・・・こいつ、部下たちに進軍させておきながら自分は昼めし食ってるのかよ。
よく考えたら昼めしくらいはどんな時だって食う。たまたま部下を進軍させていた時だった、それだけだ。
たまたま俺の虫の居所が悪かった時に国王と王女が昼めしを食っていて「何昼めし食ってやがるんだよ!」って俺が勝手にキレたってだけだ。
「お前は誰だ!」国王が怒鳴る。
「俺はダン。狩人の息子だ。あ、そういえば前世ではケイって名前で勇者なんてやってたな」俺は白々しく言った。
「ゆ、勇者の生まれ変わりだと!?ここには何で来た!?今、我が国の軍勢に攻められているのではないのか!?」国王は唾を飛ばしながら言った。
「何で来たと言われても・・・移動魔法で飛んできたとしか言いようがないけど。今も攻められてるよ」俺は国王の唾にあたらないように掌で遮りながら言った。
「移動魔法だと!?この王城には結界は張られていて移動魔法では転移して来れないはずだが・・・」国王は呟くように言う。そりゃそうだ、王城に好きな時に好きなように転移出来たらセキュリティもへったくれもあったもんじゃない。
「知らないよ、何で俺がここに転移出来たのかなんて。結界が弱かったんじゃないの?・・・ってそんな事よりも俺、両親を人質に取られたんだよね。いや、見事な作戦だと思うよ。結果的には失敗したみたいだけどね。だけど俺もアンタを見習って人質を取ろうかな、と思うんだよね。だからアンタら親子、人質になってよ」俺は言い終わると
国王と王女に麻痺パラライズの呪文をかけると二人を肩に担いで、戦場に移動魔法で飛んだ。
戦場はてんやわんやであった。
三万人が一度に麻痺したのである。治療に僧侶たちは大わらわであった。
何とか場が落ち着き始めた頃、国王と王女を担いだ俺が軍勢の前にあらわれた。
「はーい、ちゅうもーく!この二人が誰だかわかりますか?そうです国王と王女です。俺は正々堂々と勝負をするべきだと思いました。でも国王から学んだのです、国王は俺の両親を人質にしたのです。というか私の前世、私が勇者だった時に私を暗殺したのは国王です。綺麗事は必要ない、卑怯と言われようと結果を出さなくてはいけない。私はこの二人を人質にする事にしました。『人質・暗殺なんて卑怯じゃないか?』俺はそう思いました。だけど、国王がそうではないと教えてくれました。ありがとう国王!」
俺の演説を軍勢は黙って聞いている。
先に人質を取ったのは国王だ。それに「勇者を暗殺したのは国王だ」という噂はあった。
三万人を一斉に麻痺させた手腕を見るにこの少年が勇者の生まれ変わりというのは間違いない。そしてその勇者の生まれ変わりの少年が「自分を殺したのは国王だ」と言っている。それも本当なのだろう。
というより軍勢はこの少年を勇者の生まれ変わりだと疑わなかったし、勇者の言う事を疑おうとは思えなかった。勇者は国王より人気があり発言力がある・・・だからこそ国王は勇者を暗殺したのだ。
「軍勢を引けば国王の身柄を王国に返そう。だが王女はこれからも人質として学園都市にとどまってもらう。我々の要求を飲めばそのうちに王女を返すと約束しよう。我々の要求は二つだ。一つ、『王国は学園都市の自治を元勇者がする事を認める』一つ、『王国は学園都市に移り住む者およびその家族に攻撃、罰則を加えない』以上だ。この二つを守る限り、国王が勇者を暗殺した事実は秘匿されるし、王女の無事も約束される。どうする?」俺は国王がしゃべれるように呪文を解くと担いでいた国王を地面に降ろした。
「・・・この者の言う通りにせよ」国王は苦虫を噛み潰したような表情で軍勢に言った。
こうして軍勢は王都へ引き返した。俺をどうこうしようという気は二度と起きないだろう。俺がその気になれば国王をいつでも殺せる事を彼らは知った。

忘れていたが王女を麻痺させて担いでいるままだ。
「ごめんごめん忘れてた」俺は担いでいた王女を肩から降ろすとかけていた呪文を解いた。
「クッ殺しなさい!」・・・何てテンプレートな事を言う王女様だろうか?
