13 / 48
縄張り
しおりを挟む
菅原さんはダウジングで魔術を研究している研究室を探った。
しかし、化学研究室の面々は知らないが探られている事を察知する魔術もあるのだ。
化学研究室の動きは近隣の魔術師達の知るところとなった。
そして「化学研究室には魔術師見習いが複数いるが、魔術師は今不在だ」という事も明るみに出た。
化学研究室は今大きな動きを見せていない。
大人しくしている限り、魔術師達は手を出して来ない。
だがそれはあくまで「魔術師達は」である。
16世紀にヨーロッパで「魔女狩り」という動きがあり魔術師であるという疑惑をかけられた者達が大量に処刑された。
今でも魔術師を疎ましく思っている者もいるのだ。
そんな者共がいなければ魔術師は堂々と表に出てくるだろう。
魔術師も決して一枚岩ではない。
足の引っ張り合いも珍しい話ではない。
倫理学研究室も化学研究室を疎ましく思っている一つだ。
倫理学研究室では表向き孔子の論語や漢詩を研究しているが、実は東洋魔術を研究している。
先日、洋子先輩が撃退した式神は倫理学研究室の物だった。
倫理学研究室は反魔術師の秘密結社に化学研究室を売ったのだ。
そう言った反魔術の秘密結社がいくつか存在する。
その一つが大宣が所属する化学研究室に目をつけた。
「じゃあコイツらを倒して小銭稼ぎでもしますか!」
「見習いって言ってもまだ見習いになったばっかりの子が二人もいるみたいですよ?」
「知らねえよ、見習いを始めたばかりでも見習いは見習い、報酬はキチッともらうぜ?」
「何でコイツらは依頼主にこんなに嫌われてんですか?見習い集団って事はまだほとんど何もしてないんでしょ?」
「ゴキブリが嫌われるのに理由なんて必要かよ?コイツらは俺達に駆除されるために生まれて来たんだ」
男達が自分達のアジトで好きな事を言っていた時、化学研究室でもまたその秘密結社の事が話題になっていた事を男達は知らない。
洋子先輩が菅原さんに聞く。
「・・・で、敵はどのへんにいるのかしら?」
菅原さんがダウジングで敵のアジトを割り出す。
「このへんのハズですけど・・・う~ん」菅原さんは煮え切らない態度だ。
「何か気になる事でもあるの?」洋子先輩は菅原さんに聞く。
「いや、罠の可能性があります。ここまで調べやすかった事ってないですし・・・逆に怪しいです」菅原さんは慎重に言う。
「いや、私達の情報を売った連中はもうわかってんのよ、捕まえてゲロさせたからね。
私達の敵に魔術師がいない事もわかってるのよ。
魔術師じゃない連中なんてこんなもんよ?
別に罠じゃないと思うわ」洋子先輩はあっけらかんと言い放った。
「考えようによっては新人にちょうど良い相手だと思うわ。
そんなに強くない相手だと思うし」洋子先輩は微笑む。
「弱い?
どういう事ですか?
魔術師は科学者・・・魔術師じゃない連中に衰退させられたんじゃないですか?」大宣は洋子先輩に尋ねた。
「科学者だって色々いるわ。
強い科学者もいれば弱い科学者もいる。
それは魔術師にも同じ事が言えるわ。
強い魔術師がいれば弱い魔術師もいる。
それに今回の敵は科学者じゃない。
ただの雑魚よ。
大宣君、あなたは『科学者は強いから魔術師を衰退させた』と思ってるようね。
それは勘違いよ。
オーストラリアにいたフクロオオカミは外来種であった犬を一匹で五匹は殺せるほど強かったらしいわ。
でもその強いフクロオオカミは弱い犬に縄張り争いに負けて絶滅したの。
何で縄張り争いに負けたかわかる?
有袋類のフクロオオカミは繁殖力が低かったの。
それに対して犬はいっぺんに少なくて三匹子犬を産むわ。
繁殖が容易、という事は戦力の補充が容易、という事なの。
犬を千匹殺さないと縄張りから犬を追い出さないフクロオオカミと、一匹フクロオオカミを殺すだけで縄張りを手に入れられる犬では勝負にならないわ。
つまり魔術師は数、縄張り争いで科学者に負けたの。
いや、科学者達の作った大量破壊兵器より強い魔法もないから火力でも普通に負けているんだけれど。
それでも魔術師は科学者の脅威になる程度の力は持っているわ。
こうやって科学者が殺し屋に報奨金を払って魔術師を抹殺しようとする程度には」洋子先輩は怪しく微笑んだ。
しかし、化学研究室の面々は知らないが探られている事を察知する魔術もあるのだ。
化学研究室の動きは近隣の魔術師達の知るところとなった。
そして「化学研究室には魔術師見習いが複数いるが、魔術師は今不在だ」という事も明るみに出た。
化学研究室は今大きな動きを見せていない。
大人しくしている限り、魔術師達は手を出して来ない。
だがそれはあくまで「魔術師達は」である。
16世紀にヨーロッパで「魔女狩り」という動きがあり魔術師であるという疑惑をかけられた者達が大量に処刑された。
今でも魔術師を疎ましく思っている者もいるのだ。
そんな者共がいなければ魔術師は堂々と表に出てくるだろう。
魔術師も決して一枚岩ではない。
足の引っ張り合いも珍しい話ではない。
倫理学研究室も化学研究室を疎ましく思っている一つだ。
倫理学研究室では表向き孔子の論語や漢詩を研究しているが、実は東洋魔術を研究している。
先日、洋子先輩が撃退した式神は倫理学研究室の物だった。
倫理学研究室は反魔術師の秘密結社に化学研究室を売ったのだ。
そう言った反魔術の秘密結社がいくつか存在する。
その一つが大宣が所属する化学研究室に目をつけた。
「じゃあコイツらを倒して小銭稼ぎでもしますか!」
「見習いって言ってもまだ見習いになったばっかりの子が二人もいるみたいですよ?」
「知らねえよ、見習いを始めたばかりでも見習いは見習い、報酬はキチッともらうぜ?」
「何でコイツらは依頼主にこんなに嫌われてんですか?見習い集団って事はまだほとんど何もしてないんでしょ?」
「ゴキブリが嫌われるのに理由なんて必要かよ?コイツらは俺達に駆除されるために生まれて来たんだ」
男達が自分達のアジトで好きな事を言っていた時、化学研究室でもまたその秘密結社の事が話題になっていた事を男達は知らない。
洋子先輩が菅原さんに聞く。
「・・・で、敵はどのへんにいるのかしら?」
菅原さんがダウジングで敵のアジトを割り出す。
「このへんのハズですけど・・・う~ん」菅原さんは煮え切らない態度だ。
「何か気になる事でもあるの?」洋子先輩は菅原さんに聞く。
「いや、罠の可能性があります。ここまで調べやすかった事ってないですし・・・逆に怪しいです」菅原さんは慎重に言う。
「いや、私達の情報を売った連中はもうわかってんのよ、捕まえてゲロさせたからね。
私達の敵に魔術師がいない事もわかってるのよ。
魔術師じゃない連中なんてこんなもんよ?
別に罠じゃないと思うわ」洋子先輩はあっけらかんと言い放った。
「考えようによっては新人にちょうど良い相手だと思うわ。
そんなに強くない相手だと思うし」洋子先輩は微笑む。
「弱い?
どういう事ですか?
魔術師は科学者・・・魔術師じゃない連中に衰退させられたんじゃないですか?」大宣は洋子先輩に尋ねた。
「科学者だって色々いるわ。
強い科学者もいれば弱い科学者もいる。
それは魔術師にも同じ事が言えるわ。
強い魔術師がいれば弱い魔術師もいる。
それに今回の敵は科学者じゃない。
ただの雑魚よ。
大宣君、あなたは『科学者は強いから魔術師を衰退させた』と思ってるようね。
それは勘違いよ。
オーストラリアにいたフクロオオカミは外来種であった犬を一匹で五匹は殺せるほど強かったらしいわ。
でもその強いフクロオオカミは弱い犬に縄張り争いに負けて絶滅したの。
何で縄張り争いに負けたかわかる?
有袋類のフクロオオカミは繁殖力が低かったの。
それに対して犬はいっぺんに少なくて三匹子犬を産むわ。
繁殖が容易、という事は戦力の補充が容易、という事なの。
犬を千匹殺さないと縄張りから犬を追い出さないフクロオオカミと、一匹フクロオオカミを殺すだけで縄張りを手に入れられる犬では勝負にならないわ。
つまり魔術師は数、縄張り争いで科学者に負けたの。
いや、科学者達の作った大量破壊兵器より強い魔法もないから火力でも普通に負けているんだけれど。
それでも魔術師は科学者の脅威になる程度の力は持っているわ。
こうやって科学者が殺し屋に報奨金を払って魔術師を抹殺しようとする程度には」洋子先輩は怪しく微笑んだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる