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固定観念
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女性ばかりであるのは偶然ではない、と知ったのはかなり後からであった。
鬼道で国を納めたの卑弥呼は女性であったし、魔女として処刑されたジャンヌ・ダルクも女性であった。
何故か魔術を使える者は女性が多いとの事だ。
人払いの結界が施されて、魔術を使えない者を遠ざける・・・という事は自然と男性を遠ざけるという事になるのだ。
勿論、魔術を使える男性が全くいない訳ではない。
劉備に「魏延は反骨という骨があります。
この男は必ず裏切ります。
今、首を斬るべきです」と骨相学という占いを進言した諸葛亮は男だし、猛獲軍が攻めてきた時に諸葛亮が扇子を一振りすると扇子から妖獣の軍勢が現れて、猛獲軍を薙ぎ倒したという。
昔から魔術に優れた男性も数は少ないがいる、という事だ。
「佐々木大宣です。
皆さんと同じ大学二回生です。
趣味は旅行ですが最近行ってません。
よろしくお願いします」
なんてつまらない自己紹介だろうか?と大宣は思った。
しかし勉学にいそしみ、空いた時間でアルバイトをやっている苦学生などこんなものである。
特に趣味に興じるでもなく、遊んでいる時間もなく、付き合いが特別悪い訳ではないが知り合った学友と交友を深めるために遊びに行く事も飲みに行く事もない。
授業は一番前で一言一句聞き逃さないように聞いている。
一度理解出来なくなると、二度と追いつけなくなる気がするからだ。
大宣の大学で一番前で授業を受けている者は相手にされない。
それどころか「サボらないのは要領が悪いヤツだからだ」などとダメなヤツのレッテルを張られる事もある。
一番前で真面目に授業を受けているヤツに他のヤツが話しかけるのはテスト前にノートを借りたい時だけだ。
一度大宣はノートをよかれと思って知り合いに貸した。
すると大宣のノートのコピーは一般教養だったので学部学科を越えて広まり、大宣のノートと知らない生徒同士が大宣の近くでノートのコピーを見ながら「コイツ、クソ真面目にノートとってるよな。字は汚いけど」と言っていた。
その事にショックを受けた大宣は人にノートを貸すのはやめた。
「菅原早織」、同じく二回生です。
祖父から魔術を習っていたのだけど、祖父が心筋梗塞でこの世を去ってからは、魔術を研究する場所を探していたんです。
私が習っていたのは探索者としての能力です。
魔術の研究室もダウジングで見つけたという訳です。
よろしくお願いします」一般入試の女の子は自己紹介を終わらせ頭を下げた。
「ねえダウジングの結果、魔術を研究している研究室っていくつ見つかったの?」洋子先輩が言う。
「隠蔽の結界が張られている場合、私程度のダウザーでは全ての研究室を発見出来る訳ではありません。
私がダウジングで探し当てた魔術を研究する、研究室は全部で6です。
その中から化学研究室を選んだ理由は化学が得意だからです。
他に大した意味はありません」早織さんはハキハキと答えた。
そうだった。
ここは理系の学部だったんだ。
一般入試を受けた人が化学が得意でも何もおかしくない。
文系の人間がここにいる事のほうが場違いなのだ。
だが洋子先輩は他の部分が気になったようだ。
「6つ?2つは確定しているし、2は怪しい研究室に目星はつけているんだけど。
6も簡単に探し当てるとはさすがダウザーね。
後でその研究室教えてもらえるかしら?」さすが洋子先輩は 抜け目がない。
「小紫栞です。
同じく二回生です。
私は手を触れずに物を動かす事が出来ます。
高校時代の先生が、大橋先輩の恩師で化け物と呼ばれてた私の引き取り先である研究室と大学を紹介してくれたんです。
・・・何で『化け物』って呼ばれてたかは皆さんの想像通りです。
この研究室に来た人達が持つ能力を、能力を持たない人に見られた結果、『化け物』と呼ばれるようになりました」小紫さんはボソボソと自己紹介した。
オリエンテーションでメモ書きしようと二回生3人は筆記用具をテーブルの上に広げていたが、小紫さんの持ち物である消しゴムはパタパタと落ち着きなく縦になったり横になったりしていた。
「魔術には二通りあるわ。
私や菅原さんみたいに身につける場合と、佐々木君や小紫さんみたいに先天的に持っている場合。」洋子先輩は説明した。
「ちょっと待って下さい。
小紫さんの持っている力は魔術なのですか?
