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海星

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母子

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 「大宣君は早坂教授から愛する早坂さんを取り返すつもりなのよね?」洋子先輩は言う。

 「はい、そのつもりです」大宣は答える、すると
  
 「今回の戦い私は参加しないわ」洋子先輩は言った。

 「この業界、師匠殺しの罪は重いの。

 弟子は師匠に使い捨てにされるのに、弟子が師匠を殺すのは重罪・・・理不尽よね。

 まあそうでもしないと無法状態になっちゃうからね。

 師匠は弟子を殺し放題だし、弟子は師匠を殺し放題・・・そうならないように師匠殺しを取り締まってるのかも知れないわね。

 早坂教授は間違いなく私の師匠よ。

 付き合いの長さから考えても、私は早坂教授の味方するのが筋だわ。

 ・・・でもぶっちゃけ私、あのババアの事大嫌いなのよね。

 ついでに大宣君の事・・・嫌いじゃないわ。

 親友を助けようとしてくれてるなら、なおさら心情的には大宣君の味方をしたい。

 だから私は旅に出る事にしたわ。

 ここにいたら師匠の助太刀をして研究室の裏切り者と戦わなくちゃいけないからね」洋子先輩はそれだけ言うと消えようとした。

 「洋子先輩!最後に何か一つアドバイスを下さい、何でも良いんです!」大宣は言った。

    「笑いなさい。

    辛い時、苦しい時、泣きたい時、笑いなさい。

    精神論じゃないわ、ボクサーがお腹を打たれて苦しい時に笑うわよね?

    凶悪犯が護送中に笑うわよね?

    相手に『何ともないんだ!

    効いてないんだ!』というのをアピールする時、無表情でも良いんだけど・・・本当に効いてる時、無表情って難しいのよね。

    そういう時にどうすれば良いか・・・

    とにかく笑うのよ。

    強がりバレバレだと思うじゃない?

    『アイツ、この局面で笑ってやがる』と思うバカは意外と多いのよ。

    しかもその場にいる当事者にはほぼこのブラフはバレないわ。

    早坂教授は魔術師として何枚も大宣君より上手よ。

    勝つ可能性は限りなく低い。

    ブラフを使ってでも、不正をしてでも、運にたよってでも、そこにある全てを利用して・・・何でも良いから勝ちを拾いなさい。

    私からはそれだけだわ」

 洋子先輩は「ほかの研究室のメンバーにも何も言わないでね」と言い残して消えた。

 知ったら菅原さんと小紫さんは愛する大宣の味方をするだろう、と。

    魔術師は自分勝手な生き物ではあるが、女の魔術師は愛する男のために命をかけて戦う事は珍しくないそうだ。

    早坂教授も学生時代、教授に恋をして教授の子を産んだその子が葵ちゃんらしい。

 つまり早坂教授の旦那さんも早坂教授とかつて呼ばれた人だったらしい、ややこしいな。

    菅原さんと小紫さんが大宣に恋しているかどうかは別として、二人を戦いに巻き込むのは本意ではない。

 そうならないように、戦いに2人を巻き込まないように洋子先輩は何も言わずに消えたのだ。




   

 


 以前洋子先輩に大宣は質問した。

 「敵が見当識を騙して隠れていたらどうしますか?」

 「それを見当識を騙すのが得意技の私に聞く?」

 「いや、俺が洋子先輩と敵対する訳がないじゃないですか!

 もし敵が見当識を騙してたらですよ」

 「今回はわかった事にしてあげるわ。

 そうね・・・私は見当識を騙すカラクリを知ってるんだけど・・・

 今回はそのネタばらしはやめておくわ。

 私だったら・・・「ここにかくれてるのはバレてるんだぞ」ってブラフをかますわね」

 「そのブラフは有効なんですか?」

 「隠れたって無駄っていわれたら出て行くしかないでしょ?

 もし本当だったら隠れてるところを攻撃されるしかないんだから。

 いかにブラフを信じさせるかは技術のみせどころだけど、

 ブラフを信じさせたら見当識はもう騙そうとは思わないでしょうね。

 敵は『もうこの手は通用しない』と思ってるでしょうからね」

 




 大宣は無人の研究室に入り一人で話し始めた。 

 「教授、初めまして、ですよね?」

    「・・・・・・」

    「佐々木大宣といいます。

    娘さんとお付き合いさせていただいています。」

    「おかしいと思ったんですよ。

    葵ちゃんに『義理の母親に洗剤入りの食事を出されて、それ以来義理の母親とはまともに話していない』って言った時に葵ちゃんが『母親に毒物を食べさせられるのはよくある事でしょ?』みたいな事を言ったんですよ。

    その時は場の空気を和ませようと葵ちゃんが冗談を言ったと思ってたんですけどね?」

    「・・・・・・」

    「アンタ、魔術実験のために葵ちゃんに何度も毒を飲ませたな?」

    「・・・・・・」

    「何とか言えよ」

    「・・・・・・」

    「葵ちゃんを害しようとするんなら俺の敵って事で良いんだな?」

    「・・・・・・」

    「しかも実の娘の記憶を奪ってどうするつもりだ?」

    「・・・それが師匠に対する口のききかたか?

    無礼にも程がある」大宣以外無人のはずの研究室に一人の女性が現れた、早坂教授だ。

 早坂教授は「大宣が見当識を騙すカラクリを洋子先輩から聞いている」と思ったのかもう消える気はないようだ。

 ひとまず洋子先輩直伝のブラフは功を奏したようだ。

 早坂教授はとても成人している娘がいるようには見えないほど若々しく見えた。

 洋子先輩は「ババア」と言っていたがとてもそうは見えない。

 これでも「ババア」という事は魔術師はみんな若々しいのかも知れない、と大宣は思った。




    「俺の師匠は洋子先輩であってアンタじゃない。

    ついでにアンタは葵ちゃんの母親でもない。

    そう扱われるような態度をアンタ、取ってないだろう?」大宣は出来るだけ横柄に言った。

    「・・・それはまあ良い。

    お前、どこに葵ちゃんを連れ去った?

    ここには葵ちゃんはいないとは思ったんだけどな。

    お前が葵ちゃんを連れて消えられない事はわかってたからな」

 大宣の言った事はブラフだ。

 洋子先輩が二回生達を連れて消える事はなかった。

 けっこうなピンチでもだ。

 二回生と一緒に消えなかった事は簡単に理由を推測出来る。

 一緒に消えられなかったのだ。

 一緒に消える魔術がないのだ。

    なので大宣はここに早坂教授と葵ちゃんが隠れている可能性は低いと思っていた。

 案の定ここに葵ちゃんはいなかった。

 大宣は早坂教授を倒し、葵ちゃんを救出せねばならない。

 だが最低条件として早坂教授から葵ちゃんをさらって今監禁している場所を聞かねばならない。

 もうすでに葵ちゃんが死んでいる可能性も否定出来ないが、それはあまり考えたくない。

 大宣は考えた。

 どうやって葵ちゃんの居場所を早坂教授から聞き出そうか?

 そう思っていると早坂教授から葵ちゃんがいる場所をバラした。

 「良いのか?こうしている間にも合宿所にいる葵は食事も摂らず水も飲まず衰えていくぞ?」

 そうか・・・葵ちゃんは合宿所にいるのか。

 早坂教授は全て大宣が知っていると思っている。

 少し違うか、大宣は全てを洋子先輩から教えてもらっていると早坂教授は思っている。

 どれだけ洋子先輩は有能だと思われてるのだろう?

 まあ早坂教授がここに隠れていた事を教えてくれたのは洋子先輩だし、早坂教授の見立ては間違ってはいなかったのかも知れないが。

 もう早坂教授に聞きたかった事は全て聞いた。

 いや、まだ聞くべき事は残っているのかも知れないがそれが葵ちゃんの無事より優先される事はない。

 大宣は早坂教授と戦うべく対峙するのだった。
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