鋼鉄のアレ(仮題)

海星

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戦争終結

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「これ以上の核戦争は人類だけでなく地球の存亡に関わります!」
「だが・・・我々から止めるわけにはいかない。それは負けを認めるようなものだ。それは我々の面子に関わる!」
「アンタらの犬も食わない面子のために何億人の人間が命を落としたと思ってるの?アンタの面子なんて人間一人分の命よりはるかに軽いのに。おかげでたくさんの動物が絶滅して・・・正直に言いなさい、アンタだって本当は引っ込みがつかなくなってるだけなんでしょ?『今自分からやめたら自分の行動が間違っていた事を自ら認めたようなものだ』って思ってるからやめれないんじゃないの?」
「この無礼な女は誰だ!?何故ここにいる!?」
「この方は知能指数が世界一の才媛です。人工授精により誕生した科学が産んだ天才です。このどうにもならない状況を打破するために国連に召集されました」
「わかった?アンタらが無能で地球を滅ぼしそうだから私が呼ばれたの。つーか、アンタ地球平和のためにここにいるはずなのに自分の国の面子の話ばっかりしてるわね。邪魔だからどこか行ってくれないかしら?」
「じゃ、じゃあお前にこの状況を打破する妙案はあるのか!?ないんであれば黙っててもらおうか!?」
「あるに決まってるじゃない。私、アンタらみたいに無能じゃないの」
女性は分厚い計画書を机の上に置いた。
そこには仮想現実世界の草案が書かれていた。

「大事な事は『その気にさせる』という事よ!」
そこには『疑似体験こそが人類を救う』と書かれていた。

食べた『気になる』
贅沢した『気になる』
開拓した『気になる』
戦争した『気になる』
人間の欲求が地球を滅ぼすと考えると、仮想現実世界にて欲求を満たした気になれば地球は滅亡を免れる・・・という理屈だ。
「しかし・・・一旦争い始めた国同士がそう簡単に矛を収めるとは思えないが・・・」
「だから、矛を収める必要ないじゃない。戦争は継続するのよ、仮想現実世界の中でね」
「仮想現実世界での戦争・・・って。どうやって?」
「長期的には戦争のためのツールを作らなきゃいけないかもね。でも『ツールが出来るまで計画を先伸ばしにする』って訳にもいかないの、ツールが出来るまでに地球が滅亡しちゃうかも知れないからね。今から数百年前、二十世紀末の日本に『仮想兵器シリーズ』というゲームがあったのよ。そのゲームを仮想現実世界で国ごとに競わせる事が戦争の替わりになるんじゃないかしら?日本製のゲームっていうのがポイントね。連合国の中で日本は専守防衛を掲げて自分からは攻めていないし、被害は連合国の中で最も少ないし最も他国との遺恨が少ない。『日本製のゲームである事』『ゲーム内容が実際の戦争とはかけ離れている戦争ゲームである事』が戦争としての採用条件ね。このゲームをやった事がある人が日本にすら残っていないのがこのゲームを採用する上で、不公平感が少なくて不平不満が出にくいっていうのもポイントね」

こうして休戦条約は結ばれ、仮想現実の中で戦争が行われるようになった。
しかし、国際的な摩擦は無くなった訳ではないし、「戦争はゲームの中で平和的に争う」と言っても、勝った側の発言力が上がるのは実際の戦争と何も変わらない。
各国、秘かに軍事力を上げようと街中で「仮想兵器シリーズ」をプレイ出来るように画策する。
そしてトッププレイヤーは軍隊にスカウトされた。
だが、「仮想兵器シリーズ」をプレイしている者達は誰一人、戦争に自分達がプレイしているゲームが使用されている事は知らない。
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