どう考えても俺には超能力に見えるのですが。
それと俺の『勘が良い』というのは魔術か魔術じゃないか以前に能力なんですか?」大宣は洋子先輩に言った。
「超能力、神通力、魔法、呪術、法力、修験力・・・
これら科学で説明がつかない力を我々はひと纏めにして『魔術』と言います。
これらは我々の指導で更に姿を変えます。
『魔術は斯くあるべきだ』などという固定観念は邪魔です。
捨てて下さい」洋子先輩は言った。
こうして化学研究室の魔術研究は始まった。
鬼道で国を納めたの卑弥呼は女性であったし、魔女として処刑されたジャンヌ・ダルクも女性であった。
何故か魔術を使える者は女性が多いとの事だ。
人払いの結界が施されて、魔術を使えない者を遠ざける・・・という事は自然と男性を遠ざけるという事になるのだ。
勿論、魔術を使える男性が全くいない訳ではない。
劉備に「魏延は反骨という骨があります。
この男は必ず裏切ります。
今、首を斬るべきです」と骨相学という占いを進言した諸葛亮は男だし、猛獲軍が攻めてきた時に諸葛亮が扇子を一振りすると扇子から妖獣の軍勢が現れて、猛獲軍を薙ぎ倒したという。
昔から魔術に優れた男性も数は少ないがいる、という事だ。
「佐々木大宣です。
皆さんと同じ大学二回生です。
趣味は旅行ですが最近行ってません。
よろしくお願いします」
なんてつまらない自己紹介だろうか?と大宣は思った。
しかし勉学にいそしみ、空いた時間でアルバイトをやっている苦学生などこんなものである。
特に趣味に興じるでもなく、遊んでいる時間もなく、付き合いが特別悪い訳ではないが知り合った学友と交友を深めるために遊びに行く事も飲みに行く事もない。
授業は一番前で一言一句聞き逃さないように聞いている。
一度理解出来なくなると、二度と追いつけなくなる気がするからだ。
大宣の大学で一番前で授業を受けている者は相手にされない。
それどころか「サボらないのは要領が悪いヤツだからだ」などとダメなヤツのレッテルを張られる事もある。
一番前で真面目に授業を受けているヤツに他のヤツが話しかけるのはテスト前にノートを借りたい時だけだ。
一度大宣はノートをよかれと思って知り合いに貸した。
すると大宣のノートのコピーは一般教養だったので学部学科を越えて広まり、大宣のノートと知らない生徒同士が大宣の近くでノートのコピーを見ながら「コイツ、クソ真面目にノートとってるよな。字は汚いけど」と言っていた。
その事にショックを受けた大宣は人にノートを貸すのはやめた。
「菅原早織」、同じく二回生です。
祖父から魔術を習っていたのだけど、祖父が心筋梗塞でこの世を去ってからは、魔術を研究する場所を探していたんです。
私が習っていたのは探索者としての能力です。
魔術の研究室もダウジングで見つけたという訳です。
よろしくお願いします」一般入試の女の子は自己紹介を終わらせ頭を下げた。
「ねえダウジングの結果、魔術を研究している研究室っていくつ見つかったの?」洋子先輩が言う。
「隠蔽の結界が張られている場合、私程度のダウザーでは全ての研究室を発見出来る訳ではありません。
私がダウジングで探し当てた魔術を研究する、研究室は全部で6です。
その中から化学研究室を選んだ理由は化学が得意だからです。
他に大した意味はありません」早織さんはハキハキと答えた。
そうだった。
ここは理系の学部だったんだ。
一般入試を受けた人が化学が得意でも何もおかしくない。
文系の人間がここにいる事のほうが場違いなのだ。
だが洋子先輩は他の部分が気になったようだ。
「6つ?2つは確定しているし、2は怪しい研究室に目星はつけているんだけど。
6も簡単に探し当てるとはさすがダウザーね。
後でその研究室教えてもらえるかしら?」さすが洋子先輩は 抜け目がない。
「小紫栞です。
同じく二回生です。
私は手を触れずに物を動かす事が出来ます。
高校時代の先生が、大橋先輩の恩師で化け物と呼ばれてた私の引き取り先である研究室と大学を紹介してくれたんです。
・・・何で『化け物』って呼ばれてたかは皆さんの想像通りです。
この研究室に来た人達が持つ能力を、能力を持たない人に見られた結果、『化け物』と呼ばれるようになりました」小紫さんはボソボソと自己紹介した。
オリエンテーションでメモ書きしようと二回生3人は筆記用具をテーブルの上に広げていたが、小紫さんの持ち物である消しゴムはパタパタと落ち着きなく縦になったり横になったりしていた。
「魔術には二通りあるわ。
私や菅原さんみたいに身につける場合と、佐々木君や小紫さんみたいに先天的に持っている場合。」洋子先輩は説明した。
「ちょっと待って下さい。
小紫さんの持っている力は魔術なのですか?
どう考えても俺には超能力に見えるのですが。
それと俺の『勘が良い』というのは魔術か魔術じゃないか以前に能力なんですか?」大宣は洋子先輩に言った。
「超能力、神通力、魔法、呪術、法力、修験力・・・
これら科学で説明がつかない力を我々はひと纏めにして『魔術』と言います。
これらは我々の指導で更に姿を変えます。
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捨てて下さい」洋子先輩は言った。
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