超科学

海星

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打開策

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 紗季の攻撃は高火力だ。

 当たれば命はない。

 幸い紗季は魔術師ではない。

 魔術の行使方法が不自然で素早くはない。

 なので大宣でもなんとか紗季の攻撃をかわす事は出来る。

 だが避けているだけではいつか攻撃は当たってしまう。

 かわしてなんとかなるのは相手の魔力切れを待つ場合だ。

 原子力から力を借りるという事は魔力切れは起こさない。

 しかも原子力のエネルギー効率は魔術を遥かに凌駕する。

 エネルギー切れを待っていたとしても、逃げる体力がなくなるか、こちらが追い詰められ逃げる場所がなくなり攻撃を食らうほうが早いだろう。

 なので逃げ続ける事は得策ではない。

 だがそれ以前に大宣に紗季に攻撃意思はない。

 葵ちゃんに出会う前、この世界で唯一の味方だった少女を攻撃しようとは大宣には思えなかったのだ。

 「考えろ、何か良い方法はないか?」大宣は呟いた。

 大宣の望みとは

 ・紗季を倒す。

 ・紗季の暴走を止め、紗季を正気に戻す。

 ・紗季を殺さない。

 この三つを実現しなくてはいけない。

 そしてもう一つ「大輔を安全な所まで逃がす」という事だ。

 大輔の魅惑チャームは大宣の身に危険がせまった事で解けたようだ。

 大輔の身に危険が迫った時にも魅惑チャームの術式は解けるようにはなっていたが、このタイミングで術式が解けるようにしていたのは瑞江の限界でもあった。

 瑞江は大輔に洗脳を防ぐ術式を大輔の体に刻んだ。

 瑞江は極力大輔の精神に影響しないようにしており、洗脳から目覚めた大輔が暴れ殺されないように、命の危機が迫るギリギリまで術式が発動しないようにしていた。

 また和美が大宣を毒殺しようとする事を予想して大宣に解毒の魔術をかけていたのだ。

 和美は何度となく大宣に毒を盛るが「毒物では大宣は殺せない」と悟り、大宣の食事に洗剤や汚物を混ぜるようになったのだ。



 
 「そんな事は良いから父さんは早く逃げろ!」と大宣は言いたいが、紗季の力について知っているのは大輔だけだ。

 「父さんはどうすれば良いかだけ教えて・・・そして逃げてくれ」大宣はしまらない事を言った。

    しょうがないじゃないか、唯一の対抗策を知っているだろう大輔に「とにかく逃げろ!」などと言う余裕は大宣にはない。

    大輔は少し苦笑いをすると瑞江に託された対抗策を大宣に言った。

    「お前の血には紗季ちゃんと同じ魔術、いや、それ以上の魔術の術式が瑞江により刻まれている。

    紗季ちゃんの血に刻まれいる術式は俺から聞いた術式を和美が刻んだものだ。

    『魔術と科学の融合』は俺と瑞江の協同研究だ。

    多少は俺にも語れる部分もある。

    そういった部分が紗季ちゃんの血に刻み込まれているんだ。

    血に魔術を刻むのは『魔術師が同じ血脈に刻みつける』しかない。

    だから紗季ちゃんには和美が術式を刻みつけたんだ。

    和美はほとんど『魔術と科学の融合』の術式を自分の物にしていない。

    魔術の基本ですら反復訓練によって身に付く場合もあれば、身に付かずに終わる事がほとんどだ。

    血に刻まれていない新たな術式など短時間で身に付く訳がないんだ。

    だからこそ和美は魔術師にする気のなかった自分の娘にその術式を託したんだ」大輔は長々と説明した。

    大宣は大輔の話を聞きながら紗季の攻撃をかわさなくてはならない。

    「要点だけまとめて結論だけ頼む!いや、お願いします!じゃないと死んじゃう!

    血に魔術を刻まれたにしては俺、魔術師としてほとんど何も出来ないんだけど!」大宣は叫びながら言った。

    「血に2つ以上の魔術が刻みつけられていると魔術と魔術が干渉して力が出ないみたいだな。

    お前の血には元々瑞江の得意魔術『予知魔術』が刻みつけられていた。

    そこに『魔術と科学の融合』の研究成果である魔術を瑞江がお前の血に刻み付けたんだ。

    2つ以上の魔術を刻まれたお前は瑞江や俺の予想では最強の魔術師になるはずだった。

    それがどういう訳か半人前以下のへっぽこ魔術師にしかなれなかった、という訳だ」大輔はマイペースに言った。

    「俺がへっぽことか半人前とかは本人が痛いほどわかってるから、今、俺が紗季を傷つけずに助かる方法だけを手短に教えて!本当に死んじゃうから!」大宣は大輔に叫んだ。

    「わからんな。

    お前仮にも魔術師の修業しているんだろ?

    紗季ちゃんは魔術師の修業をしていないどころか魔術師ですらない。

    確かに四大元素を使った魔術じゃ紗季ちゃんの魔術は打ち消せない。

    でもお前の血に刻まれた魔術なら同じ系統の魔術なんだから、鼻歌を歌いながら紗季ちゃんの魔術を打ち消せると思うぞ?

    あとは紗季ちゃんを正気に戻させるために、一旦気絶させれば良いんじゃないか?」大輔はのんびりと言った。

    大宣は「アドバイスありがとう」と言うべきか「そう言う事は早く言え!」というべきかわからなくなり微妙な顔をした。
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