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記憶
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「瑞江ちゃんはね、本当に性格は魔術師なんかには向かない優しい子だった。
だけど『魔術師になるために生まれて来た』といわれるくらいの才能・資質に恵まれていたの。
瑞江ちゃんは佐々木さんをつきっきりで看護したわ。
今もそうだろうけど昔はもっと研究室はアンダーグラウンドで警察や救急を呼べなかったの。
まあ救急車を呼ぼうにも佐々木さんは医学上では死体だったんだけどね、佐々木さんは魔術によりなんとか蘇生できたって訳。
瑞江ちゃんは横山のエロ親父に無断で宗教学研究室を訪れ、佐々木さんに医療魔術を施すように頼んだのよ?
横山のエロ親父は最初、烈火の如く怒ったけれど、瑞江ちゃんは宗教学研究室の連中の治療風景を見ただけで、魔術形態を読み取り医療魔術を使うようになったの。
瑞江ちゃんが凄いのは、看護の中で医療魔術をいくつも独学で編み出した事ね。
もう長くないと思われていた佐々木さんはみるみる回復していったわ。
瑞江ちゃんがどんどん新しい医療魔術を編み出すから横山のエロ親父も『看護するな』とは言えなかったの。
看護が研究の足を引っ張ってるならともかく看護が新しい研究成果を産んでいたのだからね。
瑞江ちゃんに手を出そうとしていた横山のエロ親父は本当にイライラしていたわ。
まだ記憶はなかったけど衰弱からは回復した佐々木さんと瑞江ちゃんは交際を始めたわ。
私が1回生の夏頃だったかしら?まどかちゃんと横山のエロ親父が結婚したのは。
すでにまどかちゃんのお腹は大きかったわ。
一回生の秋口には私たちは横山のエロ親父を『早坂教授』って呼ばなきゃならなかったのよ。
精力絶倫のエロ親父はお腹の大きな生徒兼女房に手は出せず、まどかちゃんの産休の休学中に和美ちゃんを愛人にしたって訳。
当時の化学研究室の女生徒はね、私を除いて全員が在学中に出産したの。
院にも行かないし、産休のための休学も唯一しなかった私は一番最初に卒業したから後の事は人伝にしか知らないんだけどね。
でも一番最初に産休のための休学したまどかちゃんと仲良くしてたし、生まれたての葵ちゃんの子守をしたりしてたからそのラインで情報は入ってきてたんだけどね」と林田さん。
まどかちゃん・・・早坂教授を殺したのは大宣だ。
林田さんと早坂教授が親友なら大宣は「親友の仇」という事になる、余計な事は言わないのが吉だ。
林田さんは早坂教授の死去をまだ知らないようだ。
どうやら早坂教授は院を出た当時は『早坂講師』と呼ばれ、『早坂教授』と呼ばれていた亭主もまだ健在だったらしい。
そして年月を経て准教授になり、教授になったのだ。
出産直後の当時の早坂教授は亭主の浮気に頭を悩ませていたという。
亭主の浮気と育児ノイローゼが重なり、葵ちゃんの事を「私が亭主に愛されないのはこの子のせいだ」と憎みはじめていたという。
亭主が生きている間はその感情が表沙汰になる事はなかったが亭主の死後、葵ちゃんへの虐待、育児放棄はエスカレートしていったという。
「人を殺してはいけない」当たり前とも思える道徳がない魔術師の世界だが、早坂教授は娘の命もなんとも思っていなかったようだ。
だが林田さんに「よくこんなヤツと親友やってられるな」などとは思わない。
どんな凶悪な殺人者でもヒューマニズムはある。
それどころか悪人のほうがヒューマニズムが目立つ。
よく「不良少年が子犬を可愛がっていた」などと言うが、不良少年でなければ目立つ事はない。
極悪人も味方には「良いヤツ」である事も珍しくない。
なので故早坂教授は生徒には「クソババア」と呼ばれていたが、親友であった林田さんには「まどかちゃん」と呼ばれていたのだ。
「私は家まで遊びに行って子守もしてたけど、まどかちゃんは一回生の秋口に休学して、復学したのは私が三回生に進級した時に一回生としてだったわ。
横山のエロ親父・・・本当はこの時は『早坂教授』って呼ばなきゃいけないんだけど、まどかちゃんも『早坂教授』だから区別するために『横山のエロ親父』って呼ぶわね・・・はこの時、嫁さんと愛人が同じ研究室の室内にいるという状態に頭を抱えていたみたい。
私も居心地が悪かったわ。
この頃の研究室の空気の悪さと言ったら・・・
まどかちゃんは横山のエロ親父が瑞江ちゃんに色目使ってた事を知ってたから、瑞江ちゃんを敵対視してたの。
和美ちゃんと横山のエロ親父の不倫の決定的な証拠はなかったけど、まどかちゃんじゃなくても『二人は怪しい』と思うほどだったから和美ちゃんとまどかちゃんの空気も最悪だったわ。
そんな空気から逃れるつもりもなかったんだろうけど、四回生の冬の終わり頃瑞江ちゃんが出産のため休学したの。
もちろん父親は佐々木さんね。
元気な男の子を産んだみたい。
その後の事は卒業してしまった私は聞いた話にしか知らないわ。
そして大学院に進学したばかりの和美ちゃんが出産のため休学したらしいわ。
父親は明かされていないけどね。
まどかちゃんは自分の旦那さんの子供だと思ってたみたいだけどね。
事件は私が卒業してから三年後、瑞江ちゃんが復学した後に起きたらしいの。
佐々木さんの記憶が突然戻ったらしいの。」
だけど『魔術師になるために生まれて来た』といわれるくらいの才能・資質に恵まれていたの。
瑞江ちゃんは佐々木さんをつきっきりで看護したわ。
今もそうだろうけど昔はもっと研究室はアンダーグラウンドで警察や救急を呼べなかったの。
まあ救急車を呼ぼうにも佐々木さんは医学上では死体だったんだけどね、佐々木さんは魔術によりなんとか蘇生できたって訳。
瑞江ちゃんは横山のエロ親父に無断で宗教学研究室を訪れ、佐々木さんに医療魔術を施すように頼んだのよ?
