神の殺し方

海星

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    最終決戦である。

    相手は全戦力を投入するだろう。

    神の全戦力というのは神の総数でもある。

    神は躊躇なく女子供を投入してくるだろう。

   神の軍勢を全滅させる、という事は「神を全滅させる」と言う事だ。

    マリクは「女子供を殺すような非道な事はやりたくない」と思ったからこそ「大将同士で戦おう」と提案したのだ。

    マリクのアテは外れた。

    ここまで神族の個人主義が徹底しているとは思わなかった。

    「女子供を守るため戦士達は命をかけて戦う」というのが戦士の矜恃だと思っていた。

    だが神族は何の躊躇いもなく、女子供を最前線に送って来た。

    これは人間の戦士にとってはやりにくい。

    「女子供に手をかけない」をポリシーにしているものも少なくない。

    神族討伐軍に入ろうと厳しい訓練に耐えて来た者の中には女房子供を神族に殺された者も多く、「ここで女子供を殺すという事は自分が恨んできた者と同じ存在に成り下がる事だ」と士気は下がりきっていた。

    この状況はマリクの望むものではなかった。

    神族をいたぶりたくはないから早目に決着をつけようとしたのだ。

    弱者いびりどころか、この戦いで勝つと神族を滅亡させてしまう。

     マリクは側近達と少人数で敵の本丸へ乗り込み、敵の親玉を撃ち取り戦闘を早期に終わらせるしかないと思った。

    人間の感覚で言うと領土領民を守るため大将が玉砕覚悟で敵陣に突撃し、負けた大将が「私の首一つで領民達の無事を補償してくれ」と言うのが普通で、それが戦いの終わりというか落としどころだとマリクは考えていたが、大将は領民を盾にして最期まで出てくるつもりはないらしい。

    神族は個人主義の塊で、領民にも「大将を守ろう」などという意識はサラサラないようだが、神族のプライドの高さはあるようで「人間に降伏する」という選択肢はないようで人間と戦うつもりのようだ。

    というか、女子供であってさえも人間に負けるとは微塵も思っていないようで彼等に悲壮感はない。

    人間であれば「今から来る軍勢は危険だから、女子供は逃げろ!」と指示を出すだろうが、女子供を盾にしようと思っている神族の親玉がそんな事を言う訳がない。



    マリクは敵陣に乗り込む自分を含んだ七人を選抜した。

    それ以外は敵軍勢と睨み合い、こちらからは決して手を出さないように指示を出した。

    マリクは一緒に神殺しをしてきた仲間、部下、弟子達を選抜した。

    その中には初めて弟子にしたキュクロープス、ずっと一緒に神殺しの仕事をしてきたマールスやアーレス、オグマ、トール、テュールそして紅一点であるヴァルキュリアが選ばれた。

彼等は神殺しでありながら後の世の人々に「戦神」「軍神」と呼ばれる者達である。
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