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起動
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仮想現実世界は元々俺がいた世界そのものだった。
三百年経っているから多少は街並は未来都市っぽくなっているが大きくは変わらない、未来都市だとは言え車が空を飛んだりはしていない。
変わった事と言えば、随分車が丸っこくなったくらいか。
ただ一つ大きな違いは、男が一切いない事。
俺は男が貴重な世界ではもっとチヤホヤされるのかと思っていた。
だが実際は遠目に陰口を叩かれている。
まあ仮想現実の世界があるとは言え、男性社会が引き起こした戦争のせいで、親戚縁者は命を落としクソ不味い流動食を喰わなきゃいけないんだから、文句の一つも言いたくなるよな。だけど俺を恨むのは筋違いってもんだ。
俺は元々この時代の人間ではないし、この時代の女以上に戦争にはノータッチだ。
俺は居心地が悪くなり「看護師さん、この時代の男ってどこにいるの?」と尋ねた。
「男に会いたいの?男は軍部にしかいないから軍人にならないと会えないよ。会いたいの?ホモなの?・・・それと私、仮想現実世界では看護師やってないから。『看護師さん』て呼ぶのやめて」彼女は道端で売っていたアイスクリームを舐めながら言った。
「んな事言っても名前聞いてないから何て呼んで良いかわからないし。つーか人をホモ扱いするな!これだけ女に嫌われてたら男同士が恋しくなるわ!一人ぼっちがどれだけ寂しいか・・・」俺は弱冠照れながら言った。
というか、この時代で俺が頼れるのは彼女だけだ。
この胸に沸き上がる感情が「恋愛」であるのか「依存」であるのかは俺自身もわからない。ただ彼女にホモ扱いされるのがたまらなく嫌だった。
「私の名前はリサ。片仮名でリサ。聞かれなかったから答えなかっただけよ。私があなたの案内役に指名された訳は私がこの時代には珍しく人工受精じゃないから・・・男に対する偏見が少ないとでも思われたんじゃないかしら?人工受精じゃないなんて言っても父親に会った事もないし、他の人工受精の人と何もかわらないんだけどね」リサは自己紹介した。
「知っているとは思うけど一応俺も自己紹介するね。俺の名前は亙一郎、親しい人には「イチ」って呼ばれてた」と俺。
「じゃあイチローって呼ぶわね。私の事はリサって呼んで」とリサは言った。
「イチローは何で仮想現実世界に来たがったの?この時代で生きていこうと思ったら仮想世界には早かれ遅かれ来る事にはなったでしょ?」リサは俺に質問した。
「誰かに仮想現実世界を案内して欲しかったんだよ。この時代を生き生き抜いていくためにはこの時代に早く慣れる必要があると思ったんだ。俺の趣味であるロボット対戦ゲームが出来るところを教えて欲しかったしね」と俺。
リサは不敵に笑い「私の趣味もロボット対戦ゲームなんだ。ゲームが出来る場所を教えるからさ・・・私と対戦しない?」と言った。
そのゲームを初見で出来るとは思えない。出来たとしてもそのゲームをやり込んでいるリサと正直いい勝負が出来るはずがない。俺は「そのゲームに慣れてきて上手くなったら必ずリサと勝負する」と約束し、とりあえずはそのロボット対戦ゲームが出来る場所を教えてもらう事とした。
しばらく歩くと円形の闘技場のような建物が見えてきた。
「あの建物でロボット対戦ゲームが出来るよ。座標指定して飛び込んだ所からは遠いから時間はかかったけど、次からはあの建物を座標指定して飛び込めば時間はかからないし、あの建物の近くに住居をかまえればいつでもあの建物に行けるよ。私も闘技場のそばに家借りたし」そこまで言うとリサはしまったという顔をして口を噤んだ。リサは現実での知り合いに仮想現実世界での住居を知らせたくないらしい。
ストーカーではないので俺はリサの家の特定などはしない。
気まずくなってしまったので話題を転換するために俺はリサに
「ゲームの操作方法を教えてくれ。出来ればリサがやっているところを見せてくれ」とお願いした。
教えを請われて満更でもないのか、リサは満面の笑顔で「しょうがないなあ」と言った。
そして建物の中に入った俺は立ち並ぶロボット達を見て思わず「嘘だろ・・・」と呟いた。
そこで俺が見たのは俺がハマっていたゲーム『仮想兵器シリーズ』のロボット達とそっくり、いやそのものであった。
リサはスピード重視の機体に乗る。どうやら自分が乗る機体には自分で名前を付けるらしい。リサは自分の機体に『アマテラス』と日本古来の女神の名前をつけていた。俺は『仮想兵器シリーズ』で愛機として使っていた『シデン』にそっくりな機体に乗る事にした。名は当時と同じ『シデン』と名付けた。
『シデン』は機動力は低いが火力が高い機体であった。特に『シデン』の放つ極太レーザー砲は避けないと大ダメージを食らう、というモノであった。
取り回しの悪い『シデン』は人気が低く、使っている人が極端に少ない機体であった。
だが俺は「極太レーザーは男のロマン」などと言って、『シデン』を使っていた。
「参ったな」俺はリサにレクチャーを受けながら呟いた。
『仮想兵器シリーズ』は二本の操縦桿を両手で操るゲームであった。だが今は二本の操縦桿を操り、本当のロボットを操縦している。いや、これが仮想現実世界の中の出来事だとはわかっている。だが仮想現実世界と現実世界の違いなどは見つける事のほうが難しく「これがゲームだ」などというのは時々忘れるほどだ。
そして何より『シデン』の操作感覚が『仮想兵器シリーズ』と全く同じなのだ。
軽いウォーミングアップは終わりだ。この機体が俺が知っているゲームと同じ動きが出来るのかを試してみよう・・・と思っていると、モニター越しに俺とリサに声をかけてくる者達がいた。
「男なんて珍しいね。ねえお兄さん、私たちと勝負しない?負けた方が勝った方の命令を一つ聞くってルールでさ」
三百年経っているから多少は街並は未来都市っぽくなっているが大きくは変わらない、未来都市だとは言え車が空を飛んだりはしていない。
変わった事と言えば、随分車が丸っこくなったくらいか。
ただ一つ大きな違いは、男が一切いない事。
俺は男が貴重な世界ではもっとチヤホヤされるのかと思っていた。
だが実際は遠目に陰口を叩かれている。
まあ仮想現実の世界があるとは言え、男性社会が引き起こした戦争のせいで、親戚縁者は命を落としクソ不味い流動食を喰わなきゃいけないんだから、文句の一つも言いたくなるよな。だけど俺を恨むのは筋違いってもんだ。
俺は元々この時代の人間ではないし、この時代の女以上に戦争にはノータッチだ。
俺は居心地が悪くなり「看護師さん、この時代の男ってどこにいるの?」と尋ねた。
「男に会いたいの?男は軍部にしかいないから軍人にならないと会えないよ。会いたいの?ホモなの?・・・それと私、仮想現実世界では看護師やってないから。『看護師さん』て呼ぶのやめて」彼女は道端で売っていたアイスクリームを舐めながら言った。
「んな事言っても名前聞いてないから何て呼んで良いかわからないし。つーか人をホモ扱いするな!これだけ女に嫌われてたら男同士が恋しくなるわ!一人ぼっちがどれだけ寂しいか・・・」俺は弱冠照れながら言った。
というか、この時代で俺が頼れるのは彼女だけだ。
この胸に沸き上がる感情が「恋愛」であるのか「依存」であるのかは俺自身もわからない。ただ彼女にホモ扱いされるのがたまらなく嫌だった。
「私の名前はリサ。片仮名でリサ。聞かれなかったから答えなかっただけよ。私があなたの案内役に指名された訳は私がこの時代には珍しく人工受精じゃないから・・・男に対する偏見が少ないとでも思われたんじゃないかしら?人工受精じゃないなんて言っても父親に会った事もないし、他の人工受精の人と何もかわらないんだけどね」リサは自己紹介した。
「知っているとは思うけど一応俺も自己紹介するね。俺の名前は亙一郎、親しい人には「イチ」って呼ばれてた」と俺。
「じゃあイチローって呼ぶわね。私の事はリサって呼んで」とリサは言った。
「イチローは何で仮想現実世界に来たがったの?この時代で生きていこうと思ったら仮想世界には早かれ遅かれ来る事にはなったでしょ?」リサは俺に質問した。
「誰かに仮想現実世界を案内して欲しかったんだよ。この時代を生き生き抜いていくためにはこの時代に早く慣れる必要があると思ったんだ。俺の趣味であるロボット対戦ゲームが出来るところを教えて欲しかったしね」と俺。
リサは不敵に笑い「私の趣味もロボット対戦ゲームなんだ。ゲームが出来る場所を教えるからさ・・・私と対戦しない?」と言った。
そのゲームを初見で出来るとは思えない。出来たとしてもそのゲームをやり込んでいるリサと正直いい勝負が出来るはずがない。俺は「そのゲームに慣れてきて上手くなったら必ずリサと勝負する」と約束し、とりあえずはそのロボット対戦ゲームが出来る場所を教えてもらう事とした。
しばらく歩くと円形の闘技場のような建物が見えてきた。
「あの建物でロボット対戦ゲームが出来るよ。座標指定して飛び込んだ所からは遠いから時間はかかったけど、次からはあの建物を座標指定して飛び込めば時間はかからないし、あの建物の近くに住居をかまえればいつでもあの建物に行けるよ。私も闘技場のそばに家借りたし」そこまで言うとリサはしまったという顔をして口を噤んだ。リサは現実での知り合いに仮想現実世界での住居を知らせたくないらしい。
ストーカーではないので俺はリサの家の特定などはしない。
気まずくなってしまったので話題を転換するために俺はリサに
「ゲームの操作方法を教えてくれ。出来ればリサがやっているところを見せてくれ」とお願いした。
教えを請われて満更でもないのか、リサは満面の笑顔で「しょうがないなあ」と言った。
そして建物の中に入った俺は立ち並ぶロボット達を見て思わず「嘘だろ・・・」と呟いた。
そこで俺が見たのは俺がハマっていたゲーム『仮想兵器シリーズ』のロボット達とそっくり、いやそのものであった。
リサはスピード重視の機体に乗る。どうやら自分が乗る機体には自分で名前を付けるらしい。リサは自分の機体に『アマテラス』と日本古来の女神の名前をつけていた。俺は『仮想兵器シリーズ』で愛機として使っていた『シデン』にそっくりな機体に乗る事にした。名は当時と同じ『シデン』と名付けた。
『シデン』は機動力は低いが火力が高い機体であった。特に『シデン』の放つ極太レーザー砲は避けないと大ダメージを食らう、というモノであった。
取り回しの悪い『シデン』は人気が低く、使っている人が極端に少ない機体であった。
だが俺は「極太レーザーは男のロマン」などと言って、『シデン』を使っていた。
「参ったな」俺はリサにレクチャーを受けながら呟いた。
『仮想兵器シリーズ』は二本の操縦桿を両手で操るゲームであった。だが今は二本の操縦桿を操り、本当のロボットを操縦している。いや、これが仮想現実世界の中の出来事だとはわかっている。だが仮想現実世界と現実世界の違いなどは見つける事のほうが難しく「これがゲームだ」などというのは時々忘れるほどだ。
そして何より『シデン』の操作感覚が『仮想兵器シリーズ』と全く同じなのだ。
軽いウォーミングアップは終わりだ。この機体が俺が知っているゲームと同じ動きが出来るのかを試してみよう・・・と思っていると、モニター越しに俺とリサに声をかけてくる者達がいた。
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