超科学

海星

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石兵八陣

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 「暗殺者達と戦うのはしょうがないと思います。

 俺だってまだ死にたくないですし、でも・・・」大宣は文句を言いたかった。

 「でも?」大宣の言おうとしている事を察している洋子先輩が意地悪く、そして可愛らしく問い返した。

 「何を呑気に構えているんですか!?

 こうしている間にも敵はこの研究室に迫っているんですよ!?」大宣はイライラしながら怒鳴った。

 「落ち着きなさい。

 相手は魔術師じゃない。

 その気になれば相手の目を欺く結界を張っておしまいにしても良い。

 だけど相手はこちらの存在を知ってしまった。

 こちらの存在を誰か別の人達に吹聴するかも知れない。

 放置すると敵を増やす事になりかねないわ。

 それに・・・」

 「それに?」大宣はオウム返しに洋子先輩に問い返した。

 「舐めたマネした代償は命で払ってもらわないとね。

 私、雑魚に舐められるのが何より嫌いなの」洋子先輩は微笑んだ。

 大宣は洋子先輩の微笑みの中に壮絶なものを感じ、背中が冷たくなった。

 「迎え撃つ理屈はわかりました。

 でも迎え撃つ準備が出来ていない気がするんです・・・」続きを言おうとする大宣を洋子先輩は軽く制した。

 「覚えておきなさい。

 準備を見せないほうが相手を呼び込めるのよ。

 迎え撃つ準備万端の所に人はなかなか飛び込んではいかないものよ。

 あ、これ男女の駆け引きにも言える事だから覚えておくと良いわ。

 それにもう暗殺者さん御一行は私達を殺すためにこの近くまで来ているはずよ」洋子先輩は「暗殺者が来る」を「友達が来る」くらいの気安さであっけらかんと言った。

 「どっどっどっどっどっどうするんですか!?」小紫さんが口を挟む。

 「落ち着きなさい。

 『準備は見せない』とは言ったけど『準備はしていない』とは言っていないわよ?

 初陣のあなた達に教えなかったのは、教えたら相手に気取られるようにあなた達は行動してしまうかも知れないでしょ?

 『初陣なのにコイツら落ち着いてるな、なんか準備してるんじゃないか』って。

 準備ならある程度してあるわよ。

 暗殺者達に化学研究室の情報を売った倫理学研究室のヤツをちょっと脅したら、喜んで『石兵八陣』を暗殺者達の侵入ルートに作ったわ」と洋子先輩。

 「『石兵八陣』?何なんですかソレ?」大宣は洋子先輩に聞いた。

 「『石兵八陣』っていうのは東洋魔術でよく使われる入ったらなかなか出られない迷路みたいな魔術よ。

 暗殺者達は今頃その迷路で迷子になってるって訳」と洋子先輩。

 「まさか『石兵八陣』を作った倫理学研究室の人を洋子先輩、殺したんじゃないでしょうね!?」と小紫さん。

 「人聞きが悪い事を言わないでよ。

 術者が生きてないと『石兵八陣』は発動しないわ。

 殺す訳ないじゃないの。

 まだね」洋子先輩がとんでもない事を言った気がするけど、聞こえなかった事にしようと大宣は思った。

 「さて迎え撃ちましょうか?招かざる訪問者を!」気焔を吐く洋子先輩をみて大宣は「この人だけは絶対怒らせちゃいけない」と肝に銘じた。 
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