「殺しはしないけど、いくつかこちらの言う事に従ってもらうよ。君の愛する父上の事を想うなら君に拒否権はないと思うんだけどね」まるで悪者のような事を俺は王女に言う。
「・・・私に何を要求する気ですか!?」絶望に染まった表情で王女が俺に言う。
「君には学園に生徒として入学してもらう。あとは好きに動き回れば良い。君を拘束する気はない・・・いや、王国に帰られるのは困るけどね」俺はドキドキしながら言った。もし彼女が了承したら学園生第一号だ。
「・・・へ?学園に通えば良いんですの?」王女はマヌケな声を出した。もっと卑猥な事を要求されると思ったらしい。・・・要求されたらするつもりだったのか?もっと卑猥な事を要求すれば良かった。
「要求はもう一つある。来年沢山の生徒が入学してくる。だから君には学生の立場から沢山のアドバイスが欲しい。出来れば君は生徒会役員をして欲しい」ビックリした。何でこんなに俺、弱腰なんだろ?人質の少女に「出来れば生徒会役員をやって欲しいなぁ・・・なんて。いや、断ったっていいんだよ?」みたいな態度取らなくたっていいじゃないか!もっと強気で「やれ!」と言えばいいじゃない!
ここで前々世での「もてない男の悲しい性」を発揮しなくても良いじゃないか。
女性に嫌われる事に異常なまでの恐怖を久々に感じた。
これから俺はハーレムを作るんだからもう少し強気にならなくちゃいけない。
「王女とは言え君は学園の生徒だ。君はここでは生徒として扱われる。君は教師や周りの学生から名前で呼ばれる事になる。・・・で、そういえば君の名前を聞いていなかった」俺は王女に名前を聞いた。
「・・・アンナ。知ってると思うけど王国の王女。15歳」
王女は15歳なのか、つまり生まれ変わった俺と同い年なのか。
「私はいつ、どのようにすれば開放されるのですか?」アンナは俺に聞いた。
「そうだな・・・学園を卒業したら開放って事で良いかな?」俺は思いつきを口にした。ぶっちゃけ人質なんて必要ない、王城に好きな時に飛べて、殺そうと思えばいつでも国王を殺せる・・・国王の存在が人質みたいなもんだ。なのにアンナを学園都市に住まわせようと思ったのは、女の子の意見が欲しかったからだ。勇者パーティの女性たちは確かにいる・・・だけど彼女たちは過酷な魔王討伐の旅を経験していて、あまりにも野宿に慣れすぎている。ジュリアに学生寮の意見を聞こうと思っても「良いんじゃないの?別に屋根さえついてれば。別に屋根ついてなくても雨風しのげれば良いんだけどね」という答えが返ってきて正直「違う、聞きたい答えはそうじゃない」と思ったものだ。
俺はアンナにサンプルとして学園都市に住んでもらって、ダメ出ししてもらいたかったのだ。アンナのような高貴な存在なら我慢せずに不満をぶちまけるだろう、と。
「『良いかな?』と私に聞かれても答えようがありません!学園はどれくらいの期間通えば卒業できるのですか?」アンナは聞いた。そりゃ「いつ自由の身になれるのか」気になるよな・・・まぁ、人質にしたの俺だから同情するの変だけど。
だけど学園の卒業までの期間か。考えた事もなかったな。一番最初に考えておくべき事だった。
女子高っていうくらいだから、高校だろう。高校は三年間と相場が決まっている。
そうじゃない!学園といったら、初等部、中等部、高等部、大学に分かれてるんじゃないの?
