鋼鉄のアレ(仮題)

海星

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インタールード

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    当然ゲームを戦争の代わりにする事に対して否定的な意見も出た。
    「ゲームが戦争の替わりになるわけがない」
    だが、この案を出した女性は自信満々であった。
    「国の威信をかけて争えば、それが戦争であろうが、スポーツであろうが、ゲームであろうが人々は熱狂するのよ。世界中を巻き込む戦争が何十年も行われていたから最近では開催されてないけど、オリンピックだって国の威信をかけてスポーツで争うじゃない?ぶっちゃけ争う物が平和的で資源を消費しないものであれば、それに越した事はないのよ」
    結局彼女の意見はゴリ押しされ可決される事になる。
    彼女の思惑通り、戦争の替わりに導入されたゲームにより国々は争うようになり、地球は核兵器による滅亡を免れた。

    だが彼女は大切な事を失念していた。
    「スポーツによる争いは正々堂々たるものではなかった」という事だ。
    ソチでロシアは国ぐるみでドーピングを行った。
    女子マラソン界を席巻した中国の「馬軍団」は、国の上層部に「レース中に失禁しろ。ドーピング反応が出る濃い小便はレース中にした小便の中だ。レース後のドーピング検査ではドーピング反応は出ない」と指示されたと言う。
    それはスポーツの話だ、ゲームであれば不正行為は行われず、和気藹々と争われる・・・決してそんな事はない。ましてそのゲームが戦争の替わりであるなら尚更だ。
    ゲームの不正、チートやハッキングなどが当たり前に行われるようになる。
 「たかがゲームじゃないか」と誰もが思った。
 だが「たかがスポーツ」でも莫大な金がつぎ込まれ不正まみれになったのに、戦争の替わりで不正が行われない理由などはなかったのである。
 チートやハッキングに並ぶもう一つの不正、それが暗殺であった。
 仮想現実世界の中で国の威信をかけて戦う・・・その間、戦っている人の体はどこにあるか?
 戦っている人の体はベッドの上で無防備に横になっているのだ。
 いくら優秀なパイロットであっても本体が銃殺されてしまったらひとたまりもない。
 「争いを自国に有利に進める方法」の一つが、「優秀な敵国のパイロットを暗殺する事」だ。
 戦争が行われなくなり、軍部は不要であると言われた時期がある。だが「無防備な優秀なパイロットの体を暗殺から守るのは軍隊だ」という事で、「イザナミ」の軍事利用を行う際は軍隊の内部で行う・・・という事になり各国の軍隊は消滅の危機を免れた。
 それと同時に、軍隊の中で行われる事は「イザナミ」の軍事利用と暗殺と暗殺防止の訓練が主任務となった。

 イチローが元いた世界でも新しいゲームが発売されれば次の日には改造コードが発表された。
 どれだけ改造できないようにプログラムされていても、そのプログラムを上回る改造コードが発表された。
 それは三百年以上時が経過しても同じらしい。しかもプログラムのガードを破るのは国家が雇った天才ハッカー達だ。ゲーム内容を改造するのは表向き禁止されていたが、軍部が使う「イザナミ」の機体は改造されていた。改造は「チューニング」と呼ばれ黙認されていた。「何で相手は改造し放題改造しているのに、どうしてこちらはノーマル機体で戦わなければならないんだ?」というようにそれはエスカレートしていった。

 そして各国が真っ先に開発し終えていたにも関わらず「この技術が実戦投入されてしまったら、実際の戦争に発展してしまう」という技術があった。
 「撃破した相手を脳死させ、廃人にする技術」
 各国軍隊にも良識はあり、越えてはいけない一線を理解していた。
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