超科学

海星

文字の大きさ
21 / 48

過呼吸

しおりを挟む
    「教員になるには『教育心理学』って授業を受けなきゃいけないの」葵ちゃんは大宣に言った。




    話の発端は大宣が軽く「教員にでもなろうかな~?」と言い、葵ちゃんが「教員はそんなに甘くない」と大宣にガラにもなく説教しようとして話が脱線しまくって話が迷走しているのだ。





    「生徒が放課後こっくりさんをやっていて、こっくりさんをやってた女の子達が全員倒れたのよ。

    最初に倒れた女の子は『霊感が強い』って周りに言って回ってる女の子だった訳」葵ちゃんは大宣に言う、最初にしていた「教員になるのは大変だ」という話はどこへやら。

    「へ~。

    じゃあそれって心霊現象だった訳?」大宣にとって大して興味深い話ではなかったが、説教よりはいくぶんマシである。

    大宣は葵ちゃんに相槌を入れて、気分良く話させる事にした。

    「ううん、多分違う。

    こういった事例は珍しくないらしく、教育心理学で学ぶのよ。

    昔は『集団ヒステリー』って言われてたみたいね。

    ヒステリーの語源って『子宮』だからフェミニスト達が騒いだみたいで、今は『集団過呼吸』なんて言われてるわ。

    この『集団過呼吸』の特徴は

    ・倒れる人は女性、特に思春期の生徒に多い。

    ・最初に倒れる人は「影響力が強い」「感受性が強い」事が多い。

    ・強いストレス、緊張感を感じるようなシチュエーションで発生する事が多い。

    つまり日常的に起きてる事なの」と葵ちゃん。

    「そんなバタバタ生徒が倒れたら先生は大変だね。

    でも一緒にいた先生が倒れる事もあるんでしょ?そうしたらどうするの?」と大宣。

    「それは不思議とないの。

    『集団過呼吸』は責任感が強い者、社会人は生徒と年齢がほとんど変わらなくても発症しない、と言われているわ。

 別に倒れた女の子達が責任感がない訳じゃないの。

 倒れた女の子達が真面目に部活に取り組んでいた子達で、顧問の先生に説教されて倒れるケースが一番多いくらいよ。

 そうじゃなくて倒れた子達になかったのは覚悟なの。『自分で何とかするんだ』という覚悟があれば倒れないと言われているわ。

 しょせんは集団心理なの。

 『周りが倒れたから自分も倒れよう』って。

 『周りが倒れたから自分はしっかりしなきゃ』と思えば倒れるわけがないの。

    実際、『集団過呼吸』を発症した少女の集団を引率していた若い女性教員が『集団過呼吸』に巻き込まれた、というケースは報告されていないわ」と葵ちゃん。

    「って事は影響力が強い、リーダーシップがあるヤツを倒れさせたら周りの生徒をみんな倒れさせる事が出来るって事?」と大宣。

 「出来るかもね。

 でもそんな事にどんな意味があるかは知らないけどね」葵ちゃんは最初の話をスッカリ忘れ笑った。







 一歩必修の授業が行われる教室に化学研究室の3人が足を踏み入れた。

 教室の中にいる生徒達が全て倒れている。

 倒れているのは女生徒ばかりではない。

 男子生徒も倒れている。

 大宣は葵ちゃんが「男性は過呼吸になりにくいというだけでならない訳じゃない。集団過呼吸も同じだ」と言っていた事を思い出した。

 魔術を使わないでも集団を昏倒させる事は容易い、ましてや魔術を使えば教室の人間を倒れさせるのくらいは朝飯前だ。






 教壇の前に黒いローブを着た女性が立っていた。

 「チッ!アイツが相手とはね!」洋子先輩がどこからともなく現れた。

 大宣達のお手並みを見ようとどこかにいるとは思っていたが、思っていたより早く思っていたより近くに洋子先輩は登場した。

 「ここで倒れている人らを避難させるわよ!」洋子先輩が3人に言う。

 「洋子先輩には珍しく人道的ですね?何か悪いモノでも食べたんですか?」大宣が少しちゃかしながら洋子先輩に言う。

 「アンタ、あとで校舎の屋上に来なさい。

 でも今は全員でここにいる人を避難させるのよ。

 アイツはネクロマンサー、ここにいる連中を全員殺して仲間にするつもりよ。

 アンデッドとは言え、ここにいる全員を相手に出来る?出来ないでしょ?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

入れ替わり夫婦

廣瀬純七
ファンタジー
モニターで送られてきた性別交換クリームで入れ替わった新婚夫婦の話

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

短編 お前なんか一生結婚できないって笑ってたくせに、私が王太子妃になったら泣き出すのはどういうこと?

朝陽千早
恋愛
「お前なんか、一生結婚できない」 そう笑ってた幼馴染、今どんな気持ち? ――私、王太子殿下の婚約者になりましたけど? 地味で冴えない伯爵令嬢エリナは、幼い頃からずっと幼馴染のカイルに「お前に嫁の貰い手なんていない」とからかわれてきた。 けれどある日、王都で開かれた舞踏会で、偶然王太子殿下と出会い――そして、求婚された。 はじめは噂だと笑っていたカイルも、正式な婚約発表を前に動揺を隠せない。 ついには「お前に王太子妃なんて務まるわけがない」と暴言を吐くが、王太子殿下がきっぱりと言い返す。 「見る目がないのは君のほうだ」 「私の婚約者を侮辱するのなら、貴族であろうと容赦はしない」 格の違いを見せつけられ、崩れ落ちるカイル。 そんな姿を、もう私は振り返らない。 ――これは、ずっと見下されていた令嬢が、運命の人に見初められる物語。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...