でもなぁ・・・いくら俺が「ロリも好き」とは言え、初等部の女の子がいても嬉しくないな。
光源氏みたいに好みのタイプに幼い女の子を教育するのもアリっちゃアリだけど、それも気の長い話だよなぁ。
アンナはこの場で思いつきで決めているとは思っていない。
「学園は15歳~18歳の女性が通う女学校だ。留年しなければ18歳には卒業し開放される」俺は答えた・・・というか今決めた。だって初等部から大学まで手広くやったら教師を見つけなくちゃいけないし、雇う手間だって面倒くさいじゃん。光源氏計画で幼い女の子を育成していくにしたって初等部作ったら何千人、何万人って女の子を育成していかなきゃいけないんだよ?体がいくつあったって無理だよ。
「・・・で、その学園で一体何を学ぶんですか?」アンナは質問した。当然の質問だ。
・・・え?この子は一体何を言っているのだろうか?イメクラ嬢が女学生の恰好をする時、本当に勉強する必要はない。AV嬢もまた然りだ。
大事な事は女の子が女学生の恰好をしている事であり、学ぶ事ではない・・・そんなのは当たり前の事だ。この子は頭が悪いのだろうか?だがそれをそのままアンナに伝える事は出来ない。イメクラ、AVをアンナに説明出来ないし、説明出来たとしても、アンナに毛虫のように嫌われそうな気がする。せっかくハーレムを作ってもハーレムの女の子にナメクジのように嫌われていたんじゃ意味がない・・・というか生きていけない。
「学ぶ事・・・そうだな・・・魔王討伐の方法?あと、一般教養として座学を少し?」俺は出来るだけフワっと答えた。詳しく聞いてくれるな。俺だって決めてないんだ。
「何で疑問形なのかは気になりますが・・・大体はわかりました。だけどわからない事もあります。魔王はあなたが倒したのではないですか?それに学園に通う全ての生徒が魔王を討伐出来るようになるのですか?」アンナは俺がその場しのぎに適当な事を言ってるとは知らずに真面目に聞いた。
「魔王を倒したのは俺だ。・・・えぇっと・・・だけど・・・もしかしたら復活するかもしれないじゃん?・・・それに復活しないでも新しく魔王を名乗るヤツがあらわれるかも知れない。・・・それに魔王討伐の方法が花嫁修業になる日が来るかも・・・それに魔王討伐方法がおばあちゃんの豆知識的な・・・」
「あぁ!もぅ!何でそんなモゴモゴ言うんですか!しかも後半は何を言ってるのかサッパリわかりませんでした!ですが魔王復活に備えて戦力を増強するべきという考えは私も持っていました。ただ重要な質問に答えていただいていません。もう一度聞きます。学園に通う全ての生徒が魔王を討伐出来るようになるのですか?」アンナにとっては重要な事のようだ。彼女も王族、国の未来を憂いている。未来に魔王が復活した時、勇者の力を借りなくても学園で訓練していたら魔王が倒せるようになるのであればそれに越した事はない、他力本願ではなく自力で魔王を倒せたほうが良いに決まっている。
「結論から言えば・・・『誰でも俺の特訓に耐えられれば魔王を倒せるくらいにはなる』才能は一切必要ない。だが俺の特訓は地獄らしいぞ。勇者パーティの連中は『魔王討伐なんて勇者の特訓に比べたらお遊戯みたいなモンだった』って言ってたからな。あいつらは悲しいくらい才能が無かった。それでも一人で魔王くらいなら倒せるぞ?魔法使いのサラの魔法を封印して物理攻撃だって魔王を倒せるんじゃないか?」俺は急に饒舌になりアンナの質問に答えた。嘘をつく必要がないというのは素晴らしい。俺が今言った事に一切の嘘はないが、実は都合の悪い事は言っていない。勇者パーティの選考基準は100%見た目だったのだ。才能のある人間には目もくれず、「あ、この子と一緒に歩けたら素敵だな」と思いながらメンバーを選んだのだ。その事はアンナには話していない。
だが特訓では一切手を抜いていない。というか逃げ出そうなどと思える訳がない。なんせ逃げだす体力すら特訓で残っていなかったのだから、それどころか「もうついていけません。辞めさせてもらいます」と口を開く気力すら残さなかった。アンナは「特訓に耐える」という事がどれだけすごい事かを知らない。倒れようにも死のうにも体力回復の呪文をかけられ、無理矢理引きずり起こされる。パーティメンバー達は何回「お願い・・・もう死なせて・・・」と思ったかわからない。だからパーティメンバーは勇者の事を異性としては見れなかった。どちらかというと勇者を老師のように思っていたのである。「そういやパーティメンバーに勇者以外に男いないね」とは思う事はあっても、自分が下心があって選ばれたとは思っていなかったのである。「美少女たちに男として見られていない」と気付いた日の夜には、俺はひっそりと枕を涙で濡らした。

アンナは表情を緩めた。心なしか少し俺に心を開いた気がする。そして言った。
「あなたの教えを聞いていれば魔王を倒せるようになるんですね?ではあなたを信用してあなたに協力します。ただ大事な事を聞いていません。学園への入学資格、入学試験はどのようなものですか?私は捕虜ですし特例だとしても、他の者はどのように入学申し込みをすれば良いのですか?願書はいつまでに出さなくてはならないのですか?募集は何名を考えているのですか?入学希望者に必要なスキルはあるのでしょうか?それ以外にも・・・・」
「ストップ!ストップ!それって決めなくちゃいけないの?何も考えてないんだけど・・・」俺はつい本音を言ってしまった。決めているはずがない。俺が入学資格を決めるなら「美少女であること」以外に何かがあるわけがない。
勇者パーティを決めるときだってそうだった。
真面目な話、中途半端な才能は必要ない。才能を持っているが故のおごりは成長の妨げである。
俺を超える才能を持っている者は俺の特訓を受ける必要はない・・・そんなヤツは見たことがないが。
つまり才能などは邪魔なだけなのだ。最低限の適正は見るが「お前は魔法使いには向いてないみたいだ。じゃあ戦士やってみないか?」くらいのものだ。ジュリアは最初、魔法使い志望だった。だが魔力が乏しいジュリアを戦士にしたのは俺だ。ジュリアはぶっちゃけ何の才能もなかった。だが目を見張るような美少女だったのだ。俺がジュリアを選んだのはその一点のみだ。
試験なんかやってしまったら、美少女が落ちて醜女しこめが残る可能性もあるじゃん。
「決めなくちゃいけないに決まっているでしょう!試験をしないと誰が優秀かの判断材料がなくなるんだから!」アンナな呆れたように俺を見た。その目は「何だこのいい加減な男は?一旦は見直したのに・・・」と言っていた。
「ハッキリ言って入学前の優秀さに俺は興味がない。試験よりもその子の潜在能力を見るために一人ひとり面接がしたい」物は言いようだ、「美少女だったら合格、ブスだったら不合格」という面接をやるだけだ。そして美少女を選んだ理由は「この子の潜在能力に惹かれた」と言えば良い。見えないからこその潜在能力なのだ。美少女が魔王を倒せば嘘が本当になる。それに魔王を倒した伝説の少女はブスより美少女のほうが良いだろ?
「・・・わかりました。では近々、王都の王城で面接を行いましょう。お父様に取り急ぎ通達いたします。このお触れは近隣の国々にも出しておきましょう」アンナは言った。途中色々あったが、何とか俺の事を信じたようだ。
「俺は移動魔法で近隣の国々に簡単に行く事が出来る。他所の国でも面接日を設けて欲しい」よその国の美少女が「遠いから」なんて理由で面接を受けられなかったら大変だ。
「わかりました。お父様から他国に通達してもらいましょう」アンナはそう請け負った。

アンナにはスーパーバイザーとして学園都市作りに参加してもらおう。
後は両親にちょっと離れたところに住んでもらわないと。
いや、男ならわかると思う。
俺は酒池肉林の生活がしたい、でもその姿を両親に見せたくはない。
両親にどこに住んでもらうか、コレは学園都市作りと同じく大きな課題だ。
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