横山のエロ親父は最初、烈火の如く怒ったけれど、瑞江ちゃんは宗教学研究室の連中の治療風景を見ただけで、魔術形態を読み取り医療魔術を使うようになったの。
瑞江ちゃんが凄いのは、看護の中で医療魔術をいくつも独学で編み出した事ね。
もう長くないと思われていた佐々木さんはみるみる回復していったわ。
瑞江ちゃんがどんどん新しい医療魔術を編み出すから横山のエロ親父も『看護するな』とは言えなかったの。
看護が研究の足を引っ張ってるならともかく看護が新しい研究成果を産んでいたのだからね。
瑞江ちゃんに手を出そうとしていた横山のエロ親父は本当にイライラしていたわ。
まだ記憶はなかったけど衰弱からは回復した佐々木さんと瑞江ちゃんは交際を始めたわ。
私が1回生の夏頃だったかしら?まどかちゃんと横山のエロ親父が結婚したのは。
すでにまどかちゃんのお腹は大きかったわ。
一回生の秋口には私たちは横山のエロ親父を『早坂教授』って呼ばなきゃならなかったのよ。
精力絶倫のエロ親父はお腹の大きな生徒兼女房に手は出せず、まどかちゃんの産休の休学中に和美ちゃんを愛人にしたって訳。
当時の化学研究室の女生徒はね、私を除いて全員が在学中に出産したの。
院にも行かないし、産休のための休学も唯一しなかった私は一番最初に卒業したから後の事は人伝にしか知らないんだけどね。
でも一番最初に産休のための休学したまどかちゃんと仲良くしてたし、生まれたての葵ちゃんの子守をしたりしてたからそのラインで情報は入ってきてたんだけどね」と林田さん。
まどかちゃん・・・早坂教授を殺したのは大宣だ。
林田さんと早坂教授が親友なら大宣は「親友の仇」という事になる、余計な事は言わないのが吉だ。
林田さんは早坂教授の死去をまだ知らないようだ。
どうやら早坂教授は院を出た当時は『早坂講師』と呼ばれ、『早坂教授』と呼ばれていた亭主もまだ健在だったらしい。
そして年月を経て准教授になり、教授になったのだ。
出産直後の当時の早坂教授は亭主の浮気に頭を悩ませていたという。
亭主の浮気と育児ノイローゼが重なり、葵ちゃんの事を「私が亭主に愛されないのはこの子のせいだ」と憎みはじめていたという。
亭主が生きている間はその感情が表沙汰になる事はなかったが亭主の死後、葵ちゃんへの虐待、育児放棄はエスカレートしていったという。
「人を殺してはいけない」当たり前とも思える道徳がない魔術師の世界だが、早坂教授は娘の命もなんとも思っていなかったようだ。
だが林田さんに「よくこんなヤツと親友やってられるな」などとは思わない。
どんな凶悪な殺人者でもヒューマニズムはある。
それどころか悪人のほうがヒューマニズムが目立つ。
よく「不良少年が子犬を可愛がっていた」などと言うが、不良少年でなければ目立つ事はない。
極悪人も味方には「良いヤツ」である事も珍しくない。
なので故早坂教授は生徒には「クソババア」と呼ばれていたが、親友であった林田さんには「まどかちゃん」と呼ばれていたのだ。
「私は家まで遊びに行って子守もしてたけど、まどかちゃんは一回生の秋口に休学して、復学したのは私が三回生に進級した時に一回生としてだったわ。
横山のエロ親父・・・本当はこの時は『早坂教授』って呼ばなきゃいけないんだけど、まどかちゃんも『早坂教授』だから区別するために『横山のエロ親父』って呼ぶわね・・・はこの時、嫁さんと愛人が同じ研究室の室内にいるという状態に頭を抱えていたみたい。
私も居心地が悪かったわ。
この頃の研究室の空気の悪さと言ったら・・・
まどかちゃんは横山のエロ親父が瑞江ちゃんに色目使ってた事を知ってたから、瑞江ちゃんを敵対視してたの。
和美ちゃんと横山のエロ親父の不倫の決定的な証拠はなかったけど、まどかちゃんじゃなくても『二人は怪しい』と思うほどだったから和美ちゃんとまどかちゃんの空気も最悪だったわ。
そんな空気から逃れるつもりもなかったんだろうけど、四回生の冬の終わり頃瑞江ちゃんが出産のため休学したの。
もちろん父親は佐々木さんね。
元気な男の子を産んだみたい。
その後の事は卒業してしまった私は聞いた話にしか知らないわ。
そして大学院に進学したばかりの和美ちゃんが出産のため休学したらしいわ。
父親は明かされていないけどね。
まどかちゃんは自分の旦那さんの子供だと思ってたみたいだけどね。
事件は私が卒業してから三年後、瑞江ちゃんが復学した後に起きたらしいの。
佐々木さんの記憶が突然戻ったらしいの